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9:あに


 何を言われようと表情も変えず、沈黙を守り続けるエリザベス。

 完璧な微笑を保ったまま、エチノの隣に佇みながらエリザベスを見つめ続けるベネディクト。


 エチノの語る、ベネディクトとの魅力的な恋物語だけが音の止んだ会場に響き渡るばかりで、その場にいた人々(観客)もそろそろ退屈に思い始めたのか、ざわめきの方が大きくなり始めていた頃。


 動きがない状況に痺れを切らしたのは、リューンハルトだった。


「いつまでそうやって黙り込んでいるつもりだ!!エリザベス!!!」


 舞台に転がり込んできた、新たな役者に離れつつあった視線が戻る。


 リューンハルト・キールエラ。つい先日、エリザベスの父ラインバルトに代って、キールエラの家督を継いだ男である。エリザベスとレノンバルトよりも、義理の妹となったエチノを可愛がっていると社交界では知られていた。その裏には、ベネディクトという最良の男に求められているエリザベスへの嫉妬心が渦巻いていると言うことも。


 そして、それは今この場で形となってエリザベスにぶつけられていた。


「お前は何時もそうやって、被害者面していた癖に!

 まさか、運命の番と詐称していた挙句、繋ぎとめるためにベネディクト様の好意を無碍にして来ていたとは!!

 お前のような人間はキールエラ家に必要ない!!」


 憎しみにも近い、怒りに満ちた男の目が突き刺さる。

 だが、幼い頃に抱いていた家族としての情は、もうエリザベスの中で涙を流さなかった。


(……ごめんね。にいさま(・・・・))


 あなたが抱える私への嫉妬が何から始まったのか、もう知っているけれど。

 紐解くことも出来るのだろうけど、私が語るには重すぎる。

 それに、今更知ったところで縺れに縺れた確執と言うものから、あなたが開放されることは無いだろうから。


 だから、代わりに全て受け止める。今日までは。


「故に、今日を持って、破門とする!このリューンハルト・キールエラの名を持って!!」


 その言葉を、聞くまでは。


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