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12.15歳になりました



春、桃色の花びらが舞い散る中、私は、学園の門を潜った。今日から3年間の学生生活が始まる。

桃色の花は、ユーステアの知る桜という花に似ているらしく、この国では、春を告げるブロッサという花木として有名な花だ。



幼い頃、天使のようだと言われた見た目は、成長し、可愛いよりも綺麗と言われるようになった。

意思も、好奇心も強い目がそう言われる所以かもしれない。


そっと舞い散る花びらに手を伸ばし、決意も新たに手を握りしめる。

でもレイモンドが浮気男になる姿が全く想像できない。


─まぁ、良いかな。とりあえず学生を楽しもう。


前世には学園等無かった。私は少しこの学園生活に浮かれているようだ。



学園は寮が完備されていて、希望すれば3年間を寮で過ごす事ができる。

ただ、高位貴族の場合、屋敷から通学するものが多い。通学時の危険よりも寮生活での危険を重視する親が多い為だ。


我が家は兄様も寮生活をしているので、私も寮生活をする事になった。子どもがいるので、ユーステアは、昼間だけの護衛となり、夜間はほかの者が護衛につくことになっている。


護衛といえど、昼間近くにいることは許されない。目の届くギリギリ離れた場所から見守るだけだ。

生徒の安全は、学園が責任を取ると言うことなんだろう。



「新入生は、こちらに進んで下さい。」


2年生の制服を着た生徒達が、新入生を講堂へと案内している。その中に兄様の姿を見つけた私は、足早に近づいた。


その目の前に新入生の女性が倒れ込んできた。

兄様がすかさず抱きとめて、支えるが、兄様に凭れてぐったりとしている。


「大丈夫ですか?」

「衛生担当を呼ぶから大丈夫だ。おまえは講堂に向かいなさい。」

「はい。」


少女の顔を見ると、可愛らしい顔で、舞い散る花と同じ色の髪だった。顔色は悪くなさそうなので、大丈夫だろう。私は兄様に頷いて、人の列について歩いて行った。



******



ブロッサの花の中、妹のミレーニアは誰よりも美しかった。さすがは自慢の妹だ。


風に微かに揺れる金髪は、光を弾き、知性を湛えた青い瞳は、今日の日を楽しんでいるのか、キラキラとしている。

あのほっそりとした姿で魔法剣を自在に操るなんて、誰が想像するだろうか。



列を進んでくる妹に周りの注目が集まる中、私に気づいたミレーニアが嬉しそうに笑顔を零す。



だが、私達2人の間に邪魔をするように新入生が割り込んで来た。倒れたので病人のように見えるが、特に顔色も悪くない。

妹を先に行かせて、衛生担当を呼んだが、何故かしつこく私の名前を聞いてくるのが、不愉快だった。


「お願いします。後日お礼がしたいので、お名前を。」


目に涙を浮かべながら言うので、隣に立つ衛生担当は、顔を赤らめ、同情するように私の名前を教えてしまった。


「この方は、アンドレア・ドルイド様、生徒会の副会長ですよ。」

「そうなのですね。助けて頂き、ありがとうございます。私は、アイシア・シュルツと申します。」


ずっとしがみついていた手がやっと離れて、ほっとした。


「入学式に遅れるので、急ぎなさい。」


そう言って衛生担当と共に行くのを見送ったが、振り返る彼女の目が何故か体に絡みついて来るようで、しばらく気持ち悪さが収まらなかった。



******



講堂の中は広く、そこここに昼のお茶会で見知った顔があった。


「お久しぶりね。マーガレット様。」

「ミレーニア様。先週はありがとうございました。」


彼女は、タスニア子爵の次女で、私の商団の働き手の1人。例の化粧品を扱う商店はタスニア子爵のものだった。現在では、シルバードラゴンマークの化粧品として有名になっている。

彼女は、そこで調香師として力を奮っている。



「新しく頂いた素材ですが、素晴らしい香りが作れましたわ。とても官能的で、夜の化粧水として売り出したいと思います。」

「まぁ、そうなの?ではまた大当り確実ね。」

「はい。来週ぐらいにはサンプルをお持ち致します。」

「楽しみにしているわ。」



小声で会話を交わす。もちろん会話中には音遮断の結界を忘れはしない。


「3年間、よろしくね。」

「光栄です。」



結界を解くと、壇上では、来賓の挨拶が続いていた。学園長の挨拶も終わったようだ。


急に周りの新入生のざわめきが大きくなった。

特に女生徒の。


壇上に上がったのは、レイモンド。今では私より20センチ以上背が高く、整った顔は、まるで美術品のようだ。


「私は、生徒会長のレイモンド・ハスラーです。入学おめでとうございます。これからの手続き等について、私から説明致します。」


それからレイモンドは原稿を読み上げるかのように、ペラペラと挨拶を述べ、壇を降りていった。

周りからはほぉと言うため息があちこちから漏れる。彼のあの美貌は見慣れた私には今更だが、他の人には強い印象を残すらしい。


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