第3話 アイリス姫①
賊に襲撃されたサヤ村を救ったケンは、王都から近衛騎士団の特別招集を受けた。
この特別招集を辞退すれば身分剥奪となり、奴隷行きとなってしまう。
だがシールド王国の近衛騎士団の試験に不合格となった場合も奴隷行きとなってしまう。
奴隷行きとなるか、近衛騎士団になるかの2択を
ケンは迫られていた。
―――王都ガード、スタフィ城―――
「アイリス姫様はどこに行かれた!!また抜け出しおって!!衛兵!衛兵はどこじゃ!!」
教育係のセルティが城内を捜索する。
「申し訳ございませんセルティ様!!見張りの塔から報告が!場外にて姫様の姿を発見した模様!!」
兵士の報告に、セルティは激怒する。
「何をやっとる愚か者!!シールド王国の未来を託される姫様を逃がすなどあってはならんことを!!
日没までに連れ戻せ!さもなくば貴様の身分を剥奪するぞ!!」
セルティの命令で兵士は動こうとしたが、セルティの背後にいる兵士を見て兵士は膝まづく。
「まぁまぁ落ち着いてくださいセルティ様。」
セルティの肩を掴む兵士。
「おい、わしの肩を掴むとはどういう権限で……ッッッ!?!?」
その人物は、シールド王国の近衛騎士団団長
ウィリアム・ユーヴェル。
「ご安心を、アイリス姫には護衛も付いていますので。」
セルティは肩の手を取り払った。
「そんな話ではない!!姫様が脱走したことが問題なのだ。これはお主でも責任を問われるぞユーヴェル。あと様をつけんか様を。」
ユーヴェルは近衛騎士団の最強の実力を持ち、その圧倒的実力者故に、国王から放任主義で全権力を彼が握っている。
「セルティ様の心配は当然のこと。ですが、この僕が大丈夫と言うからには大丈夫なのです。なので落ち着いてください。あなたが慌てると兵士は恐怖しますよ。」
「フン、わしごときに怯えるようじゃ兵士なんざ務まらんわい。兵士のレベルも落ちたもんじゃなユーヴェル。」
セルティは去っていった。
「さて、どうしたものかな。」
―――サヤ村―――
近衛騎士団招集の件で悩んでいたケンは、ずっと悩んでいてもしょうがなかったので、平原に出て剣を振っていた。
「ふう……千回程振っていたけど落ち着かない。やっぱり気に食わない。」
剣を置いて一休みしようとした時、森から走っていく人影が見えた。
「少女?……いや、あれは逃げてる!?」
少女の後ろからは狼が2匹ほど追いかけていた。
狼はすぐにでも追いつきそうだった。
「まずい、助けないと!!」
急いで駆けつけるケン、少女はつまずき転倒。
「いッ……!あ、いや!来ないで!!」
少女に飛びかかる狼、ケンは剣を投げた。
1匹の狼に刺さり、2匹目は当たらず、ケンの方向に襲いかかる。
「このイヌッコロめ……いい加減にしろ!!」
ケンは素手で狼を何度も殴り、狼は逃げていった。
「あ、あの!!ありがとうございます!!助けてくれて、名前は!お名前はなんといいますの!?」
彼女は目を輝かせながらケンに話しかけた。
ケンは初めて年頃の女の子と話すのが初めてなのか妙に緊張した。
「だ、大丈夫……大丈夫、無事ならそれで。」
彼女はケンの手を握る。
「それよりもすごいですわ!!あの獰猛な犬を相手に素手で退治しちゃいますもの!とてもお強いですわね!」
「そ、そんなこと……僕は……僕はただ助けただけです。」
「ありがとう!!それで名前は?」
「ケン……ケンと言います。あ、あなたの名前は?」
彼女は手を離し距離を取る。
「あらそうでした。自分より相手に名乗らすなんて失礼しましたわ。
私の名はアイリス、アイリス姫ですわ。」
「ひ、姫様……!?なぜここに!?というか護衛は……」
やはり動揺するケンにアイリスは少しムッとした。
「落ち着いてケン!別に今そんな緊張するほどのことじゃないでしょ!」
「ご、ごめん……」
ケンは冷静になった。
――平原に座って2人は話す。
「それで?あなたは近衛騎士団に招集されて思い悩んでるというわけ?」
「ええ。僕は近衛騎士団には興味が無い。
だけど拒否すれば奴隷にされてしまう。」
「受けても受けなくても奴隷のリスクはある……かあ。でも招集を受けてここにいるのはまだ時間があるからってこと?」
「そう、僕は1週間後近衛騎士団にならなきゃ行けない。
だけど決意が固まっていないんだ……」
頭を下げるケンになにか出来ないかと考えるアイリス。
そんな2人の元に、馬車が駆けつける。
「ゲッ、見つかっちゃった……」
中からユーヴェルが降りてきた。
「アイリス姫、ご無事で何よりです。城に戻りましょう、セルティがカンカンに怒っています。」
「はい……分かっています。セルティは厳しいお方ですから。」
アイリスの表情が暗くなったのをケンは見逃さなかった。
アイリスが手を握ろうとした時、その間に割り込んだ。
「すみません、アイリスが嫌がってそうに見えたので。」
ユーヴェルはケンを見つめる。
アイリスはケンの手を下げようとする。
「アイリス姫、この者は?」
「ケン、お願いだから下げて、この人は近衛騎士団最強の騎士、ユーヴェル様よ。」
「なっ!?近衛騎士団の最強……。」
それを知った時、どんどんユーヴェルの姿が大きく、闇が深くなっていき、ユーヴェルの穏やかそうな視線を感じるだけで、ケンの身体は心臓を掴まれたかのように感じ、震えた。
だが目はそらさなかった。
「ケンと言ったね、君はとても勇敢だ。だけど怯えすぎだ、敵意も向けすぎで隙がありすぎる。それでは護衛は務まらないよ?」
ユーヴェルはケンの肩を優しく叩く。
ケンはそのまま崩れ落ち、動けなかった。
「そ、それじゃケン、ごきげんよう。」
「ア、アイリス姫……」
ユーヴェルと共に去っていくアイリス。
ケンはただ傍観することしか出来なかった。
まるで彼女を敵に捕らえられたかのように……




