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冒険者ギルドのお手伝いさん  作者: にわそーじ
第二章 養成所
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第10話 養成所

 冒険者ギルドに隣接する位置にあり、広い敷地を有する冒険者の養成所スクール。 

 石材と木材を組み合わせて造られた建物には、太陽と翼の紋章がかけられている。建物の周囲は低い柵でぐるりと一周囲ってある。訓練生の声か、それとも教官の声か。威勢のいい掛け声が響いている。


 養成所の外広間、訓練用の木剣やその的である木人などが並んでいる一角。そこに、今日から訓練を始める新人たちが集まっており、その中に鬼人キジンの女性アカツキもいた。最初こそ養成所へ通うことを渋っていたが、いざ通うとなれば、


(出来るだけ学んでやる。そんで、次にヴォルフィーネやアイツと会う時までに、少しでも強くなっておくんだ)


 彼女はそう決意していた。していた、のだが。


「君たちの教官を務めるユルグ、そして助手のヴォルフィーネだ。短い間だと思うが、よろしく頼む」


 訓練生たちを前にして、そう言ってお辞儀をする二人。思いのほか早かった再会にアカツキ、そしてユルグも、


(どうしてこうなった…)


 と心の中で思うのだった。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 冒険者ギルド、ギルドマスターの部屋。エルフのフレイラがギルドマスターのゴルドーに尋ねる。


「ユルグさん、教えるのは苦手って言っていましたけれど…教官をお願いして良かったんですか?」

「あの人のはただの謙遜だ。気にすることぁねえよ。本当に嫌な時は、結構顔に出るしな」

「ユルグさんのこと、分かってるんですね」

「付き合いは長えし、まあ多少はな」


 ゴルドーはそう言って、クックッと人の悪い笑みを浮かべる。フレイラは気の毒そうな顔をした。


「ユルグさんも大変ですねぇ…」

「そうは言うけどな、ユルグはああ見えて何人もの冒険者を育ててきてるんだ。教わった奴らからの評判も良い。頼りになるんだぜ」


 ゴルドーの言葉に、フレイラは柔らかく微笑む。


「ユルグさんのこと、分かってるんですね」

「まあ、多少はな」


 フレイラから目をそらし、ゴルドーは頬をかいた。ふと気づいたようにフレイラが尋ねる。


「フィーネさんのことは良いんですか?」

「それな…見てきた限り、後はユルグからの報告でも分かるが、フィーネは基本礼儀をもって人と接しようとしている。慣れてくると子供っぽさも見せるが、それは問題じゃない」


 ゴルドーはそこで一旦言葉を切って苦笑する。


「実は、ユルグに教官を頼むより、フィーネを助手につけるかどうかで渋られてな。とはいえ、フィーネは冒険者として伸びていくだろう。ゆくゆくは帝都へと巣立つかもしれん」


 息をはき、彼は腕を組む。


「あまり過保護だと、困るのはフィーネだ。種族のことで苦労はあるだろうが、あいつを信じて人と関わる機会を増やしてみてもいいんじゃないかってな。その辺はユルグも分かってたんだろうな。説明したら受け入れたよ」

「ふふ、お疲れ様です。ギルドマスターも大変ですね」

「ま、下が働きやすくすんのも、俺の仕事だからな」


 ゴルドーはそう言うと、なぜか少し寂しそうに笑ったのだった。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 アカツキの養成所生活、1日目。

 教官のユルグは4人の訓練生たちに、まずあいさつをするように言った。その言葉に、赤髪の女性が一歩前へ出る。


「じゃあ、オレから。名前はアカツキ。闘士ファイター志望。思いっきり相手をぶっ飛ばすのが得意だ。よろしくな」

「次は、オイラかな。ブーレだよ、見ての通り猫の獣人ビーストで、同じく闘士志望。だけど動きまわるのが得意、かな。よろしく~」


 ブーレと名乗った少年は、あいさつを終えるとふにゃっと笑った。次いで、おどおどした様子で人族ヒューマンの少女が、


「わ、私は、あの、エナシェラ、と申します…。め、救護士メディク志望、です。…その、足を引っ張らないよう、がんばりますので、よ、よろしくお願いします…!」


 そうあいさつをし、深くお辞儀をした。最後の一人、人族の少年が一言、


「バン。弓兵アーチャー志望。よろしく」


 淡々とした様子でそう言うと、軽く会釈をした。もうちょっと何かしゃべったらどうだ?アカツキがそう言う前に、教官が口を開いた。


「アカツキ、ブーレ、エナシェラ、バン。君たちは養成所での訓練期間、共に過ごすことになる。互いに尊重し合っていってほしい」


 彼は訓練生一人一人の顔を見ながらそこまで言うと、一呼吸置いた。それから、


「では、訓練を始める」


 教官のその言葉に、訓練生たちはそれぞれ気を引き締める。さっそく武器を使うことを教わるのだろうか。彼らはそう思っていたが、


「養成所の周囲、そこを君たちに走ってもらう。まずは準備運動からだ」


 教官の指示は、意外なものであった。


 そうして準備運動を終え、訓練生たちが走り出す。ユルグはヴォルフィーネに、


「フィー、彼らが走る一番後ろについて、彼らを見ていてやってくれ。これを背負ってな」


 そう言って小ぶりのリュックを手渡す。少女はそれを受け取りながら、首をかしげる。


「これは?」

「中に水筒と傷薬、包帯が入っている。必要だと思ったら使ってくれ」

「分かった」


 うなずくと、彼女はリュックを背負った。


「何かあった時、例えば転んだりしても、すぐに手を貸すことはない。ただ、彼らが動けなくなるような時は助けてやってくれ」


 彼の言葉に、少女はこくりとうなずくのだった。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


「ぜぇっ…ぜぇっ…」


 息も絶え絶えに、アカツキが両膝に手をついている。その隣にはエナシェラがへたり込んでいる。二人とも教官から呼吸を整えるよう言われ、小休止中だ。

 彼女は今まで持久力はそれほど鍛えていなかった。敵を倒せればそれでいい、と力や瞬発力を重視していたからだ。とはいえ、


「何で、あんな、走りづらいんだ…っ」


 草むら、砂利道、水場など、足元に注意が必要な場所がいくつもあった。アカツキのつぶやきに、


「あれも訓練だ」

「ああ?何の、だよ?」

「迷宮内で行動する、その時のための訓練だ」


 それだけ答えると、教官はまだ走り続けている男二人に「一時休憩だ、集合!」と声をかけた。

 集まった訓練生たちの顔を見回すと、教官は口を開き、


「今日、自分が何周走れたかを覚えておくように」


 そう言った。走る前、何周走ったか数えるよう言われてはいたが…。訓練生たちはその言葉の意図が分からず、それぞれ怪訝な顔をした。教官は続けて言う。


「冒険者は、自分の限界を分からずに無理をする者ほど命を落としやすい。自分が何を、どこまで出来るのか。走ることに限らず、常にその事を把握するよう、心がけてくれ」


 彼の落ち着いた、しかし真剣味を帯びた声に、訓練生たちも真面目な表情でうなずく。それを見て教官もうなずくと、


「冒険者は迷宮ダンジョンへ行くことが多い。そして迷宮では、へばって動けなくなった時ほど、命の危険が大きい。だから、体力、持久力の訓練でこそ、自分の限界を伸ばすよう努めてほしい」


「はい!」と訓練生たちが答える中、アカツキは反発する。


「でもよ、迷宮内でずっと走り回るわけじゃねーだろ?休むことだってあるじゃねーか」

「良い質問だ。確かに、迷宮内での休けいは重要だ」


 だったら、と更に言葉を重ねようとしたアカツキの前に、教官は言う。


「では、魔物に襲われている場合はどうだ?」

「それは…」

「うん。こちらが疲れたからといって、休むのを許してくれる相手ではない。休めない状況というものもある」

「確かに、そうだけどよ…」


 悔しそうに言うアカツキ。教官は全員を見回すと、


「とはいえ、これは訓練だ。そして今彼女が言ってくれたように、今後は走るだけでなく休むことも考えて訓練を続ける。日が昇りきるまでの残り時間、各自のペースで行うように、いいな?では、訓練を再開する」


 そう指示を出すのだった。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


「そこまで!全員集合!」


 教官の号令で訓練生たちが集まってくる。休み休みであっても、きついものはきつい。エナシェラは今にも倒れそうな表情をしている。他3人も疲労を隠せない様子だ。


「フィー」

「うん」


 少女は背負っていた荷物から水筒を出し、それぞれに配っていく。自分は何も背負ってなくてもバテているのに、ヴォルフィーネは平然としている。アカツキは複雑な思いで水筒を受け取った。一息ついている皆を見て、教官は口を開く。


「では、30分の休けいの後昼食を作る。全員、時間になったら調理場へ集まるように」


 そう言われて、アカツキは驚きの声をあげる。


「メシを自分で作れってことか?!」

「そうだが」

「聞いてねえぞ!」

「…そういえば言っていなかったか。すまなかった」


 ユルグは自分の不手際を謝ると、改めて養成所での生活は、基本訓練生主体で行われるという話をした。


「料理、片づけ、掃除、洗濯に…結構やることあるな…」


 ぼやく彼女に、教官は「気持ちは分かるがな」と言いつつも雰囲気を引き締める。


「いずれ分担してやってもらう事にはなるが、最初は一通り経験してもらう。これらは冒険者になってからも必要になることだ。それを意識して行ってほしい」

「本当に必要になんのか?人にやってもらっちまった方が冒険に集中できるだろ?」


 他の訓練生たちも同様に思っている様子で、教官の言葉を待っている。教官は一つうなずくと、


「ふむ、良い質問だ。生活に余裕が出てきたならば、それも良いだろう。それで、最初から余裕のある冒険者というのは、中々いないものだ」


 一旦言葉を区切ると、彼は全員の顔を見て話を続ける。


「食事や身の回りを整えること。これは、体を鍛えるのと同じように自分の土台を確かなものにする。だから決しておろそかにはしないでほしい」


 そこまで言うと、彼は口調を出来る限り気楽なものにして、


「とはいえ、完璧にやることはない。それが大切だと頭に置いておいて、後は自分のやれる範囲で構わない。まあ、共同生活で色々言われることもあるだろうが、無理することなくやっていってくれ」


 これを別の者に言われていたら、もしかしたら反発していたかもしれない。しかし、ここにいる訓練生たちは皆、ユルグがアカツキやヴォルフィーネと戦う所を見ていた。そして、その時の観衆たちが彼を評価するのも聞いていた。

 だからだろうか、アカツキ含め、それ以上異を唱えることはなく彼らはうなずいたのだった。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 休けいのため一時解散し、その場にはユルグとヴォルフィーネだけになる。と、彼はその場にしゃがみ込むと長いため息をついた。


「苦手と言ったのに…ゴルドーめ…」


 何やらつぶやいている彼に、少女は水筒を差し出す。


「お疲れさま」

「すまん、ありがとう」


 水を飲み一息ついた彼の頭を、少女が優しくなでる。


「…フィー?」

「なあに?」

「その、どうして頭をなでるんだ?」

「ん、イヤだった?」

「そうではないが…」

「じゃあ、続ける」


 そう言って、微笑みながらユルグの頭をなでるヴォルフィーネ。彼はしばらく、されるがままになっていた。不思議と心がほぐれていく気がした。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 しばしの後、冒険者養成所の調理場。その一角で調理を終えたアカツキたちが、出来上がったものを一口食べる。そして一様に吐きそうな顔をした。


「うえぇ…まっじぃ…」

「これは、食べられないんじゃ…」


 沈痛な面持ちになる4人。触感はぐにぐに、ひどく青臭く苦みも強い。作り始める前は、自分たちだけでも何とかなるだろうと思っていたのだが…。と、


「お助けの言葉を使うか?」


 様子を見ていた教官が声をかけた。真顔で。若干口元がひきつっている。訓練生たちは怪訝な顔をし、アカツキが代表するように、


「わりぃ、今何てった?」

「お助けの言葉を使うか?」


 彼は同じ言葉を繰り返した。真顔で。やはり口元が引きつっている。アカツキは困惑したように言う。


「…お助けの言葉ってのは、何だ?」

「困った時の相談だ。今は俺がいるからな。どうするか分からない時は、聞いていい」


 なるほど、そういうことか。と彼らは納得する。コイツに助けを求めるのは嫌だが、仕方ない。とアカツキは渋々、「教えて、くれ」と言った。


「よし。じゃあ、フィー。その鍋を持ってきてくれ」

「分かった」

「あと、水をコップに」

「どれくらい?」

「半分ほど」

「ん」


 教官とヴォルフィーネのやり取りを、訓練生たちは目を瞬かせて見ている。そんな彼らに、鍋に作ったものを入れるよう教官が指示を出す。


「この野菜は加熱が足りないとうまくない。そこで、こうする」


 教官は鍋にコップの水を入れると、ふたをして火にかけた。しばし後、彼はぐつぐつと沸いている鍋をかき混ぜると、小皿に少量取り「味見してみてくれ」と近くにいたアカツキに渡す。恐る恐る、彼女は口をつけて、驚く。


「全然、違え…」


 食感はほくほくしており、青臭さはなくなっている。苦みは薄れ、ほんのり甘みが出ていた。失敗料理と思っていたのに、普通に食べられるものになるんだ…。と彼女は鍋と教官を交互に見る。教官は静かにうなずくのだった。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 食事も終わり、皆が一休みしている。ふと、アカツキが何かを思い出したように苦笑しながら口を開く。


「しかしよ、お助けの言葉を使うか?とか、真顔で言うことじゃねーだろ」

「む…笑って言ったつもり、だったんだが」

「いや笑えてねーし」

「そうか…どうも笑顔は苦手でな」

「苦手ってレベルじゃなかったですよ~」


 ブーレがやんわりと言って、他の者たちも笑う。エナシェラが教官に尋ねる。


「その、どうして笑顔で言おうと?」

「ああ、困っている相手には、相手が話しやすいように笑顔で話せ、と師匠に教わったからだな。…どうも、逆に緊張してしまうんだが…」

「何だそりゃ。てか、うちのじい様みたいなこと言う奴だな」


 そう言ってアカツキも笑う。そんな中、


(笑顔、苦手なんだ。でも…)


 ヴォルフィーネは、以前ユルグが自分に向けてくれた笑顔を思い出し、何となく胸が温かくなるのだった。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 場所は変わって養成所の外広間。教官のユルグが訓練生たちを前に厳しい顔つきをしている。


「午後の訓練では武器を扱う。気を引き締めて行うように」

「それはいいんですけれど、教官。その格好は一体…?」


 エナシェラがおずおずと問う。教官は、犬のような獣形の着ぐるみを身につけていた。とてもモフモフしている。


「これは、深緑の迷宮に多く生息している魔物を模したもの。君たちには武器で俺を攻撃してもらう、その用意だ」


 至って真面目な雰囲気で彼は言う。モフモフの格好で。アカツキはあきれた顔をしている。


「何つーか。その格好、気が抜けるんだけど」

「む…これで、どうだ?」


 そう言って、教官は着ぐるみの頭をすっぽりとかぶった。


「それなら、まあ…?」

「よし。では、まず素振りから行う。ヴォルフィーネが手本を見せるので、各自それを参考にしてくれ。ああ、バンは俺と弓の練習だ。では、フィー。頼む」


 少女は訓練生たちそれぞれの得物に合わせ手本を見せる。訓練生たちはそれを真似て素振りを始めた。意外にも、アカツキが一番熱心に取り組んでいた。


 素振りを終えた後、一対一での訓練に移る。他の者の戦いを見ることも訓練だと告げた後、教官は最初にアカツキを呼ぶ。彼女はいまいち気乗りしない様子で前へ出る。


(あの格好見てると気が抜けるんだよな…いやいや、仕合での雪辱を果たさねえとな!)


 彼女は気合を入れなおすと、模擬戦用の武器を構えて教官へと踏み込む。


「おっらぁ!!」


 掛け声とともに武器を一閃。彼女の一振りは見事命中し、着ぐるみの教官は空中に放物線を描き、その後地面を転がった。そのことに一番驚いたのはアカツキ本人だった。


「当たった?ウソだろ?」


 しばらくすると教官は起き上がり、「良い攻撃だった」と言いながら戻ってきた。他の面々も興奮した様子でアカツキを褒めるが、彼女は困惑顔だ。


「では次、ブーレ」


 そうして次の訓練が始まる。外から見ていてアカツキは気づく。アイツの動きがとても遅い、と。着ぐるみの元の動きを真似ているのか。しかしブーレはそんな遅い動きにも慌てて対処しようと四苦八苦している。


(そういや、これは新人の訓練だったか)


 アカツキは他人の、特に同世代のことをきちんと見た事がなかった。改めて見ることを意識すると、彼らの動きがまた違って見えてくる。真剣な表情のアカツキを横目に見て、ユルグは懐かしいものを思い出すように、着ぐるみの中で口の端をゆるめた。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


「では、今日の訓練はここまでとする。お疲れさま」

「お疲れ様でした!」


 教官のあいさつに訓練生たちが返し、解散となる。ヴォルフィーネがユルグとともに酔竜亭へ帰ろうとすると、アカツキが呼び止めた。


「どこ行くんだ?宿舎はこっちだろ?」

「私とユルグは違う所に泊まってるから」

「えっ…まさか、コイツと同じところに泊まってるのか?」

「うん、隣の部屋に」


 話を聞きつけ、エナシェラが何やら興奮した様子でやって来る。


「あの、お二人はどういうご関係なんですか?も、もしかして、恋人だったり、するんですか?」

「こっ、恋人?!」


 アカツキが赤面するが、聞かれた当人たちは特に何でもないように顔を見合わせて答える。


「違うよね」

「そうだな。まあ、師弟関係と言ったところか」

「そう、なんですか…じゃあ、あの、教官はヴォルフィーネさんのことどう思ってるんですか?何だか親密そうだなって思ったんですけど!」


 尚も問うエナシェラに、ユルグは沈黙した。それを見て、ヴォルフィーネが落ち着いた口調で、


「エナシェラ。あまり立ち入ったことを聞かないように」


 とたしなめた。エナシェラは顔を赤くすると、反省の言葉を口にしておとなしく下がった。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 ギルドからの帰り道、ユルグは先ほど問われたことを考えていた。


(俺が、フィーのことをどう思っているか、か…)


 出会った頃は、珍しい種族の子だが、ただの救助対象。それ位にしか思っていなかった。なぜか懐かれているようだが、その内離れていくだろう、とも思っている。しかし、


(そういうことでは、ないのだろうな…)


 同じ宿で、同じ仕事で。時間を共にしてきて、彼女と一緒にいることを、彼は心地よく感じていた。それはリュウイチやアヤカ、ゴルドーに対する感謝や信頼から来るものとは、違う気がした。けれど、それが何であるかまでは。


(分からんな…)


 そんな彼を見ているヴォルフィーネも、気になっていた。ユルグは私のことをどう思っているのだろう、と。リュウイチからは見守ってくれと言われたが。それでも、聞いてみたくなった彼女は、彼に問う。


「ユルグは、私といて楽しい?落ち着く?」

「…。…どう、だろう。一緒にいて、心地よいとは、感じている」


 考えた末、彼は素直な気持ちを答えた。不器用なその言葉を、少女は嬉しさとともに受け取った。ヴォルフィーネは彼の方へ体を寄せ、ユルグは彼女の頭をそっとなでたのだった。






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