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前世安全管理者の異世界ホワイト戦記~死にたくないので安全部隊を作ったら、勘違いで不敗の魔導名将に。夜の放電メンテナンスを求められて困っています【R15】~  作者: トール
第五章:死の森・最前線都市編(極寒のブラック現場とホワイト温泉リゾート)

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第044話:春の雪解けと、巨大熊襲来の「超絶土木ピタゴラスイッチ」

 


 大陸暦一二五五年。


 長く過酷だった冬が終わりを告げ、オルテンシア国境の大森林にも、わずかに春の雪解けの気配が漂い始めていた。


 かつて「死の要塞」と呼ばれた最前線基地は、ルディ・フォン・バウムガルトの圧倒的な安全衛生工学により、一人の凍死者も、餓死者も出すことなく、無傷でこの過酷な季節を乗り切ろうとしていた。


「ふぁぁ……。オンドルのおかげで、この冬は一度も寒い思いをせずに済みましたわ。ルディ様のおかげです」


「ええ……。毎晩の『安全点検アース』のおかげで、身も心もポカポカでしたものね……っ」


 絶対的ゾーニングによって男兵士の視線から完全に隔離され、常春の二十五度、湿度四十%に保たれた「エリアB:女子寮および執務エリア」。


 そこでは、極薄の白いシュミーズ一枚という無防備な姿で、総務・財務主任のテレーゼ、超高熱線魔術師のエルザ、そして現場警備主任のヒルデといった幹部ヒロインたちが、毛皮のラグマットの上でくつろいでいた。


 彼女たちは、ルディの腕や背中に柔らかな双丘を押し付けながら、心地よいデトックスの汗を滲ませて、蕩けた吐息を漏らしている。


「ルディ様……、冬が終わる前に、私のこの強張った自律神経の奥深くまで、もう一度、あなた様のビリビリする指先で、めちゃくちゃに調律(お仕置き)してくださいませ……っ」


 ヒルデが、太ももの内側に刻まれた「放電痕(魔力伝導パス)」を擦り合わせながら、熱いおねだりの視線を送ってくる。


(よし。木炭ボイラーの稼働も安定し、兵士たちの士気もMAX。夜間操業メンタルヘルスケアによる俺の腰椎への過負荷は甚大だが、これで春を迎えれば、俺の有給サボりライフは完璧な形で――)


 ルディが脳内スプレッドシートの勝利ログに満足しかけた、その時だった。


 バタンッッ!!!


「――ルディ様! 緊急レッドアラート! 前方危険探知スカウティングに、超特大の異常熱源です!」


 防犯扉を勢いよく開け放ち、専属斥候のセシルが血相を変えて飛び込んできた。


「どうした、セシル! ハザード特性を5W1Hで報告しろ!」


 ルディは即座に起き上がり、ディテクター(ガス・温度検知)の視界を全開にした。


「冬眠から目覚めた、山のヌシ……10メートル級の巨大ボス『タイタン・グリズリー』が、要塞から漂うおしゃぶしゃぶとハーブの匂いに引き寄せられて、こっちに向けて一直線に突進してきます!」


「10メートル級だと!?」


 要塞の外に設置された監視塔からも、老騎士ハンスの悲鳴に近い絶叫が響き渡った。


「わ、若君! 凄まじい地響きです! 山のような巨大な熊が、大木をなぎ倒しながら迫ってきますぞ!」


 兵士たちの間に、一瞬にして絶望的な恐怖が広がった。


 通常の魔物とは次元が違う。城壁すら一撃で粉砕しかねない、圧倒的な質量と暴力。まさに、激しい怪獣バトルの幕開けを予感させる、絶望的な状況であった。従来の軍隊であれば、数百人の決死隊(生贄)を突撃させ、多大な犠牲(重大労災)を払って討伐するしかない。


 だが、ルディの顔には、一滴の焦りも浮かんでいなかった。


「フッ……。10メートルの巨大生物と正面衝突(怪獣バトル)? そんな重機と生身の作業員をぶつけるような不安全行動、重大労災(全滅)が確定しているだろうが。絶対に付き合わん」


 ルディは即座に拡声魔導具を手に取り、全軍へ向けて大音響の指示を飛ばした。


「全作業員(全軍)に通達! 迎撃は一切不要! 武器を捨てて、直ちに要塞の安全エリアへ『絶対退避ロックアウト』しろ!」


「ろ、ロックアウト、ヨシ!!」


 狂信的なバウムガルト兵たちは、ルディの指示に一瞬の躊躇も見せず、武器を構えることなく要塞の強固なシェルター内へと滑り込んだ。


「ニナ! ボイラー室の出力調整だ!」


「は、はいぃっ、ルディ様!」


「エコ物理ボイラー(木炭燃料)の排熱パイプの弁を全開にして、要塞周囲の斜面にすべての熱風を叩きつけろ! 春の雪解け水と合わせ、周囲の雪を一気に融解させるんだ!」


 ニナの操作により、地下の木炭ボイラーから莫大な排熱がパイプを通じて放出される。


 春の陽気で緩んでいた要塞周囲の数万トンの雪が、一気に融解し、斜面は凄まじい量の水を含んだ泥濘へと変わっていく。


「ズゴォォォォォォッッッ!!!」


 その時、地響きと共に、視界を覆うような巨大な影が姿を現した。


 体長10メートルを超える山のごとき巨躯を持つタイタン・グリズリーが、よだれを垂らしながら要塞の城壁へと猛然と突進してくる。


「よし、ハザードの侵入を確認。……これより、最終防衛プロセス(土木魔法の逆用)を起動する!」


 ルディは、要塞のバルコニーから両手を大地の方向へ突き出した。


「――【土壌安定ソイルコンパクション】、強制解放アンロック!! 水分飽和度120%、液状化現象クイックサンド、起動!!」


 ズゴゴゴゴゴッ!!


 ルディの魔力が、雪解け水でたっぷりと水分を含んだ大地へと叩き込まれる。


 土粒子間の結合が強制的に解かれ、要塞周囲数百メートルの大地が、一瞬にして「底なしの泥の海」へと変貌を遂げたのだ。


「グオオオオオッ!?」


 城壁を粉砕しようと、最高速で突進してきたタイタン・グリズリーが、その「泥の海」に巨大な足を踏み入れた瞬間。


 ズブブブブブブブッッ!!!!


「グギャアアアアッ!?」


 信じられない光景が繰り広げられた。


 タイタン・グリズリーの、数十トンにも及ぶ重すぎる自重デッドウェイトが、完全に仇となったのである。


 巨大熊の足は、泥の表面を蹴るどころか、その莫大な質量ゆえに一瞬で泥の深層へと沈み込み、腹まで完全にスタック(生き埋め)してしまったのだ。


「グオォォォ……ッ!? ヌォォォォッ!」


 怪獣は泥の中でもがき苦しみ、巨大な爪を振り回すが、動けば動くほど泥の陰圧に吸い込まれ、完全に身動きが取れなくなっていく。


 要塞の安全な窓からその光景を見ていた兵士たちは、開いた口が塞がらなかった。


「す、すげえ……! あのバケモノが、指一本触れずに泥に沈んで動けなくなっちまったぞ!」


「これが、若君の『絶対退避(安全第一)』の力……! 戦わずして、敵を土木インフラで完封してしまわれた!」


 読者(兵士たち)が期待(危惧)した血で血を洗う「激しい戦闘スペクタクル」は、ルディの圧倒的な安全衛生工学(土木ピタゴラスイッチ)の前に、一切の武力を使わずに完封されたのである。


「ああ……っ! ルディ様……っ!」


 テレーゼが、丸眼鏡の奥の瞳を濡らして、ルディの腕にすがりついた。


「敵の圧倒的な質量(暴力)を、自重という物理的欠陥ハザードに変換して自滅させる……! なんという、なんという完璧な俺TUEEE(安全管理)……!」


「ルディ様の、その冷徹なロジックに……私、また自律神経が漏電してしまいそうですわ……っ!」


 エルザも、薄いシュミーズの下で太ももを擦り合わせながら、ルディの背中に心地よいデトックスの汗を滲ませて密着してくる。


「ふぅ。重量物は、足場の地耐力を計算せずに進入すれば、必ず沈んで横転する。労働現場の基本中の基本だ」


 ルディは、完全に泥の海でスタックして「キャンキャン」と悲鳴を上げているタイタン・グリズリーを見下ろし、冷徹な管理者スマイルを浮かべながら、ミリーが淹れた温かいハーブティーを優雅にすするのであった。


 ――巨大熊襲来ハザード、インフラによる完全無力化スタック、ヨシ!!




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