第5話 世界
アイリス姫と出会って3日が経ち、王都からの招集は4日後に迫る。
だがケンの意思はまだ決まっておらず、剣の腕にも支障をきたしていた。
それに気づいたケンの父「リュウ」はその日の夜、ケンと対談した。
「お前に特別招集の件を話した日から、お前の動きは鈍くなっていった。
だが森での生活で磨かれた力はそんな簡単に落ちはしない。お前の力はまだ伸びしろがある。
だからこそ今、お前がなぜ立ち止まっているかを突き止めなければならない。何があった?」
下を向いていたケンは顔を上げて、リュウの目を見て話す。
「父さん!実は3日前に、アイリスとユーヴェルというお姫様と騎士に会ったんだ!
……だけど近衛騎士団を目指す者として、今の実力に自信を無くしているんだ……」
「そうか。アイリス姫とユーヴェル様に出会ったのか。お前はそれで、何を感じた?」
リュウの質問に、ケンは拳を握りしめる。
「ユーヴェル……様に、恐怖した。あの人がアイリス姫と帰って行った時に、敵に連れ去られたように感じた……」
「そういう事だったのか。それで招集の事もあり、憂いていたんだな?」
ケンはうなずいた。
「ケン、お前のそれは誰もが通る最初の道だ。」
「……え?それはどういう……」
「自分の力が自信に満ちていた時、自分以上の実力者と対峙した時、人は初めて絶望する。
だが、その絶望こそが初めて自分の力の壁となり、それを乗り越えて、初めて人は強くなる。
お前はユーヴェル様を見て、その圧倒的な迫力に屈したと見るが、最初の壁に当たったに過ぎん。」
「最初の壁……?」
「そうだ。ユーヴェル様を越えろとは言わないが、お前はまだ自分以外の実力者を知らない
つまり世界を知らない。」
ケンは、自分が森の世界では頂点に立っていたと過信していた。
だがそれは小さな森の世界、この世界に出てきたケンは、まだ知らなかった。
「だから最初に言っただろう。お前はまだ、産まれたてのヒヨコに過ぎないと。お前はそれを、身体で感じたんだ。
だが落ち込むことはないぞ、お前と同じ実力者も大勢いる。この特別招集にも必ず、ライバルは存在する。
ライバルさえいれば、お前の力はまだまだ強くなり、いずれユーヴェル様をも超える騎士になれる!何にしろ俺の息子だからな!!
だから必ず合格する!何も気にするな!!」
リュウはケンの両肩を掴む。
そして、ケンの曇り空に再び日光が差し込む。
「ありがとう父さん、勇気を貰えたよ。
でもこの特別招集にはやっぱり納得が行かないな。」
悩みが無くなったとはいえ、まだケンの意思は確実なものへと定まってはいない。
そこで、リュウは提案した。
「よし、1度王都に出かけてみるか!騎士とはどんなものなのかお前の目で見定めてこい!」
「王都に!?そこは出入りしていい所なのか!?」
「シールド王国の王都ガードは奴隷含め全ての身分が混在する極めて異質な場所だ。
扉も常に開放されており出入り自由。
警備も万全だからシールド王国なりの他国への牽制なんだろう。
運が良かったらアイリス姫と再開するかもしれんぞ?」
「そんな簡単に会う存在じゃないだろう。
でも王都に行ってみたい。」
ケンは好奇心に目を輝かせる。
「決まりだな。(……アイリス姫と1度あっているのは王手だ。ケンは王都の世界を見た時、確実に入団志望を決意するだろう……)」
そうして、2人で王都ガードを訪れる。




