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前世安全管理者の異世界ホワイト戦記~死にたくないので安全部隊を作ったら、勘違いで不敗の魔導名将に。夜の放電メンテナンスを求められて困っています【R15】~  作者: トール
第八章:本社監査と西の足場固め(ライセンス取得編)

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第063話:鉄血女帝への最終監査と、強制ホワイト調律(デトックス)

 


 軍事超大国カストル帝国の首都、カストル・グラード。


 かつては恐怖と規律で支配され、何万もの兵士が血の汗を流して練り歩いていたその巨大な帝都は今、極めて静かで、かつ奇妙な熱気に包まれていた。


「――開門ッ! バウムガルト軍、ならびに『労働基準監督署』の強制立ち入り監査である! 抵抗は無駄だ、大人しくゲートを開けろ! 安全第一、ヨシ!!」


 帝都の正門前。

 ピカピカの黄色い安全ヘルメットを被った巨大な男、特別顧問ヴォルフガングが、遠隔拡声魔導具マイクを握りしめて大音声で呼びかける。


 城壁の上に立つ帝国兵たちは、かつて最も冷酷だった将軍が、最高に健康的な笑顔で「安全第一!」と叫んでいる姿に激しく動揺した。さらに彼らの鼻腔には、バウムガルト隊の給炊班が風上から漂わせる『極上ハサップ(HACCP)給食(ボア肉のシチュー)』の暴力的なまでの美味そうな匂いが届いていた。


「お、おい……。あれが噂のバウムガルト軍か……。武器じゃなくて、美味そうな飯の鍋を掲げてるぞ……」


「第三工場の連中も、巨大兵器の奴らも、みんなあっちに寝返って週休二日でぬくぬく生きてるって話だぜ……。俺たちも、もう女帝の無茶振り(デスマーチ)にはついていけねえ……!」


 ガチャガチャンッ……!


 重厚な帝都の門が、内側からあっさりと開け放たれた。


 帝国兵たちは武器を捨て、一斉にバウムガルト軍の炊き出しテントへと「投降(面接希望)」の列を作り始めたのである。


「よし! 帝都の物理セキュリティ、完全無血解除ロックアンロックだ。……やはり、空腹と不満を抱えたブラック現場の労働者は、圧倒的な『福利厚生』の前に一秒も抗えないな」


 冷房の効いた馬車から降り立ったルディ・フォン・バウムガルトは、冷徹な管理者スマイルを浮かべ、帝城の中枢――本丸へと真っ直ぐに歩みを進めた。


 その両脇には、エリーゼ、カタリナ、テレーゼといった、彼に「調律」され尽くした優秀な幹部ヒロインたちが、ピカピカの制服を着て付き従っている。


 ◇ ◇ ◇


 帝城の最奥、重苦しい空気に満ちた玉座の間。


「――なぜだ。なぜ、誰も戦わない。なぜ、我が無敵の兵士たちが、たかが飯と休日のために国を捨てるのだ……!」


 玉座に一人座り、血走った目でギリッと自身の爪を噛み締めていたのは、カストル帝国の最高権力者、『鉄血の女帝』ヴィクトリア(二十五歳)だった。


 かつて大陸を震え上がらせた冷酷な美貌は、今や見る影もない。

 睡眠時間ゼロの連続稼働。度重なる敗報のストレス。そして何より、恐怖支配を維持するために彼女自身が常用していた『覚醒秘薬(違法ドラッグ)』の過剰摂取により、彼女の神経系は完全に焼き切れかけていた。


 バンッ!と、玉座の間の重い扉が開かれた。


「――カストル帝国のトップだな。労働安全衛生法違反、ならびに不当な労働搾取の現行犯で、これより最終監査を執行する」


 ピカピカのハイブリッドダウンベストを羽織ったルディが、悠然と玉座の間へと足を踏み入れた。


「貴様が……バウムガルトの四男かッ!」


 ヴィクトリアは玉座から立ち上がり、フラフラとした足取りでルディを睨みつけた。


「我が帝国を、我が誇りをカネと飯で買収しおって……! 帝国は、血と恐怖によってのみ鍛え上げられるのだ! 貴様のような軟弱なホワイト企業など、私がこの手で焼き尽くしてやるッ!」


 女帝の全身から、無理やり薬物で引き出されたドス黒い魔力が暴走気味に噴き出す。

 だが、ルディは一歩も引かず、自身の網膜に【ガス・温度検知ディテクター】を展開した。


(……ひどいエラーログだ。極度の睡眠不足、薬物依存による交感神経の暴走。心拍数は限界を突破し、自律神経が完全にメルトダウン寸前だ。……こいつは最悪のブラック経営者であると同時に、自らの精神論に縛られた『最大の過労被害者(犠牲者)』でもあるんだな)


「血と恐怖だと? 笑わせるな、女帝」


 ルディは、放たれる魔力の圧を【土壌安定】によるアースで完全に無効化しながら、ヴィクトリアの眼前へと一瞬で肉薄した。


「なっ……!?」


「お前のその強がりは、ただの薬物中毒と極限の過労ハザードだ。他人に頼ることを知らず、自分自身すらも部品として使い潰す……。そんな狂った経営方針ロジックで、国が保つはずがないだろうが」


 ルディは、抵抗しようとするヴィクトリアの細い両手首をガシッと掴み、そのまま彼女を玉座の冷たい床へと強引に押し倒した。


「離せッ! 私に気安く触るな! 私は、鉄血の女帝だぞッ!」


「トップの体調不良は、最大の経営リスクだ。これより、安全管理者として、お前に『強制休眠(強制有給)』を命じる」


「な、何を――ひゃっ!?」


 ルディは、バームを塗った手のひらを、ヴィクトリアの強張った白い首筋と、軍服の隙間から覗く肩甲骨へとピタリと押し当てた。


 バチバチバチッ!!!


「ひゃああああああああっっっっ!!!???」


 ルディの指先から、青白い【微弱放電マイクロパルス】が、ヴィクトリアの極限まで緊張しきった神経系へと直接叩き込まれた。


「あ、あつ……熱いぃっ! なに、これ……っ、首の奥から、背骨に、電気がビリビリって……っ!」


「これは『電気刺激による強制デトックス(物理療法)』だ。お前の自律神経にこびりついた薬物の残滓と、強迫観念という名の異常なコリを、俺の電気で分子レベルから融かして(アースして)やる」


 ルディの指先が、ヴィクトリアの背中から腰のくびれ、そして軍服の布地越しに、彼女の太ももの内側へと容赦なく滑り込んでいく。


「あ、あはぁぁっっ! だ、だめ……っ! そんなに気持ちよくされたら……私、帝国の誇りが、頭から溶けて消えちゃうぅぅっ!」


 極限の過労状態にあった彼女の身体は、ルディの放つ快感物質エンドルフィンの奔流に耐えられるはずがなかった。


 痛覚麻痺の薬物で狂っていた神経が、極上の快楽パルスによって強制的にリセットされ、本来の『人間としての温かい感覚』を取り戻していく。


「お前はもう、一人で帝国を背負う必要はない。痛みに耐える必要もないんだ。お前のその国は、今日から俺の『ホワイトな子会社』として、安全で快適に生まれ変わる」


「る、ルディ、様……っ! あ、あぁっ……私、本当は、もう、ずっと前から……休みたかった……っ! 眠りたかったの……っ!」


 ルディの電撃パルスが、彼女の疲労が蓄積した経絡の最奥をバチバチと刺激した瞬間。

 張り詰めていた「鉄血の女帝」の仮面が、完全に砕け散った。


「あぁっ! もう帝国なんてどうでもいい! ルディ様の電気(ホワイト待遇)で、私をめちゃくちゃに癒やして、休ませてぇぇぇっっ!!」


 ヴィクトリアは白目を剥き、これまでの重圧から解放された無防備な乙女の顔を晒しながら、ルディの腕の中で心地よい痺れに身をよじらせて、極上のリラクゼーション(強制シャットダウン)を迎えた。


 シーツ代わりに敷かれた帝国の旗を大量の心地よいデトックスの汗で濡らし、完全に骨抜きにされた彼女は、「ルディ様ぁ……私、一生あなた様のホワイト子会社(忠実な労働資産)として働きますぅ……」と、幸せそうな寝息を立てて気絶(休眠)した。


(よし! ブラック女帝の強制有給メンタルケア、完了! そしてカストル帝国の完全子会社化(M&A)、ヨシ!)


 ルディは立ち上がり、玉座の間の外で待機していた幹部ヒロインたちとヴォルフガングに向けて、冷徹に、そして高らかに宣言した。


「これにて、カストル帝国完全乗っ取りプロジェクト、全工程完了だ!

 軍事大国は、今日から俺たちの『最大のホワイト生産拠点』として生まれ変わる! 全作業員、現場の整理整頓(5S)と、新入社員の受け入れ(ハサップ給食)を開始しろ! 手順、ヨシ!!」


「「「「「ルディ様万歳!!! 帝国完全ホワイト化、安全第一でヨシ!!!!」」」」」


 武力ではなく、圧倒的な「安全管理」と「福利厚生」、そして極上の『メンタルヘルスケア(物理療法)』によって。

 ルディ・フォン・バウムガルトは、一滴の味方の血も流すことなく、大陸最大の脅威であったカストル帝国を完全に手中に収めたのである。




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