そもそも地下2階までしかないのはダンジョンと呼べるのか??
勇者一行はピヨ市の隣、ピヨピヨ市に来た。
「あー腹減ったな…」
しかし、財布には金がなかった。
俺がアイに聞く
「金か……やっぱりハロワか?」
『他にはダンジョン経営が最近の流行りですね』
「ダンジョン経営?なんだそりゃ」
『迷宮を構築し、侵入者から資源を回収する経営型コンテンツです』
コータローが腕を組む。
「つまり、来たやつを利用するってことか」
エルフ子ちゃんの目が輝く。
「お客さんが勝手に来るの!?いいじゃん!」
「つまり、デパ地下、……ってことか?」
「私、ケーキ屋さんやりたい!」
『デパ地下風コンテンツを最適化します』
【商業施設生成】
光の粒が集まる。
目の前にはデパートが現れた。
入口には手書きの看板。
【ダンジョン型デパート 本日オープン】
ぞろぞろと客が入っていく。
角の生えたの、牙のあるの、羽ばたいてるの。
「……客層どうなってんだ」
「そりゃあダンジョンだからな」
エルフ子ちゃんがぱっと振り返る。
「制服は!?」
【店員用装備支給】
コータローとエルフ子ちゃんの服が、ぽんっと変わる。
「かわいい!」
白とピンクの、やたらあざとい店服。
コータローが真顔で言う。
「なんで俺まで」
『ケーキ屋ユニットを配置します』
ショーケースには、禍々しい色のケーキが並ぶ。
【燃えキュンタルト(ハズレは即死)】
【メイドの土産ケーキ(とにかく即死)】
モンスター客が列を作る。
「即死しないやつありますか」
「ないです!」
エルフ子ちゃんが元気に答える。
「よし、いい感じにダンジョンっぽくなってきたんじゃないか?」
『売上に応じて味方の戦力が強化されます』
「経営と難易度が連動するのか」
コータローが鋤を握る。
「これ、忙しくなるやつだな」
しかし、客はぱったりと途絶えた。
「まあ高確率で即死じゃあな」
「簡単に魔物退治できると思ったのに」
エルフ子ちゃんも肩を落とす。
俺が二人を煽る。
「こういう時こそ特訓の成果の見せどころだろ。販売とは戦いだ!」
エルフ子ちゃんの目が燃える。
「きたあああ!!ここで店員エルフ子ちゃん、覚醒の気配いいい!!」
コータローも隣で鋤を振る。
「よいしょー!」
エルフ子ちゃんがショーケースに身を乗り出す。
「デパ地下運営とは何かァァ!!!それはッ!!!欲望を餌にした経済という名の迷路だああ!!!」
「本日大特価ぁぁ!!!ちゃんとした商品なら5000Gはくだらないクオリティいいい!!」
そこに魔物が一匹、おずおずと顔を出す。
「来たあああ!!挑戦者・魔物!!命を賭けたデスマッチにエントリーだあああ!!」
「ちゃんとしたのあります?」
「ありません!!」
エルフ子ちゃんが即答する。
「やっぱり!?」
「だがそれがいいいい!!リスク込みだからこその破格ううう!!」
魔物が財布を出す。
「じゃあ……燃えるやつ一個」
チャリン。
「売れたああああ!!記念すべき一個目えええ!!」
魔物はイートインコーナーへ。
「生きてたらまた来てね!」
ボンッ。
小さな炎上。
「逝ったアアア!!」
エルフ子ちゃん、ガッツポーズ。
コータローも隣で土作りに勤しむ。
「来年も豊作だ!」
『売上を確認。味方戦力が上昇します』
爆発が呼び水となり、押すな押すなの大行列。
「なんで!?」
『“話題性”が評価されました』
俺は感心して頷く。
「これが噂の炎上商法ってやつだな」
モンスターたちが我先にと詰め寄る。
「一番危ないやつくれ!」
「爆発強めの!」
エルフ子ちゃんが叫ぶ。
「嬉しい悲鳴いいいい!!」
『売上上昇により、更なる強化が行われます』
コータローの体がピカッと光る。
「……なんか、力が湧いてきた」
鋤を軽く振る。
ズドンッ。
畝に大穴が開いた。
「強くなりすぎだろ」
「ダンジョン経営ってすごいね!」
「でも良いのかコレ……。そこら中で爆発してるぞ」
俺は電卓を叩く。
「世の中金だけが正義だ、もっと売れ!責任は全て俺が持つ!」
そのとき。
カウンターをバンッと叩く音。
「おいコラァ!!」
現れたのは、おそらく中ボスの魔物。
「さっきのケーキ、爆発したんだけど!?」
エルフ子ちゃんが前に出る。
「理不尽クレーム発生いいい!!果たして難癖クレーマーに打ち勝てるのかあああ!!」
「返品できる!?」
「出来ません!」
エルフ子ちゃんがバッテンマークを作る。
おそらく中ボスの魔物が詰め寄る。
「おい、責任者なんとかしろ!!」
俺が一歩下がる。
「社員が勝手にやったことだ」
「逃げたぞこいつ」
コータローが前に出る。
「……今から俺が責任者だ」
「お前が責任者か!!」
おそらく中ボの魔物が殴りかかる。
コータローは鋤を構える。
「よっこらせ!」
ボコッ。
おそらく中の物の頭にきれいに入る。
一瞬の静寂。
「……あれ?」
おそ中の物がふらつく。
コータローがもう一度、軽く振る。
「っこらしょ」
ボコッ。
おそ中が、きれいに畝に埋まる。
エルフ子ちゃんが叫ぶ。
「問題は隠蔽して解決だあああ!」
『売上を確認。味方戦力が上昇します』
「なんで今ので売上上がるんだよ」
そこへ、デパ地下のオーナーが現れる。
「コンプライアンス違反なんで出てって」
コータローが小声で言う。
「俺たち、追い出されたのか?」
「取り敢えず売上金は手に入ったから勝ったようなもんだろ」
エルフ子ちゃんが顎に指を当てる。
「……ところで『こんぷらいあんすいはん』てなに?」
「知らん。金平炊飯みたいなもんだろ」
「おいしそうだね!?」
『レシピを提示します』
お惣菜コーナーで金平ごぼうを買って帰った。




