表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者ギルドのお手伝いさん  作者: にわそーじ
第二章 養成所
28/39

番外編 ゴルドー

 鬼族オーガ。他の種族よりも強靭な体躯と、額に二本の角をもつ種。人口に占める割合は少なく、また出会う機会があまりないためか、偏見にさらされることもあった。だから、彼は最初他人を信じていなかった。


 冒険者となり、単独ソロ迷宮ダンジョンを探索していたある日、魔物に襲われ深手を負う。森の中、身動き一つできず死を覚悟した時に、その男に助けられる。周囲から期待される冒険者パーティの斥候スカウトだった。その男は言葉少なに必要な手当てをし、彼の帰還に手を貸してくれた。


 それ以来、その男とは街で、迷宮で。幾度も顔を合わせ、時に助けてもらうことになる。

 彼が自分で気づかなかった、自分の良い点を教えてくれた。

 周囲との橋渡しをしてくれた。

 ギルド職員への誘いを受け、迷っていた自分の背中を押してくれたのも、その男だった。


 彼は、その男に恩を感じていた。いつか、必ず恩に報いようと思っていた。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 時が過ぎ、久しぶりにその男と再会して、愕然がくぜんとした。穏やかで優しかったその面影は変わり果てており、やつれ、目に光はなく、まるで死人のようになってしまっていた。


 事情を調べると、どうやら同じパーティの奴らが原因らしいと分かり怒りを覚える。しかし、依頼クエストに失敗して全滅したようだった。ざまあない。そんなことよりも、先輩のことだ。と彼は考える。


 何とか説得して、ギルド職員の仕事を手伝ってもらえることになった。自分の師である鬼人キジンに、ギルド職員としての教育係を頼んだ。大雑把なところはあるが、人柄は信頼がおける。気落ちしている先輩には、むしろ良いはずだ。


 そういえば、先輩と呼ぶと、少し反応が返ってくることに気付いた。何かにつけ、使っていこう。彼はそう思うのだった。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


「俺ぁ、駄目なやつです…」


 ある日の夜、酔竜亭すいりゅうていのカウンターには4人の男女が集まっていた。その一人、ゴルドーがため息をつきながらこぼす。


「ゴルドー、ひとまずこれを飲みなさい」

「何かあったの?ゴルドーちゃん」


 店の主人リュウイチはグラスに水を注いで彼に差し出す。そして、リュウイチの妻のアヤカは、落ち込んだ様子の彼にそっと聞いた。


「先輩…ユルグに、フィーネの、指導役メンターを、たのんだんです…。…で、普段の仕事を、他のやつらと、回してるんすけど…」


 そこで彼は言葉を切る。ユルグが抜けた穴、それを埋めるのに数人がかりでも足りぬほどであった。もちろん仕事は何とか回る。ユルグがいなくとも、何とかなる。しかし、そうではないのだ。


「俺ぁ、知らない間に、先輩に甘えてたんだ…。あんなにギルドを支えてくれてたことに、気付かなかった…。ギルドマスター失格だ…これじゃ、あいつらと、同じじゃねえか…」


 酒がまわってきたのか、彼はぽつりぽつりと独り言のようにつぶやく。話を聞いていた最後の一人、神殿長のゼーウが、軽い調子でこう言った。


「ユルグが君のことをどう思っているか、知りたいかい?」

「…知ってるんですか?」


 ゴルドーは顔をあげ、彼女の方を見る。


「聞いてみた事があるからね。で、どうする?」

「…。…教えて、ください」


 迷った末、彼は真剣な顔つきで言った。それに一つうなずくと、ゼーウは口を開く。


「あいつは、最高のギルドマスターだ。冒険者や職員、新入りに至るまで顔と名前を覚え、皆に声をかけ、気を配っている。必要な仕事をこなし、周りに仕事を割り振って、各員が働きやすい状況を作っている。外部との交渉事においては尚頼もしい。共に働けていることを、幸運に思う」


 淡々と、まるで本人のような口調で彼女は話した。ゴルドーはそれを聞き終え、一呼吸する。


「…俺に気ぃつかって、ウソ、言ってません…?」

「ハハ、まさか。神に誓って、本当だとも」


 彼は手で顔を覆ってつぶやく。


「何だよ…そんな風に、思ってんなら、言ってくれりゃ、いいのに…」


 つぶやきながら、彼は涙を流した。長い、長い時を生きてきた三人は、彼を静かに見守るのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ