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前世安全管理者の異世界ホワイト戦記~死にたくないので安全部隊を作ったら、勘違いで不敗の魔導名将に。夜の放電メンテナンスを求められて困っています【R15】~  作者: トール
第五章:死の森・最前線都市編(極寒のブラック現場とホワイト温泉リゾート)

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第039話:旧守備隊長の完全NTRざまぁと、絶対的ゾーニング「エデン」

 


 ――ゴォォォォォォウゥゥッ!!


 一夜明けたオルテンシア国境・前線要塞都市。

 分厚い雪雲が空を覆い尽くし、致死的なマイナス十五度の猛吹雪が、崩れかけた城壁を容赦なく叩きつけていた。


 その地獄のような白銀の屋外において、雪だるまのように全身を白く染め上げ、ガタガタと激しく痙攣している一つの影があった。

 辺境伯軍の残留指揮官――旧守備隊長である。


「う、うぅ……っ。が、ガハッ……! そろそろ……そろそろ、音を上げる頃だろう……っ」


 彼は、自らの分厚い熊の毛皮のコートを固く握りしめ、凍傷で黒く変色しかけた顔を歪めながら、不気味な笑みを浮かべて要塞の兵舎を睨みつけていた。


 昨夜、バウムガルトの四男坊が「床下から温かい空気を出す」などというふざけた土木魔法オンドルを披露し、兵士たちをたぶらかした。

 だが、旧守備隊長は「寒さに耐えることこそ騎士の修行」という時代遅れのブラック精神論の権化である。「あんな女の寝具のような軟弱な床に座るなど、騎士の恥だ!」と豪語し、意地を張って外の雪中野営を強行したのだ。


(ふん……。一晩中、あの魔法がもつはずがない。どうせ今頃、魔力切れで凍えきった兵士どもが、俺の「気合いと根性」の正しさを思い知り、土下座して謝りに来るはずだ……!)


 旧守備隊長は、自らの極悪な精神論(ブラック労働)の正当性を証明するため、重い足を引きずりながら、要塞のメイン兵舎の重い木の扉をバンッ! と蹴り開けた。


 ――その瞬間。


「あ……?」


 旧守備隊長の顔面に、ポワァァァン……と、真夏の陽だまりのような「圧倒的に温かい空気」と、肉と野菜が煮込まれた極上のスープの香りが、暴力的なまでの質量を持って叩きつけられた。


「な、なんだ、この……この温かさは……ッ!?」


 彼が見たものは、凍死寸前で震える兵士たちの姿ではなかった。


 隙間風が完全に石化コンクリートで密閉され、床下からじんわりと二十四度の快適な熱が放出されている「全要塞オンドル(セントラルヒーティング)」のパラダイス。

 その床の上で、数百人の旧守備隊の兵士たちが、凍傷の痛みを忘れ、幸せそうに「ハサップ(HACCP)基準の沸騰消毒済みポトフスープ」のおかわりを貪り食っていたのだ。


「おーい! こっちの組もスープのおかわり、ヨシ!!」

「ルディ様が用意してくださったこの麦茶、最高に美味えっ! 生水なんて二度と飲めるかよ!」

「床が温かくて、肩のコリまでほぐれていく……。ああ、俺たち、生きててよかったなぁ……っ!」


 栄養と温もりを完全に補給され、昨日の「死にかけの亡霊」から「健康で血気盛んな屈強な男たち」へと完全に蘇生している兵士たち。

 旧守備隊長は、自らの『修行』の教義が、ルディの圧倒的な『ホワイト・インフラ』の前に塵一つ残さず粉砕された現実を前に、怒りで顔を真っ赤に沸騰させた。


「き、貴様らぁぁぁッ!!! 何を腑抜けている!!」


 旧守備隊長の怒号が、ポカポカの兵舎に響き渡った。


「戦場において、そのような軟弱なだんを取るなど言語道断! 今すぐその女腐った床から立ち上がり、外へ出て雪中行軍の鍛錬デスマーチを行え! 痛みに耐え、寒さに耐え抜いてこそ、真の騎士となるのだッ!!」


 いつもであれば、この怒号一つで兵士たちは怯え、鞭で打たれるのを恐れて従っていたはずだった。

 しかし――。

 スープの器を持った数百人の兵士たちの視線が一斉に旧守備隊長へと向き、その瞳には「恐怖」ではなく、明らかな「軽蔑と敵意」が宿っていた。


「……何が騎士の修行だ。あんたの言う通りに修行して、先週だけで何人の仲間が凍え死んだ(労災死した)と思ってんだよ」


 一人の古参兵が、静かに立ち上がり、オンドルの床をドンッと踏み鳴らした。


「あんたは自分だけ分厚い熊の毛皮を着込んで、俺たちにはウールのボロ布一枚で『気合いで耐えろ』って怒鳴るだけだった! だが、ルディ様は違う! 俺たちと同じ目線で、自らの魔力と知恵を使って、俺たちを物理的に(ロジカルに)凍死から救ってくださったんだ!」

「そうだ! 俺たちの命を守ってくれる『雇用主』は、あんたみたいな無能なブラック上司じゃない! 雷神ルディ様ただ一人だ!」

「ルディ様万歳!! 安全第一、ヨシ!! ブラック隊長は雪山へ引っ込んでろォッ!!」

「「「おおおおおおっっ!! 引っ込んでろ!! ヨシ!!」」」


 数百人の兵士たちによる、地響きのような大合唱クーデター

 旧守備隊長は、自らが完全に部下たちから見限られ、圧倒的な「ホワイト待遇」によって丸ごと寝返られた(NTRされた)ことを悟り、腰を抜かしてオンドルの床にへたり込んだ。


「ば、馬鹿な……。俺の、俺の精鋭たちが……、こんな軟弱な小僧の温もりに、たぶらかされるなど……ッ!」


 そこへ、ピカピカのダウンベストを着込んだ老騎士ハンスと、彼が率いる十数名のバウムガルト精鋭護衛たちが、立ちはだかるように進み出た。


「聞き苦しいぞ、無能。……貴様のような『不安全行動の権化(ブラック上司)』は、我がバウムガルト陣営の風紀コンプライアンスを乱す最大のハザードだ」


 ハンスは、鍛え上げられた剛腕で旧守備隊長の胸倉を掴むと、そのまま兵舎の入り口まで引きずり、猛吹雪の吹き荒れる屋外へと、ゴミでも捨てるように放り投げた。


「ギャアアアッ!?」

「せいぜい外で、自慢の気合いと根性で越冬(修行)するがいい。……現場の整理整頓(ゴミ捨て)、ヨシ!!」


 バタンッ!! と、分厚い木の扉が閉ざされ、内側から重いカンヌキが降ろされた。


「お、おのれぇぇぇ……ッ! こんな軟弱な要塞、三日で崩壊するわァァァァッ!!」


 猛吹雪の中、旧守備隊長は一人、己の精神論と共に深い雪の中へと埋もれていく(セルフ労災)のだった。

 ここに、ブラック上司の価値観を完膚なきまでにへし折る、完全なる「ホワイトNTRざまぁ」が成立したのである。


 ◇ ◇ ◇


(よし! 兵站の最大ハザードである「凍死・餓死」はオンドルとハサップ給食でクリア。旧守備隊という労働力リソースの買収・洗脳も100%完了だ!)


 兵舎の奥、かつての指揮官室を5S(清掃)した仮設執務室で、ルディ・フォン・バウムガルトは脳内スプレッドシートの勝利ログに満足していた。

 だが、プロの安全衛生管理者は、一つの問題が解決した直後に、新たな「二次災害」が発生することを熟知している。


 ルディの網膜に投影されている【ガス・温度検知ディテクター】のサーモグラフィ視界が、旧守備隊の兵士たちの集まる大広間から、不気味で、そして極めて「生物学的に危険な熱対流」を検知し始めていた。


(……おいおい。凍死寸前だった男たちが、温かい部屋と栄養満点の食事で体力を回復させたのはいいが。……体力が余りすぎて、下半身の熱源(血気)が急激にレッドゾーンに振り切れてきているぞ?)


 ルディが冷や汗を流しながら視線を向けると、広場では、体力を持て余した男兵士たちが、チラチラと落ち着きのない熱視線を「ある方向」へと向けていた。


 彼らの視線の先にあるのは――。


「ふぁぁ……。オンドルの床、ポカポカで本当に気持ちいいですわね。少し汗ばんできちゃいました」

「ええ。こんな厚着、要塞の中では必要ありませんわ」


 テレーゼ、エルザ、ヒルデ、セシルといった幹部ヒロインたち。

 そして、クレアを筆頭とする「専門技術スタッフ」として同行させた二十名の優秀な乙女たち(計二十一名のライン工)。


 彼女たちは、マイナス十五度の猛吹雪を警戒して着込んでいた防寒着を次々と脱ぎ捨て、ミリーたちが仕立てた「極薄の白いシュミーズ」一枚という、極めて無防備で健康的なドレスコードで、オンドルの床の上をくつろいで歩き回っていたのだ。

 豊かな双丘が薄いリネン生地を押し上げ、デトックスの汗が滲んだ肌が透け、甘く芳醇なハーブの香りが兵舎の密閉空間に充満していく。


 何ヶ月も雪山に閉じ込められ、女性の姿など見たこともなかった血気盛んな男数百人の群れの中に、薄着の美女二十数名を放り込む。


(馬鹿野郎! 労働基準法どころか、本能的な「セクハラ・暴行ハザード(コンプライアンス違反)」のメガトン級爆弾じゃないか!

 視線によるセクハラは作業効率を低下させ、不満が溜まれば暴動(重大労災)に直結する!

 これ以上の混在は、我が陣営の風紀と安全を根底から破壊するぞ!!)


 ルディは即座に立ち上がり、拡声魔導具を手に取って、兵舎全体に肺の腑を引き裂くような大音響で号令を下した!


「全作業員(全軍)、直ちに動作を停止し、注目しろ!!

 これより、我が要塞内における重大な『コンプライアンス防護措置(絶対的ゾーニング)』を執行する!!」


「「「は、はいぃっ!? 若君(ルディ様)!!」」」


 男兵士たちがビクッと直立不動になる中、ルディは兵舎の中央、男女が入り混じっていた空間のど真ん中へと歩み出た。


「いいか! 血気盛んな男たちと、うら若き乙女たちを同一の労働区画に混在させることは、動線の交差による『接触・衝突ハザード』および『風紀の乱れ(暴動リスク)』を誘発する最大の不安全状態だ!

 よって俺は、この要塞を物理的、視覚的、聴覚的に『完全隔離セパレート』する!」


 ルディは両手を床のコンクリートに突き立てた。


「――【土壌安定ソイルコンパクション】、最大出力フルブースト!!」


 ズゴゴゴゴゴゴゴッ!!!


 ルディの莫大な魔力と土木工学の知識が結合し、兵舎の中央の床から、分厚さ五十センチを超える「超高強度石化コンクリートの防音・防犯壁」が、天井に向かって一気にせり上がった!


「うおおおおっ!? な、なんだこの巨大な壁は!!」


 要塞の内部は、ルディの魔法によって、完全に独立した二つのエリアへと真っ二つに分割された。


「よく聞け、男ども! お前たちはこれより、こちらの『エリアA:一般兵士用居住区』に滞在する! 室温は活動に最適な適温二十度だ! ハンス、お前が責任者として彼らの統率(5S)を徹底しろ!」


 ルディは、分厚い壁の真ん中に一つだけ設置された、極太の鉄格子がはまった堅牢な鋼鉄の扉の前に立ち、男兵士たちを冷徹に睨みつけた。


「そして、この壁の向こう側は『エリアB:女子寮および執務エリア』とする。こちらの室温は常春の二十五度。……いいか、この鉄の扉の向こう側は、男子禁制の絶対不可侵領域レッドゾーンだ!

 許可なき立ち入り、あるいは扉越しに覗き見などの不安全行動セクハラを働いた者は、即刻クビにして極寒の雪山へ放り出す! 分かったな、ヨシ!!」


 普通の軍隊であれば、「女を独り占めする気か!」と暴動が起きかねない隔離政策である。

 だが、温かい床とスープで命を救われ、ルディを神のごとく狂信している男兵士たちの脳内では、その物理的な「隔離壁」は、全く別の神聖な意味を持って変換バグされた。


「おお……っ! なんという気高き配慮……!」


 老騎士ハンスが、鋼鉄の扉の前にガシャリと平伏し、狂信の涙を流した。


「血に飢えた我らむさ苦しい兵の穢れが、清らかな乙女たちに触れぬよう、若君自らが巨大な『防壁アギト』を築いてくださったのだ!

 この分厚い扉の向こう側は……若君と女神(乙女)たちのみが住まうことを許された、神聖なる『常春の聖域エデン』!

 男どもよ! 我らの任務は、このエデンの扉を守る最強の盾となることだ! エデン防衛、ヨシ!!」


「「「おおおおおっっ!! ルディ様と女神たちのエデンを守り抜け!! 安全第一、ヨシ!!!」」」


 男兵士たちは、不満を抱くどころか、その分厚い壁と鋼鉄の扉を「御神体」のように崇め奉り、扉に向かって毎日祈りを捧げる狂信的な親衛隊へと完全変貌を遂げたのである。


(……よし! セクハラ・暴動ハザード、物理的シャットダウン100%完了! 男どものモチベーション(信仰心)もMAXで安定したな! コンプライアンス管理、大成功だ!)


 ルディは、鉄格子の扉に重い錠前ロックアウトをガチャリとかけ、ホッと胸を撫で下ろしながら「女子エリア(エリアB)」へと振り返った。


 そこは、外の地獄の猛吹雪とは完全に隔絶された、室温二十五度、湿度四十%の「常春のパラダイス」であった。

 そして、男兵士たちのむさ苦しい視線が物理的に完全排除されたことで、ヒロインたちと二十一名の乙女たちの「無防備さ」は、ルディの予想を遥かに超える限界突破を果たしていた。


「あぁ……っ。ルディ様が分厚い壁を作ってくださったおかげで、男たちの嫌な視線を感じずに済みますわ。……ここなら、もっと身軽な格好で作業(労働)に集中できますね」


 テレーゼが、すでに極薄だったシュミーズの肩紐をスルリと下ろし、その豊かな双丘の谷間を惜しげもなく晒しながら、丸眼鏡を色っぽく光らせた。


「ええ……。ルディ様が用意してくださったこの『エデン』。ここは私たちとルディ様だけの、完璧にクリーンで安全な密室ですものね……っ」


 エリーゼも、エルザも、ヒルデも。

 そして、クレアを筆頭とする専門技術乙女二十一名全員が。


 男の目(風紀ハザード)が完全にゼロになった安心感と、オンドルの常春の温かさにより、皆一様に、まるで薄いネグリジェか下着と見紛うようなシュミーズ一枚の無防備な姿となり、あるいは汗ばんだ太ももを露わにして、特産品(純石鹸の精製など)の屋内工場ラインを稼働させ始めていた。


 甘く芳醇なハーブの香りと、二十数名のうら若き乙女たちのデトックスの汗の熱気が、密室空間にドロドロと充満していく。


「ルディ様……、作業で少し肩が凝ってしまいましたわ。安全管理者の義務として、私のこの火照った身体も、あなた様の電気で『安全点検アース』していただけますわよね……?」


 エルザが、シュミーズの下で艶かしく紅潮した太ももを擦り合わせながら、ルディの腕に豊かな胸を押し付けて熱い吐息を漏らす。

 クレアや乙女たちも、「私たちも、ルディ様のビリビリするお仕置き(点検)を待っています……!」と、上気した頬で一斉にルディへ熱視線おねだりディテクターを集中させた。


(……お、おいおい。セクハラハザードを回避するために絶対的ゾーニングを敷いた結果、俺自身の身の回りが、100%合法的な「シュミーズ一枚の常春密室ハーレム」になっちまったじゃないか!?

 いや、これはあくまで俺がサボるための安全なセーフティネットの構築結果であって、決して俺がエロいことをしたかったわけじゃ……っ!)


 ルディは、四方八方から迫りくる絶世の美女たちの、むせ返るような愛欲の熱気に冷や汗を流しながらも、内心で「俺の有給サボりライフの究極形、ここに完成ヨシ!!」と、特大のガッツポーズをキメるのであった。


 猛吹雪に閉ざされた死の最前線要塞は、ルディの圧倒的な安全衛生工学により、中世の常識を完全破壊する「至高の密室温泉リゾート」へと、その淫らでクリーンな産声を上げたのである。




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