表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者ギルドのお手伝いさん  作者: にわそーじ
第三章 帝都への旅立ち
33/39

第16話 におい

 人さらいとの戦いも終わり。頭目とその一味を拘束した後、ユルグは捕らわれていた二人を解放した。その内の一人、美しい狐の獣人ビーストが、うやうやしく礼をする。


「助けていただき、ありがとうございました。お強いのですね」

「俺ではない。彼女が頑張ってくれたからだ」


 淡々とした態度の彼が見ているのは、負傷して横になっているヴォルフィーネ。それに気づいて獣人は、


「怪我をなさっているのですね。私は治癒の魔法が使えます。もしよろしければ、手当をさせていただけませんか?」


 と提案した。ユルグはしばし考えると、彼女に「頼む」と応じる。

 獣人は少女の傍らに膝をつくと、手をかざす。次第に青白い光が集まり、魔法陣が浮かび上がってくる。そして彼女が何やらつぶやくと、少女の体を緑色の温かな光が包んだ。


 しばらくして光が消えると、少女はゆっくりと起き上がる。そして、不思議そうに自身の体をぺたぺたとさわった。その様子を、獣人は微笑んで見ている。


「…痛く、なくなった」

「それは何より。けれど無理はいけません。二、三日はあまり動かないようにしてくださいね」

「分かりました。治療、ありがとうございます」

「いえいえ。こちらこそ、助けてくださりありがとうございました」


 と、少女と獣人が話をしていると、大きな馬車に乗ったゴルドーとアカツキがやって来る。そしてユルグたちの方を見て、ゴルドーは肩をすくめた。


「俺たちの出番はなかったか。結構飛ばしてきたんだが、流石は先輩だな」

「先輩はやめてくれ」


 平然としているゴルドーとは対照的に、アカツキはふらふらしながら、口元を押さえている。


「ひでえ、道中だった…うぷっ」


 かなり参っている様子の彼女に、ユルグは薬の入った小瓶を渡す。


「これを飲め。少しは楽になる」

「ああ、悪ぃな…」


 彼女は素直に小瓶を受け取り、薬を飲む。それをヴォルフィーネは、少し羨ましそうに見ていた。


「さて、とりあえず挨拶といくか。俺は冒険者ギルドのギルドマスター、ゴルドーだ。アンタら二人のことを助けるよう、神殿長様から言われている」


 名乗る大男に、狐の獣人はゆったりとお辞儀をした。


「私は、帝国第一王妃の従者、エラリアと申します。此度のご助力に感謝を」

「アンタ、元冒険者だろ。肩っ苦しいのはいいさ」


 ゴルドーがそう言うと、エラリアは少し驚いた顔をする。


「私のことを知っているのね」

「Aランク冒険者、癒やし手のエラリア。まあ、顔と名前くらいはな。そんで、神殿長様がアンタらをかくまう用意をしてるそうだが、どうするね?」


 その言葉に彼女はうなずく。


「ありがたく、ご厚意にあずからせてもらうわ。ゼノ、ご挨拶を」

「あの、ゼノ、です。よろしくお願いします」


 エラリアの後ろに隠れていた猫の獣人が、おっかなびっくり出てきて頭を下げた。ゴルドーはニッと笑って応じると、今度は頭目たちの方へ声をかける。


「お前さんたちは、神殿長様の元へ連行する。大人しくついて来てくれると助かるんだが」

「従おう」


 頭目の態度に、ゴルドーは目を丸くする。


「やけに素直だな?」

「また毒をくらっては敵わんからな」

「ほお、先輩に毒を使わせたのか!お前さん、相当腕が立つんだな…。…ん?どっかで見た顔のような…」


 そんなやり取りをしつつ、ゴルドーと頭目たちは馬車へと乗り込んだ。

 ユルグは人さらいたちが使っていた馬車を調べ、移動に問題ないことを確認する。そして、ヴォルフィーネたちに声をかけた後、二人の獣人の方を向く。


「君たちも乗ってくれ。エラリアさん、ゼノさん」

「エラリア、で結構ですわ。ユルグ様」

「俺こそ、様はいらない。…しかし、どこかで会ったか?」

「私がまだ小さい頃でしたから、分からないのも無理はありません。ですが、貴方は記憶に残るにおいでしたので」


 そう言うと、彼女は艶っぽく微笑んだ。その様子を見てヴォルフィーネは、フードの奥で頬をふくらませた。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 街への帰り道、御者台に座るユルグに少女がしがみついている。彼は少し困ったように、少女へ話しかけた。


「フィー?その、動きづらいんだが、離れてくれるか?」

「やだ」


 と、彼女は離れようとしない。怪我を負ったことが怖かったのだろうか、と彼がそんなことを考えていると、少女から思わぬことを言われる。


「私も、ユルグのにおい、覚えるもん」

「えっと……?」


 急に何を言い出すのか、と彼は困惑する。後ろで見ているエラリアは、クスクスと楽しそうに笑う。アカツキはあきれ顔だ。


「お前ら…。そういうのはせめて、宿に帰ってからにしろよ」


 彼もそう思うのだが、結局街に着くまで、少女は彼にくっついたままなのであった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ