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落ちこぼれの宮廷魔導師、元英雄を飼う~私が拾ったのは、かつて世界を救った最強の人でした~  作者: 松村道彦


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第20話:開催

 

 宮廷魔導師について……確かに、ウォードさんはどう思ってるんだろう?

 世界最強の……この人は。


「そうだな……ま、たいして宮廷魔導師について知ってるわけじゃねぇが、少なくとも俺が知ってるやつらは、魔導の道を極めるため、常に己を研鑽し、あらゆる(ことわり)の探究を行う……そんなバカばっかりかな。結果的にそれが国のためになってるってだけで、基本的には何かしらが欠落してる異常者の集まりだよ」


 な、なんてことを……!


「ほう……」


「ただ、ご主人はちょいと違う」


 ……え? わ、私?


「というと?」


「この人は、まだ自分を見つけられてねぇ。もったいねぇよ……ほんとに。この人の才能はピカイチだ。それは、ルシフェル様も分かってんだろ? だってのに、他人の論文の資料作りやら調査書の清書、どーでもいい王侯貴族向けの講習会の台本作りに、さらにくだらねぇ細々(こまごま)とした雑務……この人がやるべきことかねそれが。そのせいで、この人はいまだに自分を持てずにいる。そして、だからこそ助けたいと思った。俺がここにいる理由は……そんなとこだ」


 ウォード……さん……。

 やばい……泣くな泣くな!

 まだ話さなきゃいけないこともあるんだから!


「……よく分かった。君の言っている件については、私も憂慮している。近々、それについても検討する予定だ。君には期待している。アークライト卿のことを、よろしく頼む」


「おう」


「他に何か───」


「あ、あの! すみませんルシフェル様……一つ、よろしいでしょうか」


「何かね?」


「先ほどの情報提供をしてくださった方に関係する事柄なのですが……闇ギルドの数は、年々増加傾向にあります。もちろん、魔物のことも心配ですが、我がアルタイルに生きる人々の生活についても、どうかご一考いただければ幸いです」


「……うむ、私もそれについては対策を検討しているところだ。だが、そのためにはやはりギルド組合との連携が必要となるだろう。それが、この問題の解決を困難にしている一つの要因でもある。もう少し、時間を貰いたい」


 よかった。

 ルシフェル様も考えてくださっていたんだ。

 それにしてもギルド組合との連携か……また難しい問題だぁ……。


「……分かりました。お話を聞いてくださり、ありがとうございました。それでは、これで失礼───」


「待ちたまえ。最後に、連絡事項が一つある」


「あ、はい。なんでしょうか?」


「開催日未定となっていた賢人会だが、今月末に開催されることが決まった。今回は強制参加ではないが、出来るだけ参加してほしい。詳細は後ほど書面にて知らせる」


「わ、分かりました……お待ちしております」


 ……賢人会か。

 出たくないけど……出なきゃダメだよなぁ……。


「では、これにて終了とする。ヴァン魔導補佐官の資格証などは、後日発行出来次第送付しよう。それまで、城内では彼女の側を離れないように」


「ああ」


「では、下りたまえ」


「はい。それでは失礼します」


「しゃっす」


「……口調」


「失礼しまぁす!」


「…………うむ」


 ……もうやだこの人。



 ──────────────────



「ウォードさん!」


 私室に戻って扉を閉め、結界を展開してすぐに、私は彼へと詰め寄った。


「な、なんだよ怖い顔……いや、たいして怖くねぇか」


「ふざけないで聞いてください! そこ! 座る!」


「なんで片言なんだよ……」


「はやく!」


「わぁったよ! なんなんだまったく……ほら、これでいいのか?」


 ウォードさんが座ったのを確認し、私も自分の椅子に座り、机越しに彼を睨みつけた。


「……頭でも痛いのか?」


「違います! もぉ……なんでちゃんと話せないんですか!? ルシフェル様にあんな口をきく人なんてあなた以外にいませんよ!? 私は恥ずかしいですっ!」


「あー……あっちの国での生活が長かったからなぁ……基本的に敬語ってもんがないんだよ獣人の国って。敬語使うと、お高くとまってるみたいで煙たがられるからさ」


「郷に入っては郷に従えでしょう!? ここはアルタイルなんですよ! しかも城の中! 相手は宰相様! 国のトップ!」


「分かった分かった……次から気をつけるよ。んなことより、さっき言ってたなんだっけ……けんちん会?」


「賢! 人! 会! 不定期に開催される宮廷魔導師の会合です! それが何か!?」


「あ、賢人会か。つか、それにしてもあんた……怒るの下手くそだな」


「んなっ!?」


 怒るのが……下手!?

 は、初めて言われた……そんなこと……。


「まぁいいや。で、その賢人会ってのは、どんなことを話すんだ?」


「えっ、えっと……今各自がやってることとか、最近気になることを話したり、国にこうしてほしいって意見を出したり……とかですかね。ルシフェル様が進行役で参加されますので、端的に言うと、政府側が宮廷魔導師の話を聞く場、みたいな感じだと思います」


「なるほどね……だから、あんた出たくないわけだ」


「にゃっ!?」


 な、何故それを……!


「顔と態度見てりゃすぐ分かるぞ? あんた全部出てるもん。丸出しだよ」


「ま、丸出し……!?」


 うそ。

 私ってそんな顔に……態度にも出てるの?

 えー……じゃあ、今までもそうだったのかなぁ……。


「要するにあれだろ? やらかしちまった()()になって以降、ただでさえ新人で弱い立場のあんたが、より一層肩身の狭い思いをしてるって感じなんだろ?」


 ま、まるで見てきたように……。


「そ、そうです……めっちゃ睨まれたんですよ! なんで君はここにいるのかな? みたいな感じで、もう怖くて怖くて……だから、私なんかがいる意味ないんですよ。結局参加したって、蚊帳の外にいるだけですから。でも、出なかったら出なかったで、またいろいろ思われるんだろうなって……」


「ふーん……それって、俺は参加出来ねぇの?」


「え? ああ、従者は一人までなら問題なかったはずです……が……さ、参加するつもりですか!?」


「そりゃあんたが出るならな。他のやつらのつらも見られるんだろ? フッ……面白そうじゃねぇか」


「あわわ……」


 嫌な予感しか……しない。

 でも、多分ウォードさんは言っても聞かないし、やっぱり出ることをやめ……いやぁ……出なきゃダメだよなぁ……あーもぉ───


「…………仕事しよ。ちょっと黙ります」


「おう。資料が必要なら言えよー」


 考えるだけ無駄だ。

 もう知らない。

 なるようになれ、だ。


「楽しみだなー……けんちん会」


「賢! 人! 会!」


 ……やっぱり、考えとかなきゃダメかも。



 ──────────────────


 関係各位


 賢人会開催のお知らせ


 拝啓


 麗春の折、皆様ますますご活躍のこととお慶び申し上げます。

 さて、長らく開催未定となっておりました賢人会につきまして、下記の日程で開催される運びとなりましたことをご報告させていただきます。


 日時:天星歴二五二六年 四月三十日 午後六時

 場所:アルタイル城本館十三階第一会議室


 尚、今回は強制参加ではございませんが、出来るだけ多くの方にご参加いただければ幸いです。

 また、宮廷魔導師様一名につき、魔導補佐官の参加は一名までとさせていただきます。

 予めご了承ください。


 以上


 アルタイル国 宰相

 ルシフェル=ネイス=ムーンライズ



 ──────────────────



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