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2:『運命の番』

 この国トゥルバでは魔法が全てである。


 魔法とは、体内に宿る『魔力』を『回路』に通して大気中の魔素と結びつけることによって、無から有を産み出す秘技のこと。魔力自体は血に宿るとされ、トゥルバの民であれば誰でも所有しているとされているが、実際扱う為には『回路』を鍛える必要があり、誰でも魔法が扱えるわけではない。それ故に、すべての条件を満たせる特権階級、つまりは王侯貴族のみが魔法を習得し、支配しているのがこの国の実態である。


 勿論、ただ魔法が使えるからと言うだけで支配者の立場にいる訳ではない。貴族には貴族の役目があった。


 そも、此処トゥルバの地は三方を海に、残りの一方は『不可侵の森』と呼ばれる深い森に囲まれている―――いわば陸の孤島のような地形となっている。


 しかして、この不可侵の森。


 一説によると魔界に繋がっている可能性があるとされており、それを裏付けるように、森から時折『魔物』と呼ばれる獣を模した魔力の塊が現れては、人々を襲うことがあるのだ。


 貴族の役割とは、優れた魔法使いとなり、『魔物』の脅威から人々を守り、戦い、癒し、そして穢された大地を浄化すること。つまりこの国では、魔法使いになることで正式に貴族を名乗れるのだ。


 その中でも一目を置かれるのが、『覚醒者』と呼ばれる者たちである。


 彼等は、『始まりの魔女(トゥルバ)』が遺した『祝福』を得たことで『回路』が覚醒。魔力保有量が倍増し、魔法の威力と精度は一般的な魔法使いの数千倍と言われるほどに跳ね上がり、更には己が唯一の魔法である『固有魔法』を習得しているのだ。


 そして、『始まりの魔女の祝福』というのはこれだけではない。


 最後に一つ。それが『運命の番』である。


 通常魔力と呼ばれるモノは、しっかりと寝る。もしくは、沢山食べる。か、だけでもある程度自己回復するのだが…………最も効率が良いとされるのは人から人へ受け渡すこと。つまりは肉体的接触による愛行為である。

 さらに言うのであれば、研究によって『魔力同士の相性が良ければ良いほど共有するときの抵抗も無く、一度に渡す量も桁違いに増える』ことが判明しているのだ。


 その魔力相性が良い存在のことを、この国では『運命の番』と呼ぶ。そして、魔法を扱う者は誰しも、一度は己の運命に巡り合うことを夢見るものだ。それは、覚醒者も例外ではない。


 ただでさえ、魔力消費の激しい戦闘魔法が必須となる魔物討伐に派遣されることの多い彼らにとって、運命の番は砂漠の中のオアシスのような存在。何が何でも手に入れたいと願う事となる彼らへの慈悲が如く、かの『祝福(始まりの魔女の祝福)』が輝くのだ。


 そう、それこそが、『運命の番』を認識できる力。通常、深く繋がり、互いの回路を触れ合わせ、魔力を流さないと分からない『運命』だが、その全ての工程を踏まずとも、覚醒者であればその存在を視界に入れただけで『理解』るのだ。


 その、最たる例こそがベネディクト・スカーピオとエリザベス・キールエラの出会い、である。

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