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先程までとは逆転した立場。
しかし、どこかしょんぼりとした少女の姿に、胸の奥が擽られる。
このまま直視し続ければ、張りぼての理性などいとも簡単に崩されてしまうだろう、と思いはするものの。
目を逸らすことが出来なかった。
しかして、大人しくなった少女である。
もう突発的で自分を消費するような真似はしないだろう、と判断した男だったが。
それこそが、少女の待ち望んでいた『油断』であった。
ゆっくりと降ろされていく、境界線として設けられていた男の掌。
しかし、距離はそのままである。
身を乗り出せば、触れ合えるほどの近くにある『目的』を少女が求めない訳がなかった。
「…………っ!」
だが何度もやられるような男でないのも事実である。その気配を察知され、勢いよく身を引かれてしまった。
掠めるだけで終わってしまった2回目。
残念に思う少女の肩をがっしりと包み込まれるようにして、男に掴まれた。
「─────本当に、分かってやってるのか?」
絞り出すように震えたその声。怒気を孕んでいるようにも聞こえるが、正面にある男の顔は煙が立つのではないかと言うほど真っ赤に染まっている。
何よりも、理性で必死に押さえ込もうとしているけれど、瞳の奥で渦巻いている──あの色が見えたから。
「勿論。だって、望むならって言ってくれたじゃない?」
少女は、満足げな笑みを浮かべる。
それはつい先ほどまで顔を蒼褪めさせ、強張っていた事など感じさせられないほどの期待に満ちたものだった。
「……確かにそうは言ったが、」
これが本当に君の求める助けとなるのか?と、言葉尻を濁す男に、少女は間髪入れず肯定する。
「もっと望んでいいなら、その先も……なんてね」
その上、重ねて告げられたその言葉は、男を沈黙させるのには十分過ぎるほどの。
……いや、有り余るほどの破壊力を孕んでいた。
「―――、意味は分かって……「言ってるよ」」
膝上に乗り上げるように、男との距離を詰めようとしながら少女は手を伸ばす。
頬に触れた指先の熱。反射的に離れようと仰け反ろうとした男だが――――、このとき彼は忘れていた。
自分が今、少女との間を保つために限界まで身を引いていたことを。




