6:邂逅
―――捕縛計画実行の日。
アレクサンダーが王都に居たと言うのは、先に述べた通り。
本来であれば二週間かかる距離。それを短縮させたのは、レノンバルトの魔法だった。
『浮遊魔法を使えば、半日で着く』
その言葉を信じた王太子によって、アレクサンダーが命じられたのはただ一つ。
『あの女も捕えてこい』
あの女、と言うのは、三年前。
当時の王太子妃を害そうとしておきながら罰を受けることなく、他国へ逃亡を果し――――挙句。
今回の王太子妃毒殺未遂事件では、首謀者であるナインクル・ベラドールを匿った疑いのある娘、エチノのことを指す。
少年が魔法を使用することに躊躇いが残るけれど、手段を選んでいる状況でも無いことは確か。
(彼女に対する、怒りは俺にもあるからこそ。)
このまま野放しには出来ない、と言う思いの方が勝ったのである。
それでも初めは、馬を飛ばして自分一人で、と考えたアレクサンダーではあるが……
王太子が居る状況で部下たちにベラドールらの捕縛を任せるのは些か荷が重いだろう。と、思い直して、漸く。
少年の提案に了承の意を示したのだった。
兎にも角にも、言葉通り半日で到着した王都にて。
エチノが滞在しているという屋敷へ向かえば、そこで開かれていたのはティーパーティーと言う名の乱痴気騒ぎ。
クロシュにいた頃と変わらない、否、あの時よりも肥大化した気配のある毒々しい自尊心を振りかざす、その様は。
『魔物の方が可愛く見えてくるよね』
と嘯いたレノンバルトに思わず同意してしまいそうになるほどであった。
ただ、相手は自尊心が高いだけで、何一つ抵抗する為の術を持たない娘、である。
アレクサンダーのように武器が扱えるわけでも、レノンバルトのように魔法が使えるわけでもないのだ。
故に、制圧するのに数分と掛からなかったのは言うまでもないだろう。
後は再びあちらへ合流するだけだと、その為に準備を進めていたレノンバルト。
その横顔をアレクサンダーは見守りながら、少しでも先に情報を聞き出しておくべきか?とエチノに意識を向けようとしていた。
――――その時である。
聞こえたのは、足音。それも二人分。
『人払いの魔法を掛けたはずなのに……まさか、』
何か思い当たる節があったのだろうか。作業の手は止めず、訝しむように眉根を寄せていたレノンバルトの眼差しが忌々しそうに歪んでいく。
(……レノンバルト殿の反応を見るに、どうやら面倒な客のようだな)
そう判断し、張り詰めていく空気に剣を構え直したアレクサンダーと、足音の主であろう人物たちが姿を現したのは、ほぼ同時であった。




