番外編 養成所での一幕 1
アカツキたち訓練生が冒険者の養成所に来てからしばらくの時が経った。
彼らが養成所での生活に慣れてきたことを確認し、教官のユルグはある日彼らにこう言った。
「今日からはそれぞれ、街での仕事を経験してもらう」
「冒険者が街でする仕事の体験ってことか?」
やや興奮した様子のアカツキに対して、教官は冷静に告げる。
「いや。街の人々の仕事を手伝ってもらう」
「え~、何のためですかあ?あんまり面倒なのはイヤだなぁ…」
ぼやくブーレに、教官は肩をすくめる。
「まあ、そう言うな。理由はいくつかあるんだが…。さて、何故だと思う?」
問われて、訓練生たちは顔を見合わせると首をひねった。ややあって、おずおずとエナシェラが手を挙げて答える。
「街の人の仕事を通じて、その暮らしを知るため…ですか?」
「理由の一つが、まさにそれだ。街の人の暮らしを知るため。ひいては、迷宮の品がどう使われているか、将来冒険者となった時、自分の行いがどう人々の役に立つのか。それを知るためだ」
教官にゆっくりと言い含めるように言われ、訓練生たちはそれぞれうなずく。その様子を見て教官は続ける。
「また、仕事内容は各自の適正によって割り当てられる。冒険者以外の道があると知っておくこと。これも将来無駄にはならんだろう」
「それって逃げなんじゃねーの?」
不服そうなアカツキに、彼は落ち着いて返す。
「視野を広げる訓練、そう思ってくれ。あとは、君たちが働いた分給金が出る。その半分がギルドに入ることになる」
「おいそれズルくねーか!?」
「ギルドに入る分は、君たちの食材を用意したり、養成所の備品代に充てられる。ここの使用料として、どうか割り切ってほしい」
アカツキはまだ不満そうではあったが、一応矛を収めた。少し心配そうにエナシェラが口を開いた。
「あの、これ、私たちに言って良い話なんですか…?」
「無論だ。金の話は大事だからな、他の者にもきちんと説明をしている。君たちはそれを理解したうえで動いてもらいたい」
彼女は何か納得したようにつぶやく。
「養成所って入る時は無料だったから、どう運営しているのかと思ってましたけど…謎が解けた気がします…」
「流石に、運営資金全てを見習いたちに頼るようなことはないからな。先も言ったが、主に君たちの食費として使われる」
そんなやり取りを聞いて、アカツキはため息をついた。
「そんなら、まあ。しっかりやらねーとだな。街の仕事ねえ…」
「気負わず、一つ一つやっていってくれ。何か困りごとがあった時は相談すること。俺でも良いし、寮にいるエルフさんに言っても良い」
教官の言葉に、訓練生たちは各々了承の返事をするのだった。




