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13.2人のヒロイン



講堂から出てくる新入生を見るユーステアの目が厳しく光る。この中にお嬢様を貶めるヒロインがいるはずなのだ。見つけて対策を立てなくてはならない。


だが、そんな彼女を混乱させる事態がおきた。

見つけるための特徴は、ピンクの髪。だが、それが2人もいるのだ。それもどちらも顔立ちが可愛いヒロイン顔。

すぐに調べてみたところ、どちらも男爵令嬢で、ゲームの設定通りだった。ゲームでは、ヒロインは自分で名前をつけるし、男爵令嬢としか出てこないので、名前では確認できない。


早速その一人が、アンドレア様と接触したようだ。もう一人は王太子に熱い視線を向けていたと報告があった。


学園に放ったお嬢様の、目と耳は、全員で20名。新入生に8人。2年に7人、3年に5人。来年は入れ替わりに5人入ってくる予定だ。

彼らの報告によると、アンドレア様は、たいそうご不快なご様子だったとの事。出会いイベントとしては最悪だ。


ゲームでは、このアンドレア様との出会いは、ヒロインの素朴な愛らしさを感じるイベントのはず。

優秀だが、少し頑なな妹にもこんな可愛らしさがあればと彼は感じる所なのだ。

それなのに不快?


ヒロイン何やってるんだろう?


悩みながらも、これは幸先がいいと、思うユーステアだった。



******



クラス分け通りに教室に入り、黒板に貼られた席に座ると、隣にピンクの髪の少女が座った。


─ピンク、という事は、この人が主人公?


「こんにちは。」


一年間隣り合わせなのだから、挨拶は必要だろう。

それなのに、その少女は、怯えるようにミレーニアを見つめるばかり。


「私は、ミレーニア・ドルイド。あなたは?」

「いや!虐めないで!怖い!!」


は?名前を名乗っただけなのに、何なの?


そのまま、泣き出して、教室を飛び出して行った。


当然、ミレーニアは、教室中の目を引くことになってしまい、呆然と立ち尽くす。ユーステアの言うゲームの強制力ってこれ?でも出会いからとは聞いていない。


「ドルイド様、大丈夫ですか?」

「あ、ああ、ありがとうございます。突然の事で驚いてしまって。」


前の席に座る令嬢が声をかけてくれた。


「分かりますわ。私も聞いておりましたが、ドルイド様は名前を名乗られただけですのに、どうされたのでしょうか?」

「会ったことの無いご令嬢なので、私にも……。」


周りには、私を気の毒に見つめる目、批判的な目、面白がる目、様々な視線に晒されて、私こそ部屋から出ていきたいぐらいだ。



結局、授業が始まっても、彼女は戻って来なかった。



翌日から、彼女は、教室の一番後ろの空いた席に座り、私の隣は空席になった。


彼女の名前は、ナンシー・コーツ。弱い聖属性の魔力があり、平民生まれながら、コーツ男爵家に養子に入った。

性格は大人しいと言うよりも暗め。人と話すのが苦手で一人でいるタイプ。

ユーステアに聞いた主人公とは、随分性格が違う。


人が苦手ならそっとしておいてあげたい所だけれど、問題は初日の怖い発言。

高位貴族で王太子の婚約者である事から、周りからは遠巻きにされがちなのに、あの発言で、クラスの半分が私を怖い人間と思い込んでしまった。


これはちょっと、自分に非がないのにと思うと不愉快だ。けれど、コーツ嬢に近寄ろうとすると、ブルブル震えて涙ぐむし、周りの人間は、私から守ろうと彼女を囲む。



「困ったわね。」

「ミレーニア様、苦労なさいますわね。」


彼女は、初日の顛末を知っている、前の席の女性。

アマンダ・グレン伯爵令嬢だ。彼女とは気があって、昼ご飯を一緒に食べたりしている。


「口も利いた事ないのに泣かれてしまっては、私が悪者にしか見えないわよね。」

「私もミレーニア様の仲間と認定されてしまったようで、逃げられてしまいますの。」

「これ以上無理をすると、学園にも出てこられなくなるのではと、それも心配なのです。」

「それもありえますわね。」


「私が近づいてみましょうか?」


食堂の隣のテーブルから声がかかる。


「あら、マーガレット様。」

「私ならクラスも違いますし、きっかけを作ってみますわ。」

「お願い。直接話せるようになると嬉しいけど、嫌う理由だけでもわかるとありがたいわ。」

「お任せ下さいな。」


ここはマーガレットに任せよう。



******



マーガレットは、近づく相手をまずは遠目に確認する。ピンクの髪は、自分のクラスにいる新入生と同じだが、性格は随分違うらしい。


「彼女に近づくのは簡単なのにね。」


マーガレットが化粧品を扱っているのは、貴族令嬢ならば知っているはず。話のきっかけはやはり化粧品だろうと思う。



コーツ嬢は、図書館の隅で静かに本を読んでいた。

マーガレットが近づく前に、その机に男子学生が近づいた。


「この席、よろしいですか?」


─確か、宰相様のご子息ね。ラッセル・ワルドー様。


ナンシーは、慌てて下を向くが、駄目だと言うこともできないようで、ゆっくりと頷いた。


「コーツ令嬢。失礼ながら、少しよろしいですか?私はラッセル・ワルドーといいます。」

「な、なんで、しょ、しょうか?」

「ドルイド令嬢を批判されるのは、何か理由がおありですか?」

「わ、私は、批判、等……」

「近くに寄るのも恐ろしい方だと、そのように周りの方に伝えていると、言われています。」

「そ、そんな!私は、そんな、つもりでは……。」

「あなたは、彼女に何か嫌がらせを受けたと言うのですか?話をされた事が?」

「いいえ!いいえ、1度も。」

「では、何故ですか?既にドルイド令嬢は、学園内で悪辣な令嬢との評価をされています。」

「私の、せいなの、ですか?」

「そうです。」


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