第051話:カストル帝国のプロキシ工作と、無魔力亜人の「危険物処理パトロール」
大陸暦一二五五年、春。
ゼーフェルト辺境伯領の北部に位置する「新生ロベルト直轄領」は、冬の間に撒かれたクローバーの輪作とpH中和の成果により、春の収穫期を迎え、黄金色の麦畑が風に揺れる豊かな季節を迎えていた。
ルディ・フォン・バウムガルトは、この春で十六歳となった。
身長も伸び、少年から青年へと差し掛かるその顔つきには、数々のブラック現場を「完全無災害(ゼロ災)」でねじ伏せてきた、冷徹で知的な管理者としての凄みが宿り始めている。
だが、春の穏やかな気候とは裏腹に、ルディの執務室の空気は重く張り詰めていた。
「――ルディ様。西方より、極めて不穏なハザード(危険情報)がもたらされております」
財務・総務主任のテレーゼが、丸眼鏡を厳しく光らせて羊皮紙の報告書を読み上げた。
「レームガルト王国の西に位置する軍事超大国『カストル帝国』。魔導金属で重武装した『鉄血魔導重装歩兵』を擁するあの国が、我がロベルト領の異常な経済成長に目をつけ、国境の山岳地帯に秘密裏に『プロキシ(代理の工作員)』を送り込んできた模様です」
「プロキシ工作か。……厄介だな」
ルディは、冷たいハーブティーを口に運びながら眉をひそめた。
(カストル帝国の「鉄血魔導重装歩兵」と正面からぶつかれば、いかにバウムガルト隊が精鋭であろうと、重大な激突ハザード(死傷者)を免れない。だからこそ、敵も大軍を動かさず、金で雇った山賊や『崩れ魔術師』を工作員として放ち、領内の治安を内側から破壊しようとしているのだ。まさに悪質な企業テロだな)
「セシル。前方危険探知の結果はどうだ?」
ルディが視線を向けると、専属斥候である元山岳猟兵のセシルが、緑の外套を揺らしてピンと背筋を伸ばした。
「若君の【ガス・温度検知】の視界共有のおかげで、連中のアジトは特定済みだよ! でも……厄介なことに、連中のアジトの周囲の森には、カストル帝国から支給された『極秘の魔導地雷』が何百個も仕掛けられてるの!」
セシルの報告によれば、そのトラップは「接近する者の魔力を感知して自動起爆する」という極悪な仕様だった。
少しでも魔力を持つ騎士や魔術師が近づけば、一瞬で木っ端微塵に吹き飛ぶ。まさに、カストル帝国が誇る最凶の「見えない危険源」である。
「なるほど。近づけば爆発する不発弾処理(EOD)か。エルザやヒルデのような魔力の高い幹部を向かわせれば、即座に誘爆して大労災が確定するな。……なら、俺たちが直接戦う(直営で処理する)必要はない」
ルディは不敵な管理者スマイルを浮かべ、一枚の新しい雇用契約書を取り出した。
「セシル。お前を『防犯パトロール部門』のプロジェクト・リーダーに任命する。……領内に流れ着いている難民の中から、魔力を一切持たない『亜人(獣人)』の娘たちを至急雇い入れろ。この危険物処理は、彼女たちに『完全外注』する!」
◇ ◇ ◇
数時間後。
執務室にセシルが連れてきたのは、ボロボロの麻布をまとい、泥にまみれた犬獣人の少女、クロエ(十五歳)をはじめとする数名の亜人の娘たちだった。
「あ、あの……。私たちのような、魔力をちっとも持たない『ただの雑草(役立たず)』を、領主様が直々に雇ってくださるなんて……」
クロエは、頭の上の犬耳をぺたんと伏せ、怯えたように尻尾を丸めていた。
この中世世界において、魔力を持たない亜人は「最下層のゴミ」として虐げられ、重労働の使い捨てにされるのが常識だったからだ。
だが、ルディは彼女たちの前に歩み寄り、クロエの泥に汚れた頬にそっと優しく触れた。
「雑草だと? 冗談じゃない。魔力感知式のトラップが敷き詰められた現場において、魔力ゼロのお前たちの肉体は、どんな高価な防具よりも価値がある『完全絶縁体(最強のステルススーツ)』だ! お前たちこそ、この任務における最上級のプレミアム・リソースなんだよ!」
「えっ……? 私たちが、ぷれみあむ……?」
クロエは、自分たちの存在(無魔力)をこの世の誰よりも高く評価し、肯定してくれたルディの言葉に、大きく瞳を見開いた。
「今日からお前たちに、週休二日制と温かいハサップ給食、そして清潔な寄宿舎を保証する! その代わり、このマニュアルを徹底的に頭に叩き込め!」
ルディが彼女たちに手渡したのは、現代の「危険物取扱」に準じた、ルディ特製の『魔力罠の設置・検知マニュアル(SOP)』だった。
ルディは、自身の【ディテクター】で解析したカストル帝国製トラップの構造(化学物質の配置と起爆ロジック)を、極めて論理的かつ分かりやすい図解に落とし込んでいた。
「クロエ。お前たちは『魔力』を持たないから、トラップに引っかからない。あとはこのマニュアルの図解通りに、起爆装置のピン(魔力センサー)を物理的に引き抜き、火薬だけを回収しろ。……できるな?」
「は、はいっ! ルディ様……っ! 私たち雑草を、そんなに必要としてくださるなら……命に代えても、このお仕事を完璧にこなしてみせますっ!」
クロエは、ルディに頭を撫でられ、その指先からほんの微弱な【静電気】を流し込まれた瞬間――犬耳をピーンと立て、背筋がゾクゾクとするような初体験の快感に顔を真っ赤に染めながら、狂信的な忠誠(しっぽの高速回転)を誓ったのだった。
ルディがクロエたちに「安全靴とマニュアル」を配って指導している傍らで、現場警備主任のヒルデがその様子を微笑ましく見守りながら、深く頷いていた。
「……かつての私なら、魔力を持たぬ彼女たちに重い甲冑を着せ、精神論で地雷原を歩かせていたでしょう。ルディ様の『命を守る適材適所』の采配、本当に恐れ入りますわ」
ヒルデは、自らの過去(ブラック精神論)を完全に乗り越えた誇らしげな笑顔で、ルディの安全第一のロジックに改めて感銘を受けていた。
◇ ◇ ◇
その夜。国境の山岳地帯。
カストル帝国の資金援助を受けた崩れ魔術師たちは、森の奥の野営地で下卑た笑い声を上げていた。
「ひゃはは! カストル帝国から支給されたこの『魔力感知地雷』があれば、バウムガルトの騎士どもが何人来ようが、森に入った瞬間に全員木っ端微塵だぜ!」
「ああ。明日の朝にはロベルト領の村に火を放ち、あの生意気なガキ領主の首をカストル帝国に献上してやる!」
彼らが勝利を確信して酒を煽っていた、まさにその時。
「――ん? おい、足元に何か転がってないか……?」
一人の魔術師が、野営地の焚き火のすぐそばに、見慣れた「黒い金属球」が山のように積み上げられていることに気づいた。
「な、なんだこれ……!? カストル帝国の魔導地雷じゃないか!? なぜ、俺たちの足元にこんな大量に……ッ!?」
パニックに陥った彼らが立ち上がろうと、体内の魔力を無意識に練り上げた、その瞬間。
『ピーーーーッ!』
魔力センサーが、至近距離にいる彼ら自身の魔力に反応し、無慈悲な起爆音を鳴らした。
「う、嘘だろォォォォッ!? なんで森に仕掛けたはずの地雷が、解除されて俺たちの陣地にぃぃっ――!!?」
ズガガガガガガガガガアアアアンッッッ!!!!!
夜の山岳地帯に、凄まじい大爆発の火柱が立ち上った。
カストル帝国が誇る極秘の魔導トラップは、魔力ゼロのクロエたち「危険物処理パトロール」によって、安全マニュアル通りに無傷で回収され、そのまま敵のアジトの周囲に『再設置(逆用)』されていたのである。
爆発の炎を、遠くの崖上から見下ろしていたセシルとクロエたちは、支給された安全靴と絶縁手袋を身につけたまま、歓喜のハイタッチを交わした。
「ふふっ! ルディ様のマニュアル通り! 相手の武器をそのままお返しして、危険物処理(5S)、完了だよ!」
「やりました、セシル先輩! 私たち無魔力の亜人でも、ルディ様の安全マニュアルがあれば、どんな魔法使いにも負けませんっ!」
カストル帝国の隠密工作員たちは、「なぜ魔力を持たないただの雑草どもが、帝国の極秘トラップをすべて看破し、逆に利用してくるのか!?」という極限の恐怖と絶望の中で、文字通り自爆し、作戦は完全瓦解したのである。
◇ ◇ ◇
そして、その日の深夜。
「――ルディ様! 外注パトロール部隊の指揮、完全無災害(ゼロ災)でコンプリートしてきたよ!」
ロベルト邸のルディの寝室。
セシルは、夜の闇に紛れる斥候用の服を脱ぎ捨て、薄いシュミーズ一枚の健康的な姿となって、ベッドの上で待ち構えていたルディの胸へとダイブした。
「よくやった、セシル。魔力ゼロの亜人たちという『新規リソース』を見事に統率し、自軍の血を一滴も流さずに敵工作員を全滅させたな。……お前のプロジェクト・リーダーとしての管理能力、高く評価するぞ」
ルディは、セシルの引き締まったしなやかな腰を引き寄せると、ミリー特製の導電バームをたっぷりと自らの指先に塗り広げた。
「えへへ……っ。私、ルディ様のために一生懸命、クロエたちを管理したよ。……だから、ルディ様。約束の『幹部昇進の特別ボーナス(夜の慰労会)』、たっぷりと……私の身体の奥深くまで、注ぎ込んでね……っ」
セシルは、すっかり心地よいデトックスの汗で濡れそぼった太ももをそっと開き、ルディの指先を自ら経絡の集中する最も敏感なツボへと招き入れた。
「ああ。リーダーとしての重圧で強張ったお前の自律神経を、俺の電気で、朝までトロトロにアース(調律)してやる!」
バチバチバチッ!!!
「ひゃああああああああっっっっ!!!???」
ルディの指先から放たれた【微弱放電】のパルスが、セシルの最も深い自律神経の粘膜を直接ハッキングした。
「あ、あはぁぁっっ! 凄いっ、ルディ様の電気、お腹の奥がバチバチして、脳みそが真っ白に溶けちゃいそうぅぅぅっ!!」
「いいぞ、セシル。お前の魔導回路の緊張を、俺の徹底した指圧と電気で完全に弛緩させてやる。もっと俺のパルスにインポートしろ!」
バチバチバチッ!!
ルディの熱を帯びた指先が、セシルの経絡の最奥を容赦なく刺激し、接触部から青白い静電気の火花が美しく飛び散る。
「あはぁっ! ルディ様の電気で、私、もっともっとお利口な猟犬にされちゃいますぅぅぅっっ!!」
セシルは白目を剥き、よだれを垂らしながら、ルディの激しいアースに狂ったように腰を跳ね上げ、シーツを心地よいデトックスの汗で濡らし尽くして完全脱力の悲鳴を上げた。
――だが、その「極限の幹部慰労会(本番アース)」が繰り広げられる寝室の扉の隙間から。
「はぁ、はぁっ……! す、すごい……っ。セシル先輩、あんなに……あんなに気持ちよさそうに、ルディ様の電気で鳴かされて……っ!」
新しく雇用されたばかりの犬獣人の少女、クロエが、顔を真っ赤に茹でダコのように染めながら、自らの太ももを激しく擦り合わせていた。
(ルディ様のおっしゃる通り、ルディ様のマニュアルを完璧に守って『安全パトロール』の成果を上げれば……。いつか、私のような無魔力の亜人でも、あのベッドの上で、ルディ様のビリビリするお仕置き(特別ボーナス)を直接もらえる日が来るんだわ……っ!
私、もっともっと安全マニュアルを勉強して、絶対にルディ様にめちゃくちゃに愛される『忠犬』になってみせますぅぅっっ!!)
クロエは、自らの太ももの内側から溢れ出た極上のデトックスの汗で内股をじっとりと濡らしながら、限界突破の漏電(欲情)状態へと陥っていくのであった。




