a3:夜にとける焔
(……どこまで、答えるべきだろうか)
パキリ……と、乾いた音と共に崩れ、灰と化していく最後の木片を見つめながら、男は思案する。
見渡した限り、焚き物に使えそうなものは残っていなかった。
外では変わらず雨が降っている。
地面を打ち付ける勢いは弱まっているようだが、この調子だと朝まで止まないだろうことは予想が付いた。
つまり、月明かりを頼ることが出来ない。
この火が途絶えれば、外と同じ完全な暗闇が待っているのだ。
(今後のことを考えれば、なるべく痕跡は残しておきたくない……が、)
平常時であれば、このまま立ち去ることを選択するが……天気と時間帯も然ることながら、何時魔物が現れるか分からない環境である。今から野宿に切り替えるのは、流石に避けたいところ。
少女が発した言葉にあった訛りからして、彼女がトゥルバの人間であるのは明確である。
しかし、何かから逃げてきたことは、様子からしても伺える。
落馬による怪我もしていることから、動くことも儘ならない筈だ。
よって、少しばかり身の上の話をしても、アレクサンダーの今後の予定に支障は来さないだろう。
(……それに、怪我人だと分かっていながら魔物の森へ置き去りにするのは、些か――――いや、だいぶ気が引ける)
ふっと向けた小屋の片隅に、淡い光に照らされた松の実が転がっているのを見つけた。
隈なく探した筈だが……と手を伸ばし拾い上げる。そうして、顔を上げたその先で。
斑に朽ちた小屋の屋根。その隙間から降り滴る雨に姿を霞ませながらも、顔を覗かせた月と目が合った。
(……そうか、俺はつもりのままにしていたな。)
小さく吐き出した自省の息と共に、松の実を消えかけの炎の中へと投げ込む。
途端、勢いを増したオレンジ色に、目を見開く少女へ視線を合わした。
「―――如何にも。私は、違う国から来た。」




