第030話:無災害「ロベルト安全街道」の開通と、物理的バリア
新生ロベルト直轄領と、実家であるバウムガルト男爵領。その二つの地を結ぶ東部街道は、かつて国境紛争地帯の「死の泥濘」と野盗の嵐が吹き荒れる、大陸でも有数の極悪ブラックインフラ(危険区域)であった。
だが、大陸暦一二五四年、盛夏。
その地政学的・物流ハザードは、ルディ・フォン・バウムガルト(十五歳)の冷徹な「インフラ改善プロセス」によって、音を立てて塗り替えられつつあった。
旧ロベルト子爵邸、ルディの執務室。
魔導温風機が送り出す完璧に制御された涼気の中で、ルディは領地経営のキャッシュフロー計算書(羊皮紙)を前に、不敵な管理者スマイル(実態はサボり計画の点検)を浮かべていた。
ルディのすぐ傍らには、総務主任のテレーゼ・フォン・ベルンハルトが、大きな丸眼鏡の奥の瞳を冷徹に、しかしルディへの狂信的な愛で潤ませて控えている。
さらに、前夜ルディに完璧な【微弱放電アース】を施され、辺境伯を欺くための「専属・内部監査官」へと寝返ったエリーゼ・ヒルデ・フォン・ゼーフェルトも、薄い白いシュミーズの上からお揃いのバウムガルト式ダウンベストを羽織り、蕩けきった恍惚の表情でルディの膝に身を寄せていた。
そして、その執務室の片隅。
机の上にうず高く積まれた「領内物資搬入受領書」を、慣れない手つきで整理している少女がいた。
オルテンシア王国から引き渡された五十人の補償乙女の代表であり、テレーゼの総務補佐としてホワイト転職を果たした元貴族令嬢、クレア・フォン・ロシュフォール(十七歳)である。
「――テレーゼ。これにて、ロベルト領の全インフラ復興における『第一期・ロベルト安全街道舗装タスク』はすべて完了だな?」
ルディが冷徹なトーンで問いかける。
「はい、若君。ロベルト領から男爵領へ至る全三十マイルの区間において、予定通り『無災害街道舗装』が完璧に竣工いたしました。……ですが若君、これほどの大規模な工事、実質的にわずか十日間で成し遂げてしまうなんて、未だに信じられませんわ」
テレーゼは、ため息を漏らすように豊満な胸を震わせた。
ルディの脳内スプレッドシート(安全アセスメント)にとって、中世の「不安全な道路環境」は、領地経営における最大のハザード(損失要因)だった。
中世の街道は、ただの「踏み固められた泥の坂道」だ。ひとたび雨が降れば馬車はスタックし、急カーブでは滑った荷馬車が崖下へ転落して全損(重大労働災害)。さらに、見通しの悪い雑木林には野盗(物理ハザード)が潜み、商人たちのキャッシュを強奪していく。
(物流インフラにおける『交通事故』と『防犯ハザード』の発生率は、領地経営のキャッシュフローを致命的に下げる。道路のグリップ力を上げ、カーブの物理バリア(世界初のガードレール)を設置し、見通しを遮る街道脇の雑木林を強制5S(伐採・整理)する。これで配送遅延リスク・野盗遭遇率はゼロになる。手順、ヨシだ!)
ルディは、自身の【土壌安定】魔法を分子レベルの土壌結合イメージで「逆用・拡張」し、街道全体の粘土質の土質に少量の石灰(pH中和で余ったもの)を混ぜ合わせながら【土質安定処理(簡易アスファルト化)】を施した。
さらに、崖側の急カーブには、伐採した木材を力学的なトラス構造でガチガチに連結した「木製防護柵」を世界で初めて設置。
伐採した木材の表面をエルザの低出力熱線で焦がして「焼杉(防腐・防虫コーティング)」にし、それを力学的なトラス構造でガチガチに連結した木製防護柵を設置した。
これで、どれほどスピードを出した馬車であっても、崖下へ転落して労災死するリスクは物理的に100%シャットアウトされた。
「……ふぅ。これで第一フェーズは完了だが……。テレーゼ、エリーゼ。お前たち、少し肩が強張っているな。魔力の対流をディテクターが検知した」
ルディは、内政デスクワークによる彼女たちの「肉体的ハザード(肩こり・過労)」を未然に防ぐため、スッと椅子から立ち上がった。
「え……? 若君、それは……?」
「お仕置き(メンタルヘルスケア)の時間だ。安全管理者の義務として、労働時間内のコリは、その日のうちに強制緩和しなければならない」
ルディは平然と言い放つと、テレーゼとエリーゼを自身の膝元へと引き寄せた。
その様子を、書類を抱えたまま、クレアは執務室の隅で息を止めて凝視した。
(な、何を……始めるというの……!?)
クレアの瞳に映ったのは、中世のいかなる貴族の寝室よりも淫らで、そして圧倒的にロジカルな「肉体の調律」であった。
ルディは手のひらに、ミリー特製のカモミールバームをたっぷりと塗り広げると、テレーゼの白く滑らかな首筋、そしてエリーゼの氷のような美しい鎖骨へと、その細い指先をそっと這わせた。
ピリピリピリ……、バチバチバチッ……!
「ひゃあぅぅっっっっ!!!??」
「あ、あはぁっ……っ、ルディ様……、ルディ様の、お仕置きの電気が、首の骨の奥まで、ビリビリって浸透して……脳が、溶けちゃいますぅ……っ!!」
ルディの指先から放たれる精密な【微弱放電(パルス刺激)】が、テレーゼとエリーゼの脊髄を通る魔導回路に直接干渉し、極限の快感物質を分泌させる。
テレーゼは丸眼鏡を床に落とし、おろしたての薄いシュミーズの胸元をはだけながら、ルディの足元で「あ、あはぁ、極楽……、若君、もっと、もっと背中の奥までアースしてくださいぃっ!」と四つん這いになって心地よい汗を流した。
内部監査官のエリーゼも、その氷の令嬢の美貌を蕩けさせ、ルディの膝にその豊かな胸の双丘を押し付けながら、「お、お父様……、ごめんなさい、私……、もうルディ様の電撃マッサージなしでは、一秒も生きていけないのぉ……っ!」と、全身からデトックスの熱を放ってシーツに沈んでいく。
執務室の中に、じっとりと充満していく、官能的なハーブの香りと、極限のリラクゼーションに達した女たちの「甘く熟れたデトックスの汗」の匂い。
(あ、ああ……っ! なんて……なんて淫らで、恐ろしい光景なの……っ!)
クレアは、その圧倒的な「自律神経の強制オフ」を至近距離で浴びせられ、心臓をドラムのように激しく叩きつけていた。
剥ぎ取られた衣服。ミリーたちに与えられた、お揃いの「極薄の白いシュミーズ(制服)」。
その薄いリネンの布地越しに、クレアの瑞々しい一対の双丘は、ドクドクと湧き上がる欲情に耐えかねるようにツンと尖り、激しく波打っていた。
(あの冷徹で、高貴なエリーゼ様やテレーゼ様が……。あのルディ様の指先が放つ『青白い電撃(洗礼)』に触れられただけで、あんなにみっともなく、よだれを微かに垂らし、全身から汗を滲ませて這いつくばっている……。
でも……、なぜかしら。恐怖しているはずなのに、あのへたり込んだ彼女たちから漂う、あの甘くて熱いハーブと汗の匂いを嗅いでいると……。
私の、お腹の奥が、あり得ないくらい熱くなって……、太ももの内側がじっとりと汗ばんで、ズクズクと疼いてしまう……っ!)
クレアは顔を真っ赤に染め、執務机に体を隠しながら、与えられたシュミーズの下で、自らのむっちりとした白い太ももをそっとキュッと擦り合わせた。
擦り合わせるたびに、シュミーズのリネン生地が肌を刺激し、ツンとした甘い電流が彼女自身の脳髄を駆け抜ける。
(私も……。いつか、あのテレーゼ様たちの配置転換(合宿)が完全に終わったら……。
あのルディ様の、お仕置きの指先で、身体の奥深くをめちゃくちゃに揉みほぐされて、あの青白い電気をたっぷりと注ぎ込まれてみたい……っ。
ルディ様の、特別な『洗礼(お仕置き)』を、この身体で受けて、ドロドロに溶かされてしまいたい……!)
クレアは、いつの日かルディのベッドの上で、両手両足を安全帯で固定され、彼の電撃によって「わからせ」られる自らの姿を妄想し、白いシュミーズの下で太ももをすっかりデトックスの汗で濡らしながら、熱い吐息を漏らすのであった。
(よし。クレアのモチベーション(次期オンボーディング)も、極めて良好な数値をキープしているな。……さて、舗装の次は、街道の『物理的セキュリティ(防犯バリア)』の監査だ!)
ルディは、すっかり骨抜きになってへたり込んだテレーゼたちの頭を撫でながら、窓の向こうの、ピカピカに整備された「ロベルト安全街道」へと視線を向けた。
その頃。
完成したばかりの「ロベルト安全街道」の、崖際を大きく回り込む大カーブ。
ガラゴロ、ガラゴロ……。
隣領からロベルト領へと向かう、地方の弱小商人グループを乗せた荷馬車が、おっかなびっくりといった様子で街道を進んでいた。
「おい、大丈夫か、御者頭!
この街道は、国境の『死のぬかるみ坂』として有名な、馬車の横転全損事故が多発する最悪の泥道だぞ!
それに、このカーブの先には、悪名高い『片目のジャック』率いる野盗(物理ハザード)が潜んでいると聞いた!
本当に、このまま進んで大丈夫なのか……!?」
荷台に乗った老商人が、自らの全財産が積まれた荷物を抱きしめながら、青ざめて叫んだ。
中世の流通業者にとって、インフラの不備と治安の悪さは、一瞬で「会社倒産(命と財産の喪失)」へと繋がる最大のリスク(ハザード)だ。
だが、御者頭は、驚愕にその目を見開いたまま、ハンドル(手綱)を握る手を震わせていた。
「だ、旦那……! 違います!
これ……、この道を見てくだせえ!
泥じゃ、泥じゃありません! 土が……土が石のように硬化して平らになっていて、馬車が、滑らない(横転ハザードゼロ)んです!」
「な、何だと……ッ!?」
老商人が荷台から這い出て、道路の表面を凝視した。
ルディの【土壌安定】魔法を逆用した「土質安定処理」により、粘土質の泥は分子レベルで石灰と融着し、現代の「アスファルト舗装(滑り止め舗装)」並みの、驚異的な平坦性とグリップ力を獲得していた。
さらに驚くべきことに、カーブの崖側には、頑強な木製の防護柵が幾何学的な美しさで設置されている。もし馬車がスピードを出しすぎてコントロールを失っても、この物理的バリアが馬車を受け止め、崖下への転落を完璧に防ぐ仕組みだ。
「馬車が、滑らない……! 転落防止の木製の柵があるなんて、世界で初めて見るぞ!
それに、街道脇の雑木林が……綺麗に伐採(5Sの整理整頓)され、見通しが良くなっていて、野盗が潜む隙間がどこにもない……!」
老商人がその奇跡のインフラに驚愕の涙を流した、まさにその瞬間――。
「「「本日も、完全無災害(ゼロ災)で! ご安全に!!!」」」
「ひ、ひぃぃぃっ!? 野盗か!?」
カーブの先から現れたのは、ボロボロの野盗などでは断じてなかった。
ミリーたちが沸騰消毒でツヤツヤに洗濯した、ピカピカのバウムガルト式現場警備主任のズボンとダウンベストを身にまとい、頭にはピカピカのバウムガルト式安全兜を被った、四十名の「新生ロベルト領防衛警備隊」の面々。
その先頭に立つ現場警備主任のヒルデ・フォン・クランツは、かつてオルテンシアで恐れられた「黒鉄の百合」の鋭い大剣を、いまや「安全誘導標識」のように軽々と掲げ、商人たちに向けて、太陽のようにニコニコと笑いながら軍礼を返したのだ。
「ロベルト安全街道へ、ようこそ、旅の商人の方々!
我が警備隊は、ルディ様の『24時間巡回安全パトロール(防犯KYT)』を執行中であります!
先ほど、街道脇のブラインドに潜んでいた野盗『片目のジャック』一味(物理ハザード)は、我が警備隊の『整理整頓(全滅・武装解除)』によって、ロベルト領の土木作業員(下請け)として完全に処理されました!
これより先の区間、100%の安全を保証いたします!本日も無事故で、ご安全に!!」
「ご、ご安全に……っ!!!」
四十名のピカピカの警備隊員たちが、一斉に人差し指を前方へと突き出し、キリッとした表情で「指差し呼称」を響かせる。
土木作業員として現場に駆り出された野盗も、まずは「労働更生プログラム(5S研修)」を修了させ、適切な作業着を支給してから現場に出している。ルディから、「不安全な下請けは重大な事故(労災)の元だからな」と突っ込まれないように。
「……な、なんだ、この道は……!?
野盗が一瞬で『整理整頓(一掃)』され、あの恐るべき『黒鉄の百合』が、ニコニコと笑いながら『本日も無事故でご安全に!』と挨拶してくるなんて……!
ここは……、ここは東部国境の地獄の戦場ではない!
命と財産が、最も優しく、完璧に守られる、天国の領地だああっ!!!」
商人と御者たちは、その圧倒的な「無災害街道」の恩恵に涙を流し、バウムガルト=ロベルト領の偉大なる雷神聖領主、ルディ・フォン・バウムガルトの名を、神のごとく崇拝し、狂信しながら街道を駆け抜けていくのであった。
この「無災害安全街道」の噂は、瞬く間に大陸中の商人のネットワークへとバイラルに拡散された。
「ロベルト領を通過すれば、馬車は絶対に壊れず、野盗に襲われる確率もゼロ、さらに黒鉄の百合が安全を保証してくれる」
中世において、この「100%の生存マージン(安全性)」は、いかなる金銀財宝よりも価値がある。結果として、大陸中のすべての商人たちが、吸い寄せられるようにロベルト安全街道へと押し寄せ、新生ロベルト領には空前の物資が流れ込み、経済は劇的な急成長(操業度MAX)を遂げていく。
「――よし、安全街道の稼働率、100%! 配送遅延および交通事故リスク、ゼロ、ヨシ!!」
執務室。
ルディは、テレーゼから提出された「ロベルト街道通行税・増収レポート(キャッシュフローログ)」を指差し確認し、心の中で盛大にガッツポーズをしていた。
(よっしゃあああ! 街道のグリップ力を上げ、世界初のガードレールを設置し、ヒルデの24時間パトロールを巡回させたことで、物流ハザードは完璧にシャットアウトされた!
おかげで、領内のキャッシュフローは300%に急上昇、これなら復興のための外注費(補償金免除の穴埋め)も余裕でプールできる!
これこそが、最上流における危険予知(根本対策)の勝利だ!
これで、俺は辺境伯や実家からいかなる軍役を強要されても、この強固な『物理的バリア(安全街道)』と、エリーゼの偽装レポートによって、100%有給サボり傀儡ライフを継続できるぞ!
本日も、完全無災害、ヨシ!!)
ルディが、自身のあまりにも完璧な保身スプレッドシートの完成に満足していると、
「ルディ様、お疲れのようですから、次は私の『アース(調律)』の番ですわね……?」と、
すでに白いシュミーズの下で太ももをすっかりデトックスの汗で濡らしきったクレアが、おずおずと、しかし我慢しきれない自律神経の漏電(欲情)の瞳で、ルディの指先(電撃マッサージ)を求めて這いつくばってくるのであった。




