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落ちこぼれの宮廷魔導師、元英雄を飼う~私が拾ったのは、かつて世界を救った最強の人でした~  作者: 松村道彦


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第41話:ゲスト

 

『ここからは、昨年の上位勢が続々登場しますッ! まず最初に現れたのはッ……ナターシャ副隊長率いる七番隊だぁッ!』


 今まで以上の大歓声が巻き起こる中、隊員を引き連れて颯爽と現れたナターシャは、笑顔で手を振りながらそれに応える。

 しかし、その瞳の奥には闘志がみなぎっており、それは"今年こそは必ず"という、並々ならぬ想い故であった。


『剣の達人であるサラ隊長の下で戦う彼らもまた! 剣の扱いには一日の長がありますッ! 昨年はあと一歩届かなかったその頂ッ……はたして今回はどうなるのかッ!? 期待大だぁッ! ん!? おーっときたきたぁッ! 一番隊が来たぞぉッ!』


 ナターシャは微かに振り返り、後方から迫る彼女たちへと目をやった。

 昨年の三位決定戦の借りを返すと、そう静かに誓いながら。


『さてッ! 王都騎士団各隊につけられた番号は、決して優劣を表すものではございませんッ! しかしッ! 様々な要因から一、ニ、三番隊はいつしかそう呼ばれておりましたッ……そう"三強"とッ! その一角ッ! 昨年史上初の連覇を狙いましたが惜しくも準決勝敗退ッ! その後の三位決定戦で勝利し、本年度のシード権を獲得しました……が! 今年は特別ルールで出場チームが増えたことにより、一回戦からの登場となりまッ……ひぃー!? 睨む睨む全てを睨んでいるぅッ! アミナ副隊長はお怒りだぞぉッ! セオス隊長は優しいのにぃッ! じゃ、対戦相手の方は頑張ってくださぁいッ!』


 昨年の敗退も、シード権がなくなったことも、そして先ほどのフォルティの振る舞いも、その全てに彼女はキレていた。

 そしてそれは、後ろにいる隊員たちも同様である。


『続いて現れたのは……言ったら怒られるかもしれませんが許してください昨年()準優勝ッ……二番隊の登場だぁッ!』


 再び上がる大歓声の中、隊員たちは全員が凄まじい眼光で前だけを向き、声援にも応えずただ前に進む。

 "永遠の二番手"。

 あまりにも不名誉なその名前は、昨年まで彼らが五年連続二位であり、二番隊ということも相まって定着してしまったものであった。


『いやぁ……凄まじい眼光だぁッ! キレてます! 今年の二番隊は一味違うかもしれませんッ! ギラン副隊長は剣も魔術も超一流の強者ですッ! 今年こそは優勝だぁッ! おッ! 皆様ッ……お待たせいたしましたァッ!!』


 その時、この日一番の大歓声が会場を包み込む。

 優勝チームのみが手にする黄金の杯。

 それを高々と掲げながら登場したのは───


『来たぞ来たぞ来たぞ来たぞぉッ! 満を持しての登場ッ! 昨年の……優勝チームぅッ!! 三番隊のお出ましだぁぁぁぁぁあッ!』


 三番隊隊長フリークを先頭に、風を肩で切って歩くその姿は、まさに勝者のそれであり、今年の優勝も我々だと、そう言わんばかりである。

 それを観覧席にいた他の隊長たちは、だいたいが忌々しげな表情を浮かべながら見つめていた。


『昨年は圧倒的な強さで優勝まで駆け上がった三番隊ッ! その中心にいたのは勿論ッ! 隊を指揮するギャラード副隊長でありますッ! 彼の強さは隊長クラスとまで言われており、事実昨年の御前試合では一人で最も多くの相手選手を倒したという記録が残っておりますッ! 今年も優勝候補筆頭のその力を見せつけるのか……皆様! 乞うご期待ッ! さて、これにて……え? あ、違う? あ、そうでした! 失礼いたしましたぁッ!!』


 観客席から大きな歓声と笑い声がこだまする。

 ヤミーは実況席で恥ずかしそうに頭を何度も下げた後、再び杖を握って大きく息を吸った。


『今年だけの特別参加ッ! 昨年一番隊を率いたあのお方がッ! 部隊新設をかけて御前試合に殴り込みだぁッ!』


 そうして、入場口から彼女たちが現れると、観客席からブーイングが上がり始める。

 これは、御前試合に対する冒涜だと、民衆の大半が感じていたからに他ならない。

 さらに、その顧問として関わっているのがルウナだと知っている者も多く、それが火に油を注いでしまう。

 それに負けじと、ヤミーはさらに声を張り上げた。


『現れたぞリベルタス魔導騎士隊ッ! さて、今回は人数の関係上、フォルティ隊長も出場することになっておりますッ! ちなみに言っておきますが、彼女の実力は本物ですッ! 昨年の御前試合では、一位のギャラード副隊長に肉薄する数字を叩き出す大活躍ッ! 準決勝での行動には賛否がありましたが、はたして今回はどのような戦いぶりを見せつけてくれるのでしょうかッ! さらに、噂では隊員たちが今日のために血の滲むような特訓を重ねていたとのことッ! あるのかジャイアントキリングッ!? 負ければ即解散ッ! 勝てば部隊新設ッ! はたしてどこまでいけるのかッ……皆様ッ! 是非ご声援をよろしくお願いしまぁすッ!』


 ブー! と、一際大きなブーイングが鳴り響く中、フォルティたちは何も気にせず、やはりどこか虚なその瞳のまま、アルタイル王が座する場所を正面に、他の隊同様一列に並んだ。


『これにて、選手入場が完了いたしました。では、続きまして……アルタイル国王、ゲオス=アルフレッド=アルタイル陛下への優勝杯返還、及び陛下から言葉を頂戴いたします。皆様、ご起立ください』


 荘厳な音楽が流れる中、フリークは王の御前へと階段を上っていく。

 そして、薄いレースのカーテンが開かれると、そこにアルタイル国王、ゲオスが悠然と立っていた。


 白く長い髪と髭に、白く美しいローブを身に纏ったゲオスは、フリークが跪いて掲げる黄金の杯を手に取ると、それを両手で頭上へと掲げた。


 拍手と大歓声の中、それを隣にいた衛兵に手渡すと、ゲオスはフリークに労いの言葉をかける。

 フリークはニ、三度頷くと、深々と頭を下げ、他の隊長たちがいる観覧席へと向かっていった。

 それを見届けた後、ゲオスは自身の杖を取り出し、口元へと当てる。


『皆……ありがとう。また今日という日を迎えられたのは、ここにいる民と、国を支える士官、さらに優秀な魔導師たち、そして……我が国を守る屈強な騎士団がいたからに他ならない。我らは助け合いの中で生きている。誰も一人では生きられぬ……誰かの手助けが必要なのだ。我らは国であり、そして一つの家族である。また、生まれは違えど、この国で生きたいと願う者たちに、我らは手を差し伸べなければならない。それが、亡き王女の悲願であった。あれから十三年が経った。未だ夢半ばではある。余は、皆と共に歩んでいきたい。どうか力を貸してほしい。そのためには、この国はさらに強くならねばならない。王都騎士団よ……どうかその力を示してほしい。我らの歩む道を、どうか守ってほしい。今日が君たちにとって、より良い一日にならんことを。健闘を祈る』


 再びの大歓声が上がる中、敬礼する各隊の眼光が一段と鋭さを増していく。

 その中で、魔導騎士隊だけは静かに、その闘志を胸に宿したまま、自身らの王へ向けた忠誠の眼差しを送っていた。


『陛下、ありがとうございました。それでは各隊は、所定の入場口へとお戻りください。その間に、改めて本日のルールと、解説役を務めていただく特別ゲストをご紹介させていただきます。それではお越しください』


 ゆっくりと、紺色の鎧と長いマントをたなびかせ、その男が実況席へと向かっていく。

 盛大な拍手で迎えられた彼は、ヤミーの隣に腰掛けると、深々と頭を下げた。


『本日はよろしくお願いいたします……ガイン様』


『はいよろしく』


 宮廷魔導師序列第六位。

 "輪廻卿"、ガイン=マイティアクス=トヴォリオン。三十五歳。

 長い茶髪と、もみあげから続く顎髭が特徴的な彼は、その眉目秀麗さで女性からの高い支持を得ていた。

 また、宮廷魔導師の中でも武闘派で知られる彼だが、当初は冒険家として世界にその名を轟かせており、あらゆる危険地帯に赴いては、その地に生息する様々な生き物を調査、研究し、また数多くの遺跡の発掘などの輝かしい功績を持つ。


 そんな彼の行動の根幹には、高い戦闘能力が間違いなくあり、だからこそ様々な危険が襲いくる地域においても、単独で全てを行うことが出来てきたのである。


『さて、ガイン様は本日の御前試合、どう見てらっしゃいますか?』


『そうですね……月並みなお答えになってしまいますが、やはり三番隊は頭が一つ抜けているように思います』


『なるほど……それはやはりギャラード副隊長が、ということでしょうか?』


『ええ。彼は非常に優秀な戦士です。私でも、彼の間合いにはあまり入りたくはないですね。また、もう一つ気になっているのは、アークライト卿が顧問を務める魔導騎士隊……今日初めて彼らを見ましたが、実に面白いことになりそうだと思いましたね』


 その発言に、観客席が騒つく中、天空に表示されたトーナメント表の文字が輝きを放つ。

 その進行の合図に、ヤミーは慌てて杖を握った。


『おーっと、ガイン様その話はまた後ほど伺いますッ! さて、それでは本日のルール説明を行わせていただきます……がッ! もはや説明など何もありませんッ! 今年もいつも通り……小隊と小隊がぶつかり合うだけとなっておりますッ!!』


 ルールは単純明快。

 制限時間十分の間に、東門と西門から登場した二つの隊がぶつかり、制限時間が終了した時点で、多く立っていたチームの勝利となる。

 当然、全ての隊員が倒された時点で、その隊は敗北が確定。

 また、逆に全員を倒して勝利したチームにはある特典が与えられる。


『さて、今年も救護隊としてご参加いただきます、もう一人のゲストをご紹介いたしましょう! オーダー様ぁー!』


『……はい』


 宮廷魔導師序列第七位。

 "黄昏卿"、オーダー=ダグネビアス=オンスロート。二十六歳。

 髪は紫で肩ほどまでに伸び、濃い紫色の服を着る彼女は、百四十八センチのルウナよりさらに小さく、見た目はまるで子供のような容姿をしている。


 しかし、その実力は本物であり、二年前に宮廷魔導師となって以来、様々な分野で国に貢献。

 歴史上最速で序列七位にまで上がったという、まさに本物の天才である。

 彼女は医学の分野が特に秀でており、世界に数えるほどしかいない、他者に対する超回復魔術を扱える人物であった。

 故に、昨年も治療のために御前試合へと駆り出されており、今年も当然のように参加することとなったのである。


『今年も怪我人が多数出ることが予想されます! どうぞよろしくお願いいたしますッ!』


『…………あ、はい。頑張ります』


『あ、ありがとうございます! また、オーダー様には全滅ボーナスといたしまして、全員を倒して勝利したチームに対し、回復魔術で全ての傷を癒していただきます! そちらもよろしくお願いいたします! さて、それでは皆様、天空掲示板をご覧くださいッ!』


 空に浮かぶ透明の板に、トーナメント表が描かれていた。

 そして、一回戦第一試合のチーム名が、白く点滅し始める。


『さぁ、一回戦第一試合で激突するのはッ! 十一番隊とッ……魔導騎士隊となりますッ!!』


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