番外編 養成所での一幕 3
「君たちがここへ来て3週間ほどが経った。パーティでの立ち回りなども、ずい分と上手くなったな。見違えるほどだ」
養成所の外広間、教官のユルグは訓練生たちに向けてこう言った。彼らは嬉しそうに、アカツキもまんざらではなさそうな笑顔になる。
「皆との連携も、慣れてきた気がします」
「最初に比べたら、結構成長したよな、オレら」
そんな彼らに向けて、教官はこんなことを言う。
「今日は、他の者の立ち回りを学ぶ訓練を行う」
「え~っと、…どういう事ですかあ?」
「闘士、弓兵、救護士。君たちがこれまで覚えてきたことを、他の3人に伝えてもらう。そしてその後、それを実践してもらう、ということだ」
頭に疑問符を浮かべて質問するブーレに、教官はそう答えた。エナシェラは冷や汗をたらした。
「えっと、つまり、私は闘士や弓兵の動きをする、ということですよね…。わ、私、あまり武器を振り回すの、得意じゃないのですけれど…」
「オレだって弓とかもった事ねーぞ?」
困惑する訓練生たちに、教官は冷静に告げる。
「それぞれ武器の持ち方から教えてもらう。後で、何のためにこの訓練を行ったのか、その理由ややってみての感想を聞くからな。各自考えておくように。では、まずアカツキから」
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そうして4人がそれぞれの訓練を終えた。
「つっかれたぁ~…」
「救護士ってな、かなり周りを気にしなきゃいけねえんだな。体動かしてねーのに、やたら肩こった気ぃするぜ…」
普段と違う頭の使い方をした気疲れからか、ブーレもアカツキもげんなりした顔をしている。一方、闘士の動きをやったエナシェラは、膝をついて肩で息をしている。バンはそんな彼女に水を渡していた。
「バンは、何でも器用にこなすよね~」
「そうだな。あと、呼吸を合わせやすい。何でだろうな?」
「よく見てるんじゃない?こっちが、やるぞ!って時に合わせてくれるんだよね。バンが仕掛ける前には、こっちに目くばせしたりするかな」
二人の言葉にバンはうつむく。その耳が少し赤くなっていた。一息ついた頃合いをみて、教官は彼らに問う。
「さて、質問だ。今回の訓練を行ったのは何故だと思う?」
呼吸が落ち着いたエナシェラはその問いに、口元に指をあてて考えながら答える。
「別の視点を学ぶため、でしょうか…。武器を持って教官と戦うのは、やっぱりこわかったです…」
「オイラもそれかな。弓兵とか気楽かなと思ったら、全然そんなことないんだね~」
そんなブーレの感想に、バンはこくりとうなずく。アカツキは頭の後ろで手を組んだ。
「他の奴らの良さも分かってくるかもな。何気なくやってるようで、自分でやってみると違えなってなるし。あと正直、弓兵や救護士よりも、前で武器振り回してる方がオレには合ってるって思った」
彼らの答えを聞いていた教官は拍手をする。
「皆良い答えだ。別の視点があることを知り、他者の大変さや良さに気付く。とても大切なことだ。また向き不向きというものがあり、出来る者が出来ることをする。そうして互いに補い合って、冒険者のパーティは成り立っていく。……それを心に置いて、これからも精進していってほしい」
教官の言葉に、訓練生たちはそれぞれうなずいた。そうして彼らから見えないように、ユルグはため息をつく。そんな彼を、ヴォルフィーネは心配そうに見つめるのだった。




