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前世安全管理者の異世界ホワイト戦記~死にたくないので安全部隊を作ったら、勘違いで不敗の魔導名将に。夜の放電メンテナンスを求められて困っています【R15】~  作者: トール
第十一章:セルヴィア聖王国の異端審問と、飛竜部隊(空の墜落ハザード)

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第072話:聖女クラリスの救護と「空中安全帯アース」

 


 大樹界の奥深く。


 先ほどまでの熱風と乱気流の余波により、古木の立ち並ぶ森は不自然なほどの熱気を帯びていた。


 高空で揚力を奪われ、コントロールを失った白銀の飛竜は、巨木の太い枝に激しく激突して全損(セルフ労災死)していた。


 その崩れかけた樹冠の隙間から投げ出されたセルヴィア聖王国の聖女クラリスは、地上から数十メートルも離れた高所で、奇跡的に法衣の帯が太い枝に引っかかり、宙吊りの状態となっていた。


「はぁ……っ、はぁ……っ。主よ……、どうか、迷える私に、救いの光を……」


 クラリスの意識は混濁していた。


 重厚な白銀の鎧と何層にも重なる純白の法衣は、熱対流による急激な気温上昇の中で彼女の体温を容赦なく奪い、全身から大量の汗を噴き出させていた。唇はカサカサに干からび、視界はぐらぐらと激しく揺れている。


 それに加えて、いつ枝が折れて真っ逆さまに墜落するかわからないという極限の恐怖が、彼女の精神を容赦なく削り取っていた。


(……この急激な気温上昇(WBGT値の急上昇)に、あの極端な厚着。不適切な保護具の着用による重度の『熱中症ヒートストローク』だな。それに、あんな不安定な高所にぶら下がったまま放置すれば、いずれ体力が尽きて墜落災害(死亡事故)に直結するぞ)


 ルディ・フォン・バウムガルトは、森の地上から網膜の【ガス・温度検知ディテクター】でクラリスの真っ赤な熱信号バイタル・アラートを確認すると、冷徹に状況を分析した。


 ルディは自身の腰と太ももを強固に固定する『フルハーネス型安全帯』を素早く装着すると、土木魔法を用いて巨木の幹に足場を隆起させ、瞬く間にクラリスの吊り下がっている高所へと到達した。


「な……悪魔、の……眷属……っ! 近づかないで……!」


 朦朧とする意識の中でルディの姿を捉えたクラリスは、虚勢を張って彼を鋭く睨みつけた。


 だが、ルディはそんな彼女の言葉を完全に無視し、持参したスリングベルト(強靭な帯状の命綱)を彼女の身体に素早く回し、背後の最も太い幹へと頑丈なカラビナでカチャリと固定した。


「墜落の危険がある高所での救護作業だ。まずはランヤード(命綱)を固定し、フックを確実に掛けろ。……よし、安全確保ロックイン完了だ」


「な、何を……」


「暴れるな。直射日光と急激な温度上昇による『熱中症ハザード』の初期症状だ。衣服を緩めて体熱を放散させ、これを舐めろ」


 ルディは有無を言わさぬ手つきで、クラリスの身を締め付けていた重い白銀の胸当ての留め金を外し、彼女のカサカサに乾いた口元へゴツゴツとした『塩飴』を押し込んだ。さらに、腰の水筒から冷たい経口補水液(ORS)を彼女の喉へと優しく流し込む。


「んむっ……、こ、これは……甘くて、塩気があって……っ」


 干からびていた細胞が、強制的に与えられた塩分と水分をスポンジのように吸収していく。クラリスの焦点の合っていなかった青い瞳に、わずかな理性の光が戻った。


「な、なぜ……悪魔であるあなたが、私を救うのですか……。これは神が私に与えた試練……。私は、神の御許へ……っ」


「神の試練だと? ふざけるな。それはお前の上司トップが『気象条件(乱気流リスク)』を無視して無謀な突撃を命じた結果の、ただの『セルフ労災(自滅)』だ」


 ルディは冷徹な声で、狂信的な聖女の精神論を真っ向から切り捨てた。


「お前たちの神は、高所から落ちるお前の命を物理的に守ってはくれない。だが、俺の定めた『安全基準フルハーネス』は、確実にお前の命を地上へ繋ぎ止める」


「あ……」


 クラリスは絶句した。


 確かに彼女は今、ルディの結びつけた一本の命綱によって、数十メートルの高空という死の淵から完全に守られているのだ。


(よし。バイタルは安定してきた。……だが、あのカチカチに凝り固まった狂信バグを放置すれば、また現場で不安全行動テロを起こしかねないな。この高所の環境を逆用して、一気に自律神経を書き換えるぞ)


「悪魔、の……教えになど……、私は、屈しな……ひゃうっ!?」


 クラリスの白く細い首筋に、バームを塗ったルディの手のひらがピタリと触れた。


「ここからが、俺の陣営の『安全衛生教育ヘルスケア』だ。……高所作業における墜落の恐怖は、人間の交感神経を極限まで緊張させる。いわゆる『吊り橋効果』という心理的現象だ」


 ルディの指先から、青白い【微弱放電】の火花がバチバチと放たれた。


「ひゃあああああっっっ!? な、なにこれ……っ、電気が……身体の、奥に……っ!」


「その恐怖で極限まで張り詰めた神経系に、俺の電気パルス(低周波刺激)を流し込めば……過度なストレスは容易に、強烈な安心感と脱力リラクゼーションへと変換される」


 宙吊りという圧倒的な高所の恐怖。


 そして、ルディの命綱によって絶対に落ちないという圧倒的な安心感。


 その二つの極端な感情が交差する中、ルディの指先から流し込まれる電撃の快感パルスが、クラリスの脳髄を直接揺さぶった。


「あ、あつ……熱いわっ! 神様、お助け……っ、いや、違う、神様じゃなくて……っ、ルディ、様の、電気が……お腹の奥を、ドロドロに溶かして……っ!」


 ルディの手は、クラリスの純白の法衣の生地越しに、汗ばんだ白く滑らかな太ももの内側へと容赦なく滑り込んでいく。


「あはぁぁっっ! だめ、そんなところ……っ、落ちる、私、落ちちゃうぅぅっ!」


「落ちない。俺の安全帯セーフティネットがお前を完璧に支えている。……俺のルール(安全第一)だけを信じて、すべてを委ねろ」


 ルディが、最も神経の集中する太ももの内側の深奥(経絡のツボ)へと電流を集中させた瞬間、クラリスの青い瞳から狂信的な険しさが完全に消え去り、熱く蕩けきった乙女の顔へと変貌した。


「あぁっ! 溶ける……っ、私の信仰が、強がりが……全部、あなたの電気で流されてしまうわ……っ!」


「いいぞ。その調子で、俺のシステムにコンプライアンス(服従)をインポートしろ」


「イクっ! あなたの電気で……私、完全に書き換えられてしまいますわぁぁっ!」


 高空の森に、聖女の極限の絶頂(自律神経の強制シャットダウン)の悲鳴が響き渡った。


 彼女は命綱に支えられたまま、ガクッとルディの胸に倒れ込み、心地よいデトックスの汗を全身から噴き出させながら、幸せそうな涙をこぼした。


「はぁ……はぁ……っ。あなたの……あなたのルールに従いますわ、ルディ様……。神より、あなた様の安全基準の方が……ずっと、温かいです……っ」


(よし、新規リソースの『空中安全帯アース』、完全成功ヨシだ)


 ルディは、完全に骨抜きになった聖女を抱え、土木魔法で安全な地上へと降り立った。


 地上では、バウムガルト隊の兵士たちがすでに飛竜の残骸の片付け(5S整理整頓)を終え、幹部ヒロインたちがルディの帰還を待っていた。


 ルディは、ぐったりと蕩けた顔で彼にすがりつくクラリスを降ろすと、冷徹な声で一人の女性を呼び寄せた。


「テレーゼ、前へ」


「はい、ルディ様。お待ちしておりましたわ」


 財務主任であるテレーゼ・フォン・ベルンハルトが、丸眼鏡を光らせながら優雅な足取りで進み出た。彼女は今や、ルディの電気なしでは生きていけない艶やかな色気を放ちながらも、その瞳には知的な冷徹さを残している。


「お前は数字とロジックのプロだ。この狂信的な宗教観バグを、安全第一というロジカルな教義に計算し直して書き換える『OJT(実地研修)』は、お前にデリゲーション(丸投げ)する」


「お任せくださいませ、ルディ様」


 テレーゼは、へたり込んでいるクラリスを見下ろし、極上の微笑みを浮かべた。


「この禁欲的な聖女殿下に、我が陣営の絶対の規律を、数字とロジックで一から丁寧に再教育いたしますわ。……ええ、ルディ様の『安全の教義』の甘美さを、骨の髄まで、そして帳簿の隅々まで教え込んで差し上げましょう」


「頼んだぞ。彼女を、我が陣営の『最高衛生責任者(メンタルケア特化)』として立派に育て上げろ。……手順、ヨシだ」


 こうして、空からの脅威であったセルヴィア聖王国の異端審問は、ルディの圧倒的な安全管理ロジックと財務主任による完璧なOJT制度によって、完全に無害化(ホワイト吸収)されたのである。




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