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番外編 英雄のその後

 トラップ迷宮ダンジョンで冒険者の命をおびやかす恐ろしい仕掛けの数々。 

 しかし「英雄」たちにとって、これらはユルグによって位置を明かされ、無力化され、驚異ではなかった。それが常だったため、罠など大したことはない、そう考えるようになっていた。だから、 


「あっ」


 気を抜いていた魔法使いが落とし穴に落ち、底のスパイクで串刺しになる。そんな最悪のシナリオを回避することは出来なかった。


「おいおい、何やって…おい!」


 様子を見て、慌てて助けようとした他のメンバーを毒矢の罠が襲う。苛立ったように「英雄」は自身の腕に刺さった毒矢を引き抜いて叫んだ。


「っんだよコレはぁ…!おい斥候スカウト、何やってんだ!」

「アンタらがむやみに進むからだろ!そっちが何やって…ぁぁあ、来るぞ!」


 混乱したパーティに、Bランクの魔物であるリザードマン達が迫る。毒で動きの鈍った獲物を、リザードマン達は容赦なく屠っていく。斥候だけは命からがら逃げ出し、事の次第を冒険者ギルドに報告した。


● ● ● ● ● ● ● ● ●


 帝都の冒険者ギルド、そのギルドマスターの部屋。壮年の女性が不愉快そうに机を指で叩きながら口を開く。


「英雄たちSランクパーティが、Bランクの依頼に失敗し全滅…笑えない冗談だ」

「冗談であれば良かったのですが。それと」

「まだ何かあるのか?」


 ギルドマスターは苦い顔で、副長である老紳士に問うた。


「ええ。彼らは途中の村で、依頼者たちから薬等の物資を徴収した、とのこと」


 それを聞き、彼女は一瞬絶句する。


「…まさか村人から、金払わず物をとった、ってのか…?」

「その様で。それと」

「おい、勘弁してくれ…で、何だ?」

「パーティに新規加入した斥候スカウトへの扱いが、相当に酷いものだったようです。あれが本当に英雄なのか、信じられない、と」


 ギルドマスターは空を仰ぎ、大きなため息をついた。


「俺も信じたくねえな…だが」


 確認は出来たんだろ?と彼女は副長を見る。


「ええ。彼らの亡骸を回収させましたが、所持ライセンス等から、確かに英雄の一行であったことが分かりました。また、事後処理に当たったパーティに、村人へ徴収した品分の金を届けさせました」

「ははっ、任された方は、なんだそりゃと思っただろうな…さて、けじめはつけにゃなるまい」


 そう言って立ち上がったギルドマスターへ、老紳士は声をかける。


「村へ行かれますか。準備はこちらに」

「理解のある副長がいて、俺ぁ幸せもんだよ。俺が出かけている間の事は任せた。それと」

「報告書をまとめ、今回のような事態への対応策の検討ですね。進めておきます」

「つくづくありがてえ…じゃ、行ってくる」


 そう言って、彼女は部屋を出て行った。


 以後冒険者ギルドでは、依頼者と冒険者の間に上下はなく、またパーティ内でも職種による上下関係はない、ということを定期的に知らせていくようになる。そして、相手に不当な要求をした場合、その者に厳しい処罰を課す、という条文がギルドの規則に追加されたのだった。

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