第032話:二十九組の「無災害婚姻(トロフィー授与)」と、洗脳ホワイトユートピアの完成
五十人の乙女たちがロベルト領に到着してから、約一ヶ月が経過した。
「――若君。簡易寺子屋の第一期オンボーディング、ならびに『農地改革・第二期コピペ操業(pH中和)』、すべて工程表通りに無災害で完遂いたしましたわ」
旧ロベルト子爵邸の美しい中庭を見下ろす広々としたバルコニー。
総務・財務主任のテレーゼ・フォン・ベルンハルトが、夏の爽やかな風に絹の髪をなびかせ、丸眼鏡の奥の瞳を誇らしげに輝かせて報告した。
ロベルト領の酸性土壌は、ルディの「土壌安定」の分子イメージ逆用と、アカデミーを修了した乙女たちの正確な石灰・木灰の計量散布(アシスタント業務)により、かつてのバウムガルト男爵領をも凌ぐ速度でpH6.5の中性肥沃土(ホワイト農地)へと劇的なカイゼンを遂げていた。
「よくやった、テレーゼ。……そして、ミリー、エリーゼ、ヒルデ、セシル、エルザ。お前たちのOJT(実地教育)の成果も実に素晴らしい」
ルディ・フォン・バウムガルトは、豪華なバルコニーの椅子に深く背を預けながら、内心で「ふぅ、これでようやく俺のサボり有給ライフへの下準備が整ったぞ」と安堵の吐息を漏らしていた。
彼の脳内スプレッドシート(安全アセスメント)は、極めてクリーンな勝利ログを更新し続けている。
(未経験者である五十人の補償乙女たちに、いきなり過酷な労働(泥水路の清掃など)を強いるという不安全行動を避け、まずは一週間のアカデミーで「危険予知(KYT)」、5S、そして読み書きと計算を徹底的に座学させた。
その結果、彼女たちの労働生産性は当初の予測の三倍に跳ね上がり、作業中の労災(怪我や食中毒)の発生率は実質ゼロになった。
彼女たちの能力が三倍になれば、俺がサボれる余剰時間(有給)も三倍に増える。二度目の領地改革だからな、手順のコピペ(標準化)による極めて安定したプロセス保全だ)
だが、ルディの「本日の最大にして最重要のタスク」は、これから中庭の広場で執り行われる、前代未聞の「婚姻マッチング(トロフィー授与式)」であった。
(五十名の乙女のうち、知的エリートや職能持ちの二十一名は、テレーゼやヒルデ、ミリーたちの「直属アシスタント(中間管理職)」として適正配置(リソース配分)した。
そして、残る二十九名の健康な娘たち。
対するは、先の対オルテンシア戦で「完全無災害(傷病者ゼロ)」で帰還した、我がバウムガルト=ロベルト警備隊の独身従軍者二十九名。
……完璧だ。
今、この戦功レイティング(貢献度)に基づいてソートされた二つのリストを、寸分の狂いもなくマッチング(福利厚生)させ、正式な「婚姻」として放出する!)
ルディは、自身の有給傀儡生活を永久に盤石にするための、究極の「定着率向上・暴動ハザード対策」の実行に向けて、不敵な管理者スマイルを浮かべた。
「――全軍、服装ヨシ! 姿勢ヨシ! 視線、頭上ヨシ!!」
夏の青空が広がるロベルト邸の広大な中庭。 バウムガルト=ロベルト警備隊のハンス副官が、割れんばかりの大音声で号令を下した。
そこに整列していたのは、ミリーたちが沸騰消毒で真っ白に洗い上げた、お揃いの清潔な「婚姻用リネンシャツ」と、バウムガルトの家紋が美しく刺繍されたダウンベストをまとった、二十九名の独身帰還兵(労働力)たちであった。
彼らの顔は、極限の緊張と、それ以上に「あり得ない奇跡」への異常な欲求と興奮で、ツヤツヤと赤く上気していた。
中世の戦場において、生き残った兵士たちが最も渇望する報酬――それは金貨でも、騎士の称号でもない。自らの生活を支え、家庭を守ってくれる「健康で美しい妻」である。 ましてや、眼前に整列しているのは、かつての敵国オルテンシアの、読み書きと簿記ができ、ミリーたちの5S教育を修了した、おろしたての真っ白な極薄シュミーズに包まれた、うら若き乙女たち二十九名なのだ。
対面で整列する二十九人の乙女たち。そして、簡易寺子屋を首席で修了し、他の娘たちのように末端兵士へ放出されることなく、テレーゼの「総務補佐(幹部候補)」としてルディの傍らに残ることを許された「補償乙女代表」のクレアが、誇らしげに、しかし複雑な熱い吐息を漏らしながら、式の進行を介添えしていた。
ここに並ぶ二十九人の乙女たち――いや、すでに適正配置を終えた者も含めた五十人の乙女たち全員が、かつてロベルト領に到着した当初は、鎖に繋がれた地獄を覚悟していた。しかし、ロベルト領で与えられたのは、ハーブ香るピカピカの寄宿舎、温かく美味しいハサップスープ、大地のpH中和による新鮮な食事、そして知性を与えてくれた簡易寺子屋という「神のごときホワイト待遇」だった。
(私たちは、ルディ様という「大慈悲の神」に救われた……。
そのルディ様が、今、私たちのために、同じくツヤツヤと健康で、暴力を振るわない優しく清潔な「完全無災害の英雄たち(夫)」を、直々に選んで引き合わせてくださるなんて……!)
二十九名の乙女たちの瞳には、ルディへの狂信的な感謝と涙がボロボロとこぼれ落ちていた。 そして、それを見つめるクレアもまた、自分が他の娘たちのように兵士へ下賜される側ではなく、ルディのすぐ手元に留め置かれたという「特別な運命」に、優越感と期待の混ざり合った熱い涙を流していた。
バルコニーから中庭を見下ろすルディは、テレーゼから手渡された「無災害婚姻誓約書(福利厚生パッケージ)」を手に、広場全体に向けて凛とした(しかし本人は緊張している)声で宣言した。
「――我が新生ロベルト領の守護者、そして未来の開拓者たる勇士たちよ。 お前たちが先の戦いにおいて『安全第一』の規律を遵守し、一人の被災者(死傷者)も出すことなく『完全無災害(ゼロ災)』で帰還したその功績は、この地における最大の戦功である。 よって、俺は主君として、お前たちのその高いプロ意識(忠誠)を称え、この寺子屋で完璧に5Sと危険予知(KYT)を修了した、健康かつ最も美しい『オルテンシアの乙女』たちを、お前たちの正式な『妻』として授与する!」
「おおおおおおお……ッ!!!」
広場全体から、大気を震わせるほどの、男たちの割れんばかりの号泣と絶叫の地響きが沸き起こった。
「ル、ルディ様……っ!
他の傲慢な領主どもは、我ら小作人をただの使い捨ての泥人形としか見なさず、戦場で手足を失えばドブに捨て、嫁も家族も飢え死にさせました……!
それなのに、ルディ様は……、
五体満足で生きて帰してくださっただけでなく、これほどまでに清らかで、読み書き計算までできる最高の嫁を、家(個室天幕)と、週休二日のホワイト待遇と共に無償で与えてくださるなんて……!!」
ハンス副官の直属の片腕である独身壮年兵が、ルディの前にガシャリと膝を突き、芝生に額を擦り付けて、大粒の涙を流しながらおめおめと慟哭した。
彼の隆起した頑強な肩は激しく震え、ついに自らへもたらされた「生涯の伴侶」という、中世ではあり得ない究極の安全保障(福利厚生)に魂を震わせていた。
「これぞ、天上の神をも超える、大慈悲の聖領主様であらせられる……!
我が二十九名の独身帰還兵、そしてこの嫁たち!
生涯のすべてを、その血脈の末代に至るまで、ルディ様の『安全第一』の御旗に捧げます!
私たちは、死んでも若君を裏切りません!
毎晩、寝室に入る前にも、夫婦揃って『指差し呼称(健康管理)』を徹底し、完全無災害のホワイトな家庭を築いてみせますぅぅぅっ!!」
「「「ルディ様万歳! 安全第一、ヨシ!!! 夫婦円満、ヨシ!!!」」」
二十九組の夫婦たちが、一斉に涙を流して抱き合いながら、右手をルディに向けて突き出し、狂信的な「指差し呼称」の大合唱を中庭に響かせた。
その光景を見つめるルディは、自らの脳内スプレッドシートが、完璧な「安全マージン(絶対的リテンション)」を弾き出していることに、極上のサボり快感を覚えていた。
(よし、マッチング完了率100%! 労務定着ハザード、完全排除!
これで彼らは、ルディから与えられた極上の生活環境と、愛する家族を守るために、自発的に領内の「5S活動」を徹底し、不審な敵を家庭の内側から察知して排除する、完璧な「自警・セーフティネット」の歯車として機能する。
中世の理不尽な反乱やボイコットのリスクは、この婚姻マッチングパッケージによって物理的に永久にシャットアウトされたぞ。
いやぁ、本日も完全無災害、ヨシ!!)
その大熱狂のパレードの最中。
バルコニーの長椅子に再び深く腰掛けたルディの背後から、側近ヒロインたちの、熱く圧倒的な「特権ヒエラルキーの熱」がドロドロと立ち上っていた。
「ふふ、若君。あの末端の娘たちの、嬉しそうな、しかし卑小な涙をご覧なさいな」
テレーゼ・フォン・ベルンハルトが、自らの丸眼鏡をそっと外し、ルディの首筋に豊かな双丘を押し付けながら、心地よいハーブの香りとデトックスの熱を漂わせて囁いた。
「あの子たちに与えられたのは、あくまで若君が構築された、この新生ロベルト領の『ホワイト就業規則(福利厚生)』という施しのみ。
……若君のすぐ傍らでお仕えし、その尊い御手から直接、身体の奥深くまで『微弱放電アース(コンプライアンス調律)』を注ぎ込まれて、極上のリラクゼーションに白目を剥くことを許されるのは、私たち『幹部(特権階級)』だけの絶対的な聖域(権利)です。
マッチングされた末端労働者の娘どもが、万が一にも若君の夜の寵愛をねだるような不遜を働けば、この私が『不安全行動』として、即座に領外追放(廃棄処分)にして差し上げますわ……」
「その通りよ……」
氷の令嬢から、ルディ専用の「従順な奴隷監査役」へと完全に堕ちたエリーゼが、薄い白いシュミーズの裾をはだけながら、ルディの膝の上にまたがるようにして座り、そのなめらかな太ももの『放電痕』をルディの長衣に擦り付けながら、喘ぐような熱い吐息を漏らした。
「あの子たちは、ルディ様の労働資産にすらなれない、ただの『インフラの歯車(一般社員)』。
ルディ様の、あのバチバチとする冷たくて熱い指先で、太ももの内側の最も深いツボをめちゃくちゃに掻き回されて、脳髄の防壁を破壊される至高の快楽は、私たちだけのもの。
……ねえ、ルディ様。あの意地汚い末端たちの目の前で、私に朝の『パトロール(調律)』を施してください。
お父様(辺境伯)を完璧に騙し抜いた偽装報告書の『報酬』として、私のこのガチガチに強張った自律神経に、もっと、もっとたくさんの雷を流し込んで、とろとろに溶かしてくださいぃぃっ……っ!」
「ヒルデも、ヒルデも我慢の限界であります!」
現場警備主任のヒルデが、お尻をそわそわと激しく揺らしながら、ルディの反対側の太ももにしがみつき、ズボンの上から『放電痕』を愛おしそうになぞりながら懇願した。
「昼間は、ピカピカの制服を着て、あの商人たちに『ご安全に!』と凛々しく挨拶しておりますが……、
私のこの内股は、もう、ルディ様の電撃パルスを求めて、シュミーズの下で極上のデトックスの汗がじっとりと溢れて破裂しそうなのであります!
若君、末端のマッチングを見届けた後は、私たち幹部だけの『特別総点検(ハーレム3P調律)』を、今すぐ、このバルコニーで開始いたしましょうっ!」
「あ、いや。操業時間内(日中)の過度なアース作業は、安全衛生基準の『過重労働ハザード』に抵触するんだが……」
ルディは、側近ヒロインたちの「天を衝くほどの認知のバグ(幹部特権マウント)」と、あまりにも過剰なアースおねだり信号に冷や汗を流しながらも、彼女たちのむっちりとした白い太ももを撫で回し、微弱な静電気をチリチリと流して、そのガチガチの過緊張を優しくほぐしてやった。
「あ、あはぁぁっ……っ!
気持ちいい……っ、ルディ様のお仕置きの電気、最高ですわ……!」
「ひゃうぅぅぅっ!
これ、これです! この電撃が、私の脳みそを溶かしてしまうのでありますぅぅっ!」
バルコニーで、甘いハーブバームの香りと、極限の脱力状態に達した幹部ヒロインたちの「甘く熟れたデトックスの汗の匂い」がドロドロと風に漂う。
その様子を、書類を抱えたまま、白いシュミーズの裾を恥ずかしそうに手で握りしめて見つめていたクレア(補償乙女代表・次期幹部候補)は、顔を真っ赤に染め、自らの細い太ももをキュッと強く擦り合わせながら、物憂げな、しかし激しい羨望の吐息を漏らしていた。
(あ、ああ……っ!
やはり、テレーゼ様やエリーゼ様たちは、ルディ様から直接、あの『青白い電撃の洗礼(直接調律)』を与えられる、特別な幹部(奥方様)なのだわ……。
私たちは、お揃いの夫を与えられて幸せだけど……。
でも、なぜかしら。
あのバルコニーから漂う、甘くて熱い匂い(デトックスの熱)を嗅いでいるだけで……、私の太ももの内側が、信じられないくらいズクズクと疼いてしまう……っ。
私も、いつか、総務補佐のお仕事を完璧にこなして、あのバルコニーへ呼ばれ……。
ルディ様の、あのビリビリする指先で、お尻や太ももをめちゃくちゃにお仕置きされて、ドロドロに溶かされてしまいたい……っっ!!)
クレアは、シュミーズの合わせ目の下で、すでに完全に決壊して溢れ出た自らのデトックスの熱に喘ぎながら、ルディの不敵な横顔を、熱烈な狂信の瞳で見つめ続けるのであった。
この、新生ロベルト領における、前代未聞の「無災害婚姻トロフィー授与(29組の結婚)」と、一糸乱れぬ「安全第一」の情報・治安ネットワークの構築。
その凄まじき内政的繁栄を国境沿いから偵察していた、他国の密偵や周囲の不審な領主たちは、ルディの「底なしの地政学的魔手(洗脳国家の完成)」を確信し、冷たい汗を流して震え上がっていた。
「バ、バウムガルトの四男……、あの少年はやはり、人間の皮を被った底なしの覇王(怪物)だ……!
金貨というただの紙切れ(賠償金)をあえて全額免除し、代わりにオルテンシアから奪った娘たちを領内のすべての家庭へ『人質・妻』として寄生させ、完璧な情報監視・情報統制ネットワーク(セーフティネット)を機能させるなんて!
あの領地に入り込んだいかなる間者も、彼の構築した『白いシュミーズの監視員(妻たち)』によって瞬時に特定され、アース(排除)されてしまう!
戦う前に、国そのものを内側からハッキングし、100%裏切らない『狂信的ホワイト帝国』をわずか十日間で完成させてしまうなんて……。
おのれ、ルディ・フォン・バウムガルト! なんという恐るべき、邪悪で、非の打ち所のない、知恵の魔王なのだ……!!」
周囲の領地主たちが、ルディの圧倒的な「不落のセーフティ・ユートピア」の構築に、畏怖の涙を流して深く平伏しつつあることなど、ルディ自身は一分の一も気づいていなかった。
「よし、二十九組の婚姻マッチング、ならびにロベルト領の第一期復興ガントチャート、100%の無災害(ゼロ災)でコンプリート!
これで俺の『有給サボり傀儡領地経営』の絶対防御壁は完成だ。
……本日も、完全無災害で操業終了。手順、ヨシ!!」
「「「「「はっ! ルディ様(若君様)!!! 安全第一、ヨシ!!! ゼロ災婚姻、ヨシ!!!」」」」」
夏の青空に響き渡る、領民とヒロインたちの、狂信的で、そして甘い欲情に満ちた大合唱。
(……待てよ。29組同時マッチングということは、来年一斉に産休・育休に入られて、現場の操業率が急低下する「ベビーブーム・ボトルネック」が発生するリスクがあるな。テレーゼ、早急に「妊婦の軽作業シフト」と「領内共同託児所(保育インフラ)」の設計図を引いておけ!)
ルディは、自らのあまりにも完璧な保身スプレッドシートの勝利に深く満足し、いつの日か自分が何もしなくても領地が勝手に回り、毎晩ベッドで美しいヒロインたちを抱き枕にしながらゴロゴロして暮らす、輝かしい「有給ニートライフ」の完成に向けて、確かな、そして圧倒的な覇道の一歩を(そうとは知らずに)踏み出すのであった。




