番外編 信者
人の子らよ その命の限り
良き生を 歩むように
恩には 感謝を
価値には 対価をもって
応えるように
(『太陽神教経典』 序文より)
養成所の宿舎、その一室にて。赤髪の鬼人アカツキが太陽の紋章を手に祈りをささげている。人族の少女エナシェラは、彼女が祈り終えるのを待ってからおずおずと話しかけた。
「アカツキさんは、太陽神教徒、なんですか?」
「おうとも。オレら鬼人族は皆そうだぜ。ってか、アカツキでいいよ。同じ部屋でこれから一緒にやってく仲間だろ」
「えっと…でも…」
少女は口ごもる。年上の女性を呼び捨てにするのは、いささか抵抗があった。少女の様子を気にした風もなく、あっけらかんとアカツキは問う。
「なあ、エナシェラっていくつなんだ?」
「え?16、ですけれど…」
その答えにアカツキは大いに驚いた顔をする。
「なんだよ年上だったのか!オレは15だからよ」
言われてエナシェラは固まった。その体格で、15?まさか。しかし彼女が冗談を言っているようには見えなかった。言葉が出ない少女に、鬼の女性は続けて言う。
「敬語とか苦手なんで、このままいかせてもらうけど、よろしくな!」
「あ、それはかまわないです、こちらこそよろしくお願いします…えっと。アカツキ、は神殿長様には、お会いしました?」
何気ない少女の一言に、アカツキは衝撃を受けたように身を震わせ固まった。その後、絞り出すように声を出す。
「…。…会える、のか?神殿長様に…?」
「え?ええ。神殿にいらっしゃれば、大体はお会いしてくださるはず…ひっ?!」
「今度、神殿に、案内、してくれ…!」
急に肩をつかみ、顔を近づけてきたアカツキに、エナシェラはこくこくとうなずいた。
「神殿長様…ま、まさかお会いできる日が来るなんて…夢じゃ、ないよな…?」
そう言って自分のほおを引っ張り、夢じゃない、とニコニコするアカツキ。その様子を見て、
(最初は怖い人かと思ってたけど、もしかして意外と面白い人なのかも…?)
そう思うエナシェラであった。
祖父の教育を受けて、アカツキは太陽神教と神殿長の度を越した信者となっていた。そのことを、ヴォルフィーネもユルグも、まだ知らない。




