第9話 権力
時折、貴族に遊ばされている奴隷の姿を目にするが、ケンの立場は「庶民」であり、絶対王政であるこの国では、彼らに逆らうことはできない。
そのため、彼は必死に堪えていた。
――父親のリュウは街の噴水広場で待っていた。
そして、ケンは帰ってきた。
「どうだった?王都を探索した感想は。」
「……アイリス姫と遭遇して、一緒に行動した。
楽しかったよ。
だけど戻る時、奴隷の姿も目にした。」
「そうか。だがお前の目を見ると、意志は定まったようだな。
目的は果たしたし、帰ろう。」
ケン親子が王都を去ろうとした時、誰かの叫び声が聞こえた。
「イヤァァァァァァ!!!」
「っ!?何だ!?」
ケン親子はすぐさま悲鳴があった所に駆けつける。
そこには、斬られ男性と、悲しむ女性、そしてケンと同い年に近いような剣を握っていた青年だった。
「いくらなんでもこれはやりすぎよ!彼、意識が無いじゃない!!」
「んなこたァ知るかよ。俺様の注文に応えることが出来なかったコイツが悪い。
俺様を誰だと思ってやがる。」
どうやら男女は鍛冶屋を営んでおり、青年の剣の修理を依頼していたようだが、ほんの僅かな刃こぼれを青年は見逃さなかった。
「安心しろ、こんな剣じゃあ致命傷にはなってねぇよ。
つっても俺様の身分が上である以上てめぇらのミスは許されねぇんだよ。」
「……ッッ!!いい加減にしろ!!」
ケンはついに我慢の限界で飛び出してしまった。
「よせケン!!」
リュウが止めようとしたが、抑えることはできなかった。
「どいつもこいつも、身分身分ばっかり言いやがって……!!そんなに貴族が偉いのか!!」
「なんだてめえ。偉いに決まってんだろうが。
それがこの国の制度だからな。」
「ケン!!彼の言うとおりだ!今のお前に、彼を裁く権利は無い!!」
「うるさい!どっちみち僕は特別招集を受けている以上、騎士団の権力を持つことに変わりは無いはずだ!!」
「なんだ、てめぇ如きが特別招集受けてるのかよ。上も落ちたもんだな。」
彼はケンと変わらない背丈だが、前に立つと彼の覇気が、ケンに伝わっていく。
「俺様はジャック、士族の生まれで上から特別招集を受けた人間だ。てめぇと違い好き勝手する権利は最初から俺様にはあるってこった。」
「だから……!!権力なんざ僕は知らない!」
剣を抜いたケンは、ジャックに振り下ろす。
……が、ジャックは攻撃を片腕だけで受け止める。
「なっ……!?僕の攻撃を!?」
「なんだよ、てめぇそんな力で特別招集を受けたって言うのかよ。甘ぇんだよ!!」
ジャックはそのままケンを弾き飛ばす。
吹っ飛ばされたケンはすぐさま受け身を取る。
「くっ!!あいつの剣の衝撃がまだ腕に残っている……なんて力だ!」
「てめぇ俺様に牙を向いたってことはそれ相応の覚悟は出来ての事なんだろうなァ?」
ジャックはケンに近づいていく。
ケンから見れば、彼は力の底が見えず、力の差がはっきりとしたことを自覚し、彼の姿が大きくなっていくのを感じた。
ジャックが剣を降ろそうとした時、二人の間に誰かが割って入った。
「両者そこまでだ。これ以上の争いは
僕が許さない。」
間に入ったのはユーヴェルだ。
「おい、あんたの出る幕じゃあねえだろうが。止めてんじゃねえよ。」
「ジャック、君のその気性の荒さは礼儀に欠けるよ全く。」
ジャックは舌打ちしながらも剣を納める。
「皆すまないね、この2人は僕が認めた未来の剣士様だ。この場は僕が責任を持とう!!」
――鍛冶屋での騒動は駆けつけたユーヴェルによって鎮まった。
彼の権力は国王並に大きく、民衆は彼の言葉に従うからだ。
よってケンの貴族に対する行動も取り消された。
だがこの国は権力がものをいう。
庶民の権力で不自由さを感じたケンは、ただただ屈辱的な気分になっていた……




