第2話 近衛騎士団特別招集
賊に襲撃されたサヤ村はケンの帰還によって事なきを得た。
だが被害は決して小さくはなかった。大事な人、お店、家畜、全てにおいて甚大な被害が出たため、復興にも王都からの支援も受けざるを得なかった。
「……この死体のゴミは誰がやった?」
兵士がケンに助けられた女性から事情聴取していた。
「彼です。あの剣を持った好青年、名はケンと言います。」
兵士はケンを見つめ、死体のダメージも見て、しばらく凝視していた。
――ケンは父の教えで森で生活し、任期を終えたところで初めて、村に帰還していた。
村人がケンの存在を認知していたのは、森で生活する彼を見守っていたからだ。
「よく帰ってきたなケン、帰還を祝いたいところだが、タイミングが悪かったな。」
村長がケンに話しかける。
「そんなの全然気にしないよ。僕の力が役に立ってよかったよ。 」
「より大きくなったねえケン。あたしがもっと若かったらあんたを口説いてた頃だよ?」
「おばさん!そんなこと3年前も言ってたじゃないか。」
「ケン!!さっきは助けてくれてありがとう!本当に死ぬかと思った!!」
ケンに助けられた女性だ。
彼女は酒場の店長だ。
ケンと父親子でよく飲んでいた。(ケンは未成年のためソフトドリンクを飲んでいた。)
「姉御!!本当に間に合ってよかった!帰ってきた時に真っ先に飲みたかったんだ!!」
「そらそうさ!もう成人になったんだし、最高級の酒を用意してやるよ!!皆も飲みな!!」
「姉さんもう呑んでるじゃねえか!!俺たちも呑むぞ!!」
村は壊滅しても、村人たちはケンの帰還に大喜びしていた。
――ケンはこっそり抜け出し、実家に帰る。
幸い、ケンの家は無傷だった。
扉を開けると、父親が居座っていた。
「よく帰ってきたケン。おかえりなさい、随分と大きくなったな。」
「ただいま父さん。家は何とか無事だったんだね。」
「無論だ。お前が帰ってくる場所を護らない父親が何処にいる。」
「そうだね。でも父さん、3年ぶりの再会なのに真剣だね。大事な話でもある?」
ケンがそう言うと、父親は頷いた。
ケンはすぐさまテーブルに着く。
そして、1枚の紙を渡された。
「これは……!?」
「お前がみんなと盛り上がっている中、ここに兵士が尋ねてきた。
事件の聴取もしたが、その後兵士はすぐにこれを出してきた。」
その紙にはこう書かれていた。
「近衛騎士団入団特別招集について」
シールド王国は毎年、成人を迎えた男女を近衛騎士団に招集している。
「資格があるのは分かったけど、僕は入るつもりは無いよ。身分とかもそんなに興味は無いし。」
ケンは紙を父親に返した。
「まあ最後まで聞け。近衛騎士団の招集には2種類あってだな。「一般招集」と「特別招集」だ。
一般招集は成人した全ての男女だが
特別招集は近衛騎士団が推薦した男女だ。」
「……特別招集ってことは僕は推薦されたってこと?」
「そうだ。特別招集は貴族の生まれでもそう声がかかることは無い。
お前は王国に認められたんだ。」
「……悪いけど、それでも僕は乗る気じゃないな。王族を護るよりも、僕はこの村を護りたい。」
それでもケンは受け入れる気は無かった。
だが父親の次の発言でケンの運命は大きく変わる。
「そう言うと思ったよ。だがなケン、この特別招集には拒否権は無いんだ。この紙をもう一度よく読んでくれ。」
「な!?」
ケンは驚き、もう一度読んだ。
「貴殿は王都ガードにて行われる近衛騎士団入団試験に推薦枠として、特別招集する。
この特別招集を受けた者には試験を辞退する事は許されず、万が一辞退あるいは、逃亡をした者はその一族全員の身分を剥奪し、奴隷とする……!?」
ケンは少し震えた。
「分かっただろう。お前には拒否権は無い、強制的に近衛騎士団になるしかないんだ。」
ケンは紙を叩きつけた。
「ふざけるな!これはいくらなんでも無茶苦茶すぎる!拒否権が無いだと!?そんなの民の怒りを買うだけじゃないか!!尚更、受けたくないよ……。」
「ケン、お前の気持ちはわかる。森で生活し、3年ぶりに帰ってきた直後村を襲撃され、強制的に入団試験を受けらされる事はとても軽いものじゃない。
だが悪いことでは無いぞ、特別招集がかかったのなら尚更受けて実力を見せつければいい。
合格すれば、特権階級になれるのだからな。リスクはあるが。」
落ち着き考えるケン。
父はさらにこう言った。
「いいかケン。お前の力は十分なものに成長した。だがそれはまだ産まれたてのヒヨコに過ぎない。森が卵だとすれば、お前はそこからまだ出てきたばかりなんだ。
殻を破った世界はとても広い。森の中以上に強い敵は沢山いる。お前の力なんぞ微塵にもならん程にな。
だからこその機会だ。お前はまだ世界を知らない。だからお前は世界を知れ。その小さき力で、強大な敵から護る事がどれ程の誇りかを知れ。
これは、元兵士である俺からの次の教えだ。」
ケンは沈黙する。
「お前には護るべきものは既にある。サヤ村のみんな、家族。それらを賊の手から護った。
お前は十分に素質はある。必ず合格出来るさ。
1週間後に使者がお迎えに来る。
それまでに決意を固めなさい。」
父親は去り、薄暗い台所で1人ただ深く、考えていた。
期限は1週間。その間に、ケンにとって運命的な出会いが待ち構えていた。
それはケンの意思を決定づける出会いである。




