かぞくの在り方/レノンバルト・“キールエラ”
愚かで哀れで、どうしようもない、僕の「あに」だった人へ。
家族とは、何を持って定義付けられているのだろうか。
嫉妬と羨望、そして。深い後悔を滲ませた蜂蜜色の瞳が、泥に伏している。
その様を見下ろしながら、何度も抱いてきた問いを再び掛け直す――けれど。
リューンハルト・キールエラ。
雨に泥濘んだ土の上で項垂れている、男。一応の、家系図的には兄にあたる人。
(……そう、家系図的には、ね。)
いつも長い時間を掛けて整えている琥珀色の髪は乱れ、お気に入りのジャケットは皺だらけ。
生成りのシャツにまで飛んだ泥の後が重ねるのは、男が今の今まで家族へ向けてきた感情を現しているようだった。
(ねぇ、にい様。本当にあなたはどうしようもない人だよ。)
――――でも、あなたがそうなってしまったのも、無理はない。と、知っているから。
「あなたは、一言聞けばよかっただけなんだ。そして――僕たちも、気付くべきだったんだ。」
あなたの抱える苦しみに。
そうしたら。気付いていたら。問いかけていたら。父と母ならば。
そっと抱き締めながら、教えてくれただろう。何時ものように優しく。
あなたの瞳が、空色でも菫色でもない理由を。
あなたの髪が、父と僕よりも明るい、その意味を。
あなたを意味するガーデン・オーナメントが、どこにあるのかも。全部。
「……でも、あなたは聞くことを諦めてしまった。僕たちは僕たちで、姉様のことに掛かりきりだった。」
それを言い訳にするつもりは無いけれど、でも。
それが要因の一つで、気付けれなかったことは事実なのだ。
「ねぇ、にい様。流石のあなたでも分かっていると思うけれど、僕たちが会話できるのもこれで最後になるんだ。」
本来ならば、父がやるべきこと。けれど、もう真っ直ぐ父のことを見ることが出来なくなったこの男に、幾ら言葉を重ねてたところで何も届かないだろうと、レノンバルトの独断で役目を奪ったのだ。
これ以上、もう。無意味な傷を付け合い、抱えるかぞくの姿など見たくはない。などと言う、レノンバルトの我儘で。
「だから、話そう。」
場合によっては、殴り合いも厭わないよ。
幼い頃、転んだ自分を助け起こしてくれた時のように差し出してみた、手のひらへ。
重なった温もりに、最初の問いを綴ってみる。
「ねぇ、兄さま」
あなたは、かぞくの在り方をどこにあると考えているの?って。




