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18.ヒロインはどこ?



ヒロインだと思っていたナンシーが、ヒロインじゃない宣言をした。

全く攻略対象に興味を惹かれないし、悪役令嬢の私が好きだと言う理由らしい。


「それに、私の聖魔法はとても弱いんです。」

「ヒロインは強くなければいけないの?」


初めて聞いた。


「はい。王太子殿下が大怪我をされ、それを聖なる力で治すというイベントがあるのです。でも私にできるのは、擦り傷の手当ぐらいで……。」

「傷の手当?怪我ぐらいなら、私が治せるけど?」

「え?」

「それに殿下なら、欠損の再生もできるから、怪我で死んだりしないわよ。」

「ええ?」


ナンシーにそう言えば、ユーステアが今思い出したとばかりにパンと手を打った。


「そう言えば、そうでした。ヒロインの出番が無いですね。」


何を今更当然な事を。さすがに首は再生できないだろうけど、レイモンドなら、それもやりそうだ。


「私が首にかけているこのペンダントには、再生魔法が込められているから、私も2回までなら、すぐに回復するわよ。」

「えええ?」


幼い頃に贈られたペンダントは、年々レベルアップして、今ではよく分からない代物になってしまった。

魔法石だけでなく、木の部分は、魔竜の鱗、鎖はミスリル製だ。

一体どこまで行って、魔竜を狩って来たのだか……。


「み、見せて頂いても?」

「見るのは、良いけれど、触っては駄目よ。私以外の人が触れると命の危険があるから。」


ナンシーは、ぎこちなく唇の端を震わせながら、


「ミレーニア様は、守られているのですね。」


と、言った。そうね、そうとも言うかもね。



ナンシーと別れて、部屋に戻ってからも、気になる事をユーステアに聞いてみた。


「もしかして、悪役令嬢は、出番なしかしら?」

「そうなるかも。あの子次第ですね。」


ユーステアが言うには、もう一人のピンク髪、アイシア・シュルツは、兄様達に頑張って迫っているらしい。


でもなぁ、と思う。

マクシミリアンはマーガレットが大好きだし、ラッセルは、うちの船団の通訳士が大好き。

兄様は、やんちゃは私でお腹いっぱいと言っているので、大人しいナンシーは、好みかもしれない。

レイモンドは、もう、ね。自分で言いたくないな。


どの攻略対象も見込みなし。

あぁ、でも、もし、ナンシーが兄様とまとまれば、攻略した事になるのかも。



「ねぇ、ユーステア。もし、ナンシーが兄様を攻略できれば、私はどうなるの?」

「アンドレア様だけと言う事ですか?他の人は誰も攻略せず?」

「そう。」

「うーん。あのルートには、隠し要素があって、それをクリアすれば、別のラストに行けるようなんですが、やりこんでなくて、分からないです。

通常ルートの場合は、平民出身のヒロインを嫌う悪役令嬢が、彼女を傷つけようとした事が知られ、婚約破棄の上、領地に幽閉されます。」


領地幽閉ぐらいならまだイイかもしれない。気になるのは、隠し要素の方かな。

これが死亡ルートになるのなら、隠れたままで、あって欲しい。



******



リサイクル事業も、問題が片付いて、事業は、順調にまわっていった。

そして、学園生活も2年目となった。


今日は、久しぶりに港にやってきた。夏の日差しが、海面に反射して、目に眩しい。

東の大陸から船が帰ってきたのだ。


「お嬢様!」


巨大な船から、鈴なりにぶら下がった男達が、私の姿を見つけて、綱を伝って降りてくる。

いつ見ても器用な事だ。


「みんな、怪我はない?ご苦労さま。」

「お嬢様、相変わらず、女神様のように綺麗ですね。」


ゴロツキ紛いの海の男達は、意外に紳士で口が上手い。


「相変わらずね。どう?何か変わったものは手に入った?」

「まぁ、いつもの売れ筋商品と、変わった所では、これかな?」

「それは何?」


檻に入れた白い毛の塊を船長のダンがぶら下げて見せる。よく見ると、動いているようだ。


「生き物なの?」

「そう。」

「なんと言う生き物?」

「わからん。」

「え?」


ダンが言うには、帰路の船の中に、ある日突然転がっているのを発見されたらしい。怯えて、毛玉になったまま、食事もしないと言う。


「でも、食べないと死んでしまうわ。」

「んー。そう思うんだがな、人が近づくと、噛み付くんだ。」

「そうなの?」

「ああ、それで、どうしようもなくてな。お嬢様は、変わったものが好きだし、回復魔法が使えるだろう?

殺しちまうよりは、お嬢様にお任せしたほうが良いかと思ったんだ。」


人をゲテモノ好きのような言い方を。


「そうね。ねぇ、この子、檻から出しても良い?」

「ああ。」


檻をテーブルの上に置き、扉を開けた。


「出ておいで。」


毛玉は、震うばかりで、出てこない。手を近づけると、威嚇だろうか、低い唸り声をあげた。


「私は、お前を傷つけたりしないわ。食事もしなければ、水も飲んでいないのでしょう?自分でもこのままでは、死ぬとわかっているわよね?」


何故か、この生き物は、人の言葉を理解すると確信していた。


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