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幕間 彼の地にて 2

 これはヴォルフィーネが旅に出る少し前の話。

 ダークエルフの里、ある部屋の前に少女が立つと、ドアが勝手に左右に開く。部屋の中は白色の床と壁。大きな画面モニターが設置されている。そこは魔物の情報データを元に模擬戦闘シミュレーションを行える場所。


「リオナ姉様、こんにちは」

「あらいらっしゃーい、フィーネ。いつもので良い?」

「うん、お願い」


 リオナと呼ばれた眠そうな目をしたダークエルフの女性は、手慣れた様子で演算装置シミュレーター数値設定セッティングをする。その間にヴォルフィーネは部屋の中央へと移動する。


「準備はいいね。それじゃーいくよー」


 姉の声が聞こえた後、少女の立っている場所が光りだす。次の瞬間、彼女の姿は光に包まれて消えた。


 ヴォルフィーネが消えてすぐ後、長身の女性が部屋へと入ってきた。


「母様、じゃなくて族長。ここに来るなんて珍しいですね?」

「フィーネが模擬戦闘をするというから、様子を見に来たのよ。旅立ちの日も近いことだし」


 もしかして心配で後をつけて来たのかしらん?とリオナは思ったが、口にはしなかった。末娘のヴォルフィーネには何かと甘い母親なのだ。


「何とか時間を作って見に来たのですか?」


 ニヤニヤ笑って言うリオナをじろりとにらみ、族長と呼ばれた女性は咳払いをする。


「それで、フィーネの様子は…」


 部屋の壁一角を占める大きな画面モニター、そこに岩山に囲まれた荒野に立つヴォルフィーネが映し出される。次に彼女の前に現れた相手を見て族長は顔色を変えた。


「黒竜!?あれは普通出せないよう制限をかけていたはずでしょう!危険だわ、今すぐ模擬戦闘の中止を…?!」


 リオナに詰め寄って早口でまくし立てる族長だったが、画面の方からの大音量の衝撃にそちらを振り向き、


「…へ?」


 目を見開き、口をぽかんと開け、間の抜けた声をもらした。


(わー、この人もこんな愉快な顔するんだー)


 幾度もヴォルフィーネの模擬戦闘を見ているリオナは慣れたもので、族長の様子を人の悪い笑みで見ている。

 画面には、首を一刀両断され、崩れながら消えていく黒竜が映っている。その近くには、全身に光る紋様が浮かび、輝く剣を手に背から翼を生やしたヴォルフィーネが立っていた。


「何、アレ…」

「私は知りません。族長こそご存じなのでは?」

「知らない…見た事ない…何アレ…」

(わー、おもろい顔ー)


 完全に魂の抜けた顔になっている族長を横目に、リオナは遠慮のない感想を浮かべる。そんなことには微塵も気づかず、族長は、


(あの力は外では絶対に使わないよう、言っておくべきよね…それにしても、ずっと頑張っていると聞いていたけれど、まさか黒竜を倒すほど強くなっているなんて!流石フィーネ、私の自慢の娘…!)


 と思案しながら百面相をする。その様子を、リオナは飽きることなく眺めていたのであった。




 

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