第057話:倒産寸前のブラック現場と、過労令嬢カタリナへの強制有給
カストル帝国の「鉄血魔導重装歩兵」五百名によって、一万の軍勢が蹂躙され、防衛ラインが完全に消滅した西部辺境伯領。
レームガルト王国の西の防波堤であるはずのその巨大な城塞都市は、今や目を覆いたくなるような「完全な倒産現場(破綻状態)」へと陥っていた。
「おのれ、カストル帝国め……! なぜ我が無敵の一万の軍勢が、たかが五百の歩兵にすり潰されるのだ! この大失態(超特大の集団労災)が王都の女宰相にバレれば、間違いなく私の首が飛ぶぞ!」
城の最も安全な地下室。西部辺境伯グスタフ・フォン・ヴェストフェルデンは、高級なワインを煽りながらヒステリックに喚き散らしていた。
リスク管理能力がゼロのまま「数の暴力」に頼って自軍を全損させた彼は、この致命的なエラーを本社(王都)に隠蔽(粉飾決算)することしか頭になかった。
そして、インフラが破壊され、暴動寸前の飢えた領民たちをなだめるという「予算ゼロの復興デス・プロジェクト」のすべてを、実の娘に丸投げ(悪質なデリゲーション)して引きこもってしまったのである。
「――お嬢様! 第三区画の領民たちが、配給の麦が足りないと暴動を起こしかけています!」
「第七区画の下水が溢れ、疫病の兆候が! いかがいたしましょう!?」
「分かっています……っ! 順番に対応しますから、少し待ちなさい!」
城の薄暗い執務室で、書類の山と格闘していたのは、西部辺境伯の令嬢であり、実質的に全権を押し付けられた西の防衛総督、カタリナ・フォン・ヴェストフェルデン(十八歳)だった。
生真面目で実務的な彼女は、金糸の美しい髪を無造作に束ね、かつては輝いていたであろう瞳の周りにどす黒い隈を作っていた。血の気のない青白い肌と、不規則な食事でやせ細った体。
(私が……私がやらねば。西の国境を守護するヴェストフェルデン家の誇りにかけて、お父様の代わりにこの領地を立て直さなければ……っ!)
睡眠時間ゼロの連日の徹夜(超ブラックワンオペ)により、彼女の強迫観念(インポスター症候群)は限界を超え、今にも過労死(重大労災)で倒れる寸前だった。
だが、そんな地獄のようなブラック現場の城門前に、突如として「異質な集団」が到着した。
「――全作業員、展開! 飢えた領民たちに、ハサップ(HACCP)基準の温かいポトフと、栄養満点のふっくらパンを無償提供(炊き出し)しろ! 食中毒ハザードを防止するため、配膳前のアルコール消毒を徹底するんだ!」
「「「安全第一、ヨシ!! 炊き出し開始、ヨシ!!」」」
ピカピカのダウンベストを着込んだバウムガルト隊の兵士たちと、清潔な白いエプロンを身につけた給炊班の乙女たちが、手際よく巨大なテントを張り、温かい食事を次々と配り始めたのだ。
「お、おおおっ! 温かいスープだ!」
「肉と野菜がたっぷりと入っているぞ! バウムガルトの若君様が、俺たちを救いに来てくださったんだ!」
飢えと絶望に苦しんでいた西部の領民たちは、ルディ・フォン・バウムガルトがもたらした圧倒的な福利厚生(資金力と物資)の前に、一瞬にして胃袋を掴まれ、涙を流してバウムガルトの「信者」へと寝返っていった。
「な、何をしているのですか!!」
その報告を受け、城から駆け下りてきたカタリナは、目を血走らせてルディの前に立ちはだかった。
「バウムガルトの四男! 辺境の小貴族が、勝手に他人の領地で炊き出しなど……これは西の誇りを踏みにじる、明らかな侵略行為(敵対的買収)です! 今すぐこの施しを収め、立ち去りなさい!!」
ヒステリックに金切り声を上げるカタリナ。
だが、ルディは冷房の効いた馬車からゆっくりと降り立つと、呆れたように、しかし極めて冷徹な管理者スマイルを浮かべた。
ルディの網膜に投影された【ガス・温度検知】は、カタリナの身体が放つ「極大のレッドアラート」を完全に捉えていた。
(おいおい、なんだこの最悪のバイタルは。極度の睡眠不足、栄養失調、過度のストレスによる自律神経の完全なショート。このまま放置すれば、三日以内に急性心不全(過労死)で確実にお亡くなりになるぞ。……こんなボロボロの現場監督に、西の防波堤を任せておけるか!)
「西の誇り? 侵略行為? ……笑わせるな、お嬢さん」
ルディは一歩踏み出し、カタリナの細い手首をガシッと力強く掴んだ。
「お前たちの領地はすでに『債務超過(インフラ崩壊・兵力全損)』に陥っている、完全な倒産企業だ。しかも、経営トップ(父親)が責任を放棄し、実の娘に予算ゼロの復興を強要する、労働基準法違反の極悪ブラック現場じゃないか」
「な……っ、何を、訳の分からないことを……っ! 私はヴェストフェルデン家の娘として――」
「経営陣の安全配慮義務違反だ。このままお前が過労死すれば、この領地は完全に崩壊し、カストル帝国の進軍を許すことになる。それは俺の有給ライフの基盤を脅かす、最大級の地政学的ハザードだ」
ルディは有無を言わさぬ力で、抵抗するカタリナを抱き上げると、設営されたばかりのVIP用テント(完全防音・魔導冷風機完備)の中へと強引に連れ込んだ。
「離しなさい! 私は休むわけにはいかないの! 書類が、領民の不満が……っ!」
「黙って寝ていろ。安全衛生管理者として、お前に『強制有給』を命じる」
ルディはカタリナをフカフカのベッドに押し倒すと、彼女のボロボロになった執務服のボタンを外し、そのガチガチに強張った白い肩と首筋へと、バームを塗った手のひらをピタリと押し当てた。
「な、何をする気――ひゃっ!?」
バチバチバチッ!!!
「ひゃああああああああっっっっ!!!???」
ルディの指先から、青白い【微弱放電】が、カタリナの極限まで緊張しきった神経系へと直接流れ込んだ。
「あ、あつ……熱いぃっ! なに、これ……っ、首の奥から、背骨に、電気がビリビリって……っ!」
「これは『電気刺激による強制リラクゼーション(物理療法)』だ。お前の自律神経は、ブラックな父親のせいで完全にバグっている。俺の電気で、その強迫観念を分子レベルから融かして(アースして)やる」
ルディの指先が、カタリナの肩甲骨から腰のくびれ、そして太ももの内側へと、容赦なく、しかしこの上なく優しくパルスを響かせながら滑り込んでいく。
「あ、あはぁぁっっ! だ、だめ……っ! そんなに気持ちよくされたら……私、書類の計算が、頭から溶けて消えちゃうぅぅっ!」
極限の過労状態にあった彼女の身体は、ルディの放つ快感物質の奔流に耐えられるはずがなかった。
「お前の父親は最低のブラック社長だ。そんな会社(国)のために命を削る必要はない。お前のその有能な実務スキルは、今日から俺の『ホワイトな管理下』で、たっぷり休みながら、俺のためだけに使え」
「る、ルディ様……っ! あ、あぁっ……お父様の、怒声がない、こんなに甘くて、温かい場所があったなんて……っ!」
ルディの電撃パルスが、彼女の最も過緊張が集中する経絡の最奥をバチバチと刺激した瞬間。
「イクっ! 私、もう西の誇りなんてどうでもいい! ルディ様の電気(ホワイト待遇)で、私をめちゃくちゃに買い取ってぇぇぇっっ!!」
カタリナは白目を剥き、よだれを垂らして激しく腰を跳ね上げながら、極上の絶頂(強制シャットダウン)を迎えた。
シーツを大量の心地よいデトックスの汗で濡らし、ルディの腕の中で完全に骨抜きにされた彼女は、「ルディ様ぁ……私、一生あなた様の子会社(社畜)として働きますぅ……」と、幸せそうな寝息を立てて気絶(休眠)した。
(よし! 過労令嬢の強制有給、完了! そして西の実権、完全吸収(M&A)ヨシ!)
ルディは天幕を出ると、側近のテレーゼたちに冷徹に指示を下した。
「無能なグスタフはクビにはせず、あくまで『ダミー看板』として城に軟禁しておけ。王都への報告はすべて彼名義で行い、我がバウムガルトが下請けとして復興を代行しているという偽装スキーム(ペーパーカンパニー化)を構築する!」
「さすがですわ、若君……! これで王都の警戒をすり抜けつつ、西の物流ルートをノーリスクで独占できますね!」
テレーゼが丸眼鏡を輝かせて平伏する。
西の防波堤を完全に『ホワイト子会社』として再構築したルディ。だが、王都へ向かう前にもう一つ、この西の地で回収(再雇用)しておかなければならない『極めて優秀な危険物』が存在していた。




