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第11話 答え合わせ

 アッフェル侯爵が私に気付いたのは、元許嫁だった聖女様に関して敏感だったから。

 孤児院の少女たちが私に協力的だったのは、彼女たちの夢見た理想の偽物の聖女だったから。

 彼女たちは、聖女様が周りを警戒せずに済む生活のために、寛解しているとはいえ男性恐怖症の恐怖を持ちながらも私に協力してくれた。

 聖女様のことを全く知らなかったのは私だけ。アッフェル侯爵と彼女たちは先代聖女の事も知っていた。


 だから私が偽物の聖女の間、あらゆる事に冷静に対処してくれた。

 先代聖女が受けた事の二の舞にならないように。


 聖女の力を宿す物を下着にしたことに始まり、第一王子と密室に二人きりにならないようにフローラとマーガレットが必ずついてくれた。

 土壌改善のための聖女の力を込めた薬瓶の数の管理はダリアとロザリーがしてくれた。厳しい管理のおかげで外部に漏れることなく、きちんと予定通り各領地に行き渡らせることができた。

 私が偽物とはいえ聖女の役割に疲れたとき、孤児院で手作りのクッキーを一緒に食べて元気づけてくれたリリーとジャスミン、そしてデイジー。

 そして聖女の保護を大義名分に、力が欲しいだけの王都の教会の老害たちを、不正を内部告発することで黙らせてくれた神父。

 他にも些細なことを思い出せばきりがない。


 それでも今になって冷静になると、アイリスだけ私と一線をおいていたと気づける。


 いつも神父と一緒に行動し、教会の内部告発の時も表舞台には出ずとも裏で証拠集めの手伝いをしていたらしいが、私の知らないところで文字通り暗躍していた。


 それはアイリスこそが聖女様だったから。下手に目立たないように神父の影に隠れていた。男装の麗人でもあったおかげで、性別すら王宮の誰も気付かないままだった。たまに私も惹かれてしまう瞬間があったくらい。

 

 元々口数が少ないけれど、今日くらいは本人の口から確認したいことがあった。

 最後の質問。私はただみんなを微笑ましく眺めるアイリスに、おそるおそる訊ねた。


「アイリスは、本当に聖女様なの?」


 一瞬の静寂の後、アイリスは微笑の仮面を外したような早さで真剣な顔になり、はっきりと首を横に振った。


 アッフェル侯爵が私に聖女様を紹介した時、男装のアイリスの後ろには神父がいた。

 いつも二人は一緒に行動していたから当然だと思ったけれど、今日のお茶会で私の勘がアイリスは違うのではないかと疑いだした。


 私の勘は正しかった。


 アイリスは先ほどまでの穏やかな雰囲気から一変した。冷ややかな空気を纏い、いつも神父の側で男装している時のような鋭い目で私を捉えた。

「確かに私は聖女様ではありません」

 今日初めて聞くアイリスのはっきりと通る声が温室に響いた直後、それまで私の様子を心配してくれていたマーガレットとフローラが離れた。

 どうしたのかと両側の二人を見ようとしたが、アイリスがそれを遮った。


「私は神父様の代役(アンダースタディー)でした」


 それを聞いた瞬間、私の思考は停止した。言葉の意味を理解するのに何秒経っただろう。

 アッフェル侯爵の吹き出すような笑い声で我に返ったとき、迷わず神父に説明を求めるように視線を送った。言葉が声にならない。軽いパニックよ。


「サリア様、お約束通りきちんと嘘なく説明はします」


 そうは言っても私は聞く準備が整えられず、両手で頭を抱えた。

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