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前世安全管理者の異世界ホワイト戦記~死にたくないので安全部隊を作ったら、勘違いで不敗の魔導名将に。夜の放電メンテナンスを求められて困っています【R15】~  作者: トール
第八章:本社監査と西の足場固め(ライセンス取得編)

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第062話:3つのアプローチと、超巨大魔導兵器のセルフ・スクラップ

 


「――ルディ様! カストル帝国側から、とてつもない地響きと熱源が接近してきます! 間違いない、女帝が繰り出した『超巨大魔導攻城兵器』だよ!」


 バウムガルト式・安全街道の関所(料金所)。

 その屋上に設けられた監視塔から、緑のポンチョを羽織った専属斥候セシルが、拡声魔導具で大音量の警告を放った。


 国境の山岳地帯を切り裂くようにして、もうもうたる黒煙と紫色の魔力光を撒き散らしながら、鋼鉄の巨城がキャタピラで大地を削りながら迫ってくる。

 カストル帝国が誇る最終兵器。十数門の魔導砲をハリネズミのように備え、内部で数百人の奴隷兵が死に物狂いで魔力炉ボイラーに魔力を注ぎ込み続ける、移動する巨大なブラック工場であった。


「ついに来ましたね、ルディ様……っ。あのような巨大な鉄の塊、まともにぶつかれば我が方の被害も計り知れませんわ!」


 西の物流総督として、視察(という名目でルディの側に張り付くため)に関所へ同行していたカタリナが、過労からすっかり解放された艶やかな顔に緊張を走らせ、ルディの腕にすがりつく。

 彼女は薄いリネンの服の下で太ももを密着させ、すでにルディの絶対的な庇護セーフティネットなしでは立っていられないほどに依存しきっていた。


 だが、ピカピカのハイブリッドダウンベストを着込んだルディ・フォン・バウムガルトは、冷房の効いた関所の執務室から一歩も出ず、余裕の管理者スマイルを浮かべていた。


「慌てるな、カタリナ。俺は事前に『軍事大国カストル帝国を3つのアプローチで攻略する』と宣言したはずだ」


 ルディはホワイトボード(羊皮紙の掲示板)を指差した。


「第一のアプローチ。NATM工法による『安全街道の開通』で、帝国の物流(経済の血管)を独占ロックアウトした。

 第二のアプローチ。『超ホワイト・モデル工場と炊き出し』で、帝国の軍需工場から技術者たちを根こそぎ引き抜いた(労働ハッキング)。

 ……そして、迫り来るあの巨大な鉄屑を前に、いよいよ第三のアプローチを執行する」


 ルディの網膜に展開された【ガス・温度検知ディテクター】は、接近してくる超巨大魔導攻城兵器が放つ『真っ赤なエラーログ(異常発熱)』を完全に可視化していた。


「第三のアプローチは、『敵の最大資本(巨大兵器)の合法的な自壊スクラップと、従業員(末端兵士)の全吸収』だ!」


「おおおおっ!! さすがは特別顧問・ルディ様! 完璧な経営戦略(M&A)であります!!」


 関所の前に立ち、ピカピカの黄色い安全ヘルメットを被って涙を流していたのは、『カストル帝国攻略特別顧問』として再雇用された元・鉄血将軍ヴォルフガングだった。


「特別顧問ヴォルフガング。お前の持っている内部情報マスターキーを、今こそ存分に発揮しろ」


「ハッ!! 安全第一、ヨシ!!」


 かつての「痛みを感じないブラック指揮官」は、ルディの極上の『物理療法(微弱放電)』によって完全に神経のコリをデトックスされ、今や世界一健康的な現場監督へと生まれ変わっていた。

 ヴォルフガングは、関所の強固な防弾シールドで守られた安全ブースの前に立ち、遠隔拡声魔導具マイクを握りしめると、山岳地帯のスピーカー群に轟く大音声で叫び始めた。


「聞け、カストル帝国の兵士たちよ! 私はかつてお前たちに無意味な死を強要していたヴォルフガングだ!

 私は今、バウムガルトの『安全第一』の教えに救われ、週休二日と美味いポトフを与えられて、本物の人間として生き直している!

 お前たちも、女帝のブラック労働から目を覚ませ! 恐怖と薬物に縛られた部品として死ぬな! バウムガルトのハサップ給食は最高だぞ!!」


 巨大兵器の内部で鞭打たれていた帝国兵たちの間に、激しい動揺が走るのが、兵器の鈍い動きからも伝わってきた。

 かつて最も冷酷だった将軍が、ピカピカの安全ヘルメットを被って「美味い飯が食えるぞ!」と号泣しながら寝返りを呼びかけているのだ。その精神的インパクト(カタルシス)は計り知れない。


「さ、さらに申し上げます、ルディ様!!」


 ヴォルフガングは、巨大兵器を指差し、嬉々として内部告発コンサルティングを始めた。


「あの『超巨大魔導攻城兵器』は、女帝の無茶な納期短縮デスマーチで作られたため、排熱機構に致命的な設計不良ハザードを抱えております!

 前面下部にある巨大な『吸気口』――あそこから大量の冷却気を取り込まねば、わずか数分で内部の魔力炉がメルトダウンを起こす構造なのです!!」


「素晴らしい内部告発だ。……ディテクター、気流走査。確かに前面下部に猛烈な吸気対流ハザードポイントを確認。裏付け(クロスチェック)、ヨシ!」


 ルディは冷徹に頷くと、関所の防爆窓の隙間から右手を開き、巨大兵器の足元へと向けた。


「ならば、その吸気口のフィルターを、物理的に目詰まりさせてやる!

 ――【土壌安定ソイルコンパクション】、流動化起動!」


 ルディの魔力が大地を走り、巨大兵器のキャタピラの目前の土壌が一瞬にして『泥の壁』となって隆起した。

 数トンの泥と砂利が、兵器の前面下部にある「吸気口」へと容赦なく吸い込まれ、排熱用のファンを泥で完全に埋め尽くしたのだ。


 ガガガガガガッッッ!!! ピタァッ。


 嫌な金属音が響き、巨大兵器の冷却機構が完全に停止した。


「な、何ィィッ!? 冷却ファンが泥で詰まっただと!?」


 巨大兵器の指揮官がパニックを起こす中、兵器の内部からは、行き場を失った超高温の魔力熱が逆流し、装甲の隙間からシューシューと真っ赤な蒸気が噴き出し始めた。


「ハザード予測、限界温度突破。……あれはもう、兵器じゃない。爆発寸前の不良ボイラーだ」


 ルディは再び拡声魔導具を手に取り、帝国兵たちに向けて温かく、しかし絶対的な命令を下した。


「巨大兵器内部の作業員(帝国兵)たちに告ぐ!

 そのブラックな職場は、あと二分でメルトダウン(完全倒産)して吹き飛ぶ! 命が惜しければ、直ちに兵器を放棄して我がバウムガルトの安全地帯へ退避しろ! 逃げてきた者には、全員に温かいハサップ給食と安全な寝床を保証する! 退避、ヨシ!!」


「た、退避ィィィッ!!」

「もう嫌だ! 焼け死にたくねえ! 俺はバウムガルトのポトフが食いたいんだぁぁっ!!」


 女帝への恐怖よりも、目の前の「爆発の恐怖」と「圧倒的なホワイト待遇への希望」が勝った。

 巨大兵器のハッチが次々と開け放たれ、中から数百人の帝国兵たちが、我先にと武器を投げ捨ててルディの関所へと逃げ込んできた。


「ハンス! エリーゼ! 逃げてきた難民(新入社員)を安全なテントへ誘導し、ポトフを配給しろ! 危険源から確実に遠ざけるんだ!」


「「ハッ! 避難誘導、および炊き出しヨシ!!」」


 逃げ遅れた者が一人もいないことをディテクターで確認した直後。


 ズガガガガガガガガアアアアアンッッッ!!!!!


 吸気口を塞がれ、魔力炉が限界を超えた『超巨大魔導攻城兵器』は、自らの内に溜め込んだ熱量に耐えきれず、大音響とともにセルフ・メルトダウンを起こした。

 分厚い装甲はひしゃげ、数万の軍勢を吹き飛ばすはずだった巨城は、あっという間にただの赤熱するスクラップ(鉄屑)へと変わり果てた。


 被害者、ゼロ。


 カストル帝国の最大資本は、ルディの土木魔法とヴォルフガングの内部告発によって、完全に合法的に「自壊」させられたのである。


「す、すごいですわ、ルディ様……っ!」


 カタリナが、そのあまりにも鮮やかで無血の大勝利に、丸眼鏡を落としそうになりながら感涙にむせんだ。


「武力を一切使わず、経済、人材、そして兵器までも自滅させて吸収してしまう……! カストル帝国は、これで実質的に手足を完全にもがれましたわ!」


「よし! 第三のアプローチ、100%コンプリートだ!」


 ルディは、ただの鉄屑となった兵器の残骸と、温かいポトフを食べて泣き崩れる元・帝国兵たちを見下ろし、会心のガッツポーズをキメた。


 だが、その背後で、彼の「圧倒的な安全管理のロジック」に脳髄を灼かれたヒロインたちが、一斉に自律神経の過反応(漏電)を引き起こしていた。


「あぁ……っ、ルディ様……っ。あのような巨大な暴力すら、指先一つで安全にスクラップ(解体)してしまうなんて……。私、あなた様のその冷徹な計算システムに、お腹の奥が熱くなって、完全に漏電してしまいそうですわ……っ」


 エリーゼが、薄いシュミーズの下で太ももをモゾモゾと擦り合わせながら、心地よいデトックスの汗を滴らせて熱い吐息を漏らす。


「ルディ様! 敵のボイラーは爆発しましたけれど、私の炉心ボイラーはルディ様のお仕置きの電気を求めて、今にも限界突破しそうですわぁっ! 今夜は絶対に、私の『魔力伝導パス』に最大出力でアースしてくださいね……っ!」


 エルザもまた、豊満な双丘をルディの腕に押し付けて、狂おしいおねだり信号ディテクターを点滅させている。


(……おいおい。敵を無力化して平和になった途端、俺の腰椎に対する過重負荷おねだりハザードがレッドゾーンに突入しているじゃないか! これじゃ有給どころか、夜間操業で過労死しちまうぞ!)


 ルディは、ヒロインたちの放つむせ返るようなデトックスの熱気と甘い香りに冷や汗を流しながらも、冷徹な管理者としての視線を、西の果て――帝都の方角へと向けた。


「これにて、帝国軍の外部労働力とインフラはすべて我が社のものとなった。

 ……残る危険源ハザードはただ一つ。帝都の奥深くで震えている、あのヒステリックな『鉄血の女帝』だけだ!」


 ルディの瞳に、極悪ブラック企業のトップを完全に「わからせる」ための、冷徹でロジカルな安全管理者の光が宿った。


「これより俺は、特別顧問ヴォルフガングを案内役とし、帝都の中枢へ直接『労働基準監督署(監査)』として乗り込む!

 あの女帝の狂った精神論を物理的に粉砕し、俺の電気で脳髄からトロトロのホワイト協力者に書き換えてやるぞ! 全作業員、帝都へ向けて安全第一で進軍だ! 手順、ヨシ!!」


「「「ルディ様万歳!!! 帝都監査、安全第一でヨシ!!!!」」」


 軍事大国カストル帝国を、文字通り内側から空洞化ハッキングさせたルディ・フォン・バウムガルト。

 彼の見据える最終標的――鉄血の女帝の絶対的な恐怖支配を、極上の快楽パルスと安全ロジックでドロドロに溶かす、最終監査(ラスボス戦)の幕がいよいよ上がろうとしていた。




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