表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/13

第6話 闘争(2)

航宙観測局からの報告を受け、最高安全保障会議が緊急招集された

最高安全保障会議 特例機密審議議事録


1. 会議概要


日時: 星暦[黒塗り]年[黒塗り]月[黒塗り]日 10:00~12:00

場所: 中央政府総省 地下特別評議場(最高防衛レベル区画)

議題: 特異辺縁領域における超巨大質量移動体の観測結果、および安全保障上の防衛方針策定

出席者: 最高評議会議長、防衛省長官、統合参謀本部総長、航宙観測局長、および国家安全保障局幹部


2. 審議内容および発言要旨


① 現状の認識と脅威度判定


航宙観測局長より、カスケード探査ポッド10機が消滅直前にリレーした「個体α」および「個体β」に関する観測データの詳細が報告された。全長40万~50万キロメートルに及ぶ二大質量の物理衝突、およびそれに伴う局所空間の歪曲についての分析結果が提示された。


〇 統合参謀本部総長の見解:

提示された質量運動(いわゆる高速の打撃および取っ組み合い)のエネルギー総量は、現行の戦略級熱線兵器の全斉射すら遥かに凌駕している。既存の宇宙艦隊、要塞惑星等の防衛インフラは、当該移動体が「単に通過する際の余波」だけで完全に壊滅する。戦略的な「迎撃」もしくは「破壊」の選択肢は最初から存在しない。


〇 防衛省長官の見解:

最も懸念すべきは、今回の事象が「超兵器の起動」などではなく、極めて生物的かつ原始的な「闘争(喧嘩)」に過ぎないという点である。これが仮に通常海域、あるいは居住星系近傍で行われた場合、人類の生存圏は一瞬で消滅する。


② 情報統制と「一般」への配慮


当該データの取扱について、徹底した秘匿の必要性が全会一致で確認された。


〇 国家安全保障局幹部の見解:

これまでに流布している「宇宙毛玉」「宇宙肉球」といった噂は、あくまで一般が極限状態の錯覚やオカルトとして消費しているからこそ、社会の安定が保たれている。もし観測局のRAWデータ(40万キロメートル級の二大個体が殴り合っていた事実)が一般に漏洩すれば、防衛不可能な絶対的絶望感から、統治機構の崩壊を招きかねない。


〇 最高評議会議長の裁定:

一般に対しては、事前の公表通り「苛烈な空間磁気嵐による探査機全損」の説明を維持する。データのクラスA機密指定を「永久封印(クラスOmega)」へ引き上げ、アクセス権を最高評議会直属の幹部のみに限定する。


3. 安全保障戦略の改定(決議事項)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

施策項目〔絶対防衛線の後退〕

├具体的内容: 当該領域の境界線ボーダーからさらに50宇宙光年を手前に「絶対不可侵航路帯」を設定し、一般の商船・貨物船の進入を物理的に遮断する。

└担当部局: 防衛省 / 航宙検査局

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

施策項目〔擬態技術の標準化〕

├具体的内容: 探査艦レガンツィアおよび民間船等における過去の遭遇事案を検証し、「刺激しないための隠密(遮蔽・消光)」が唯一の生存手段であると定義。全軍艦艇のステルスシステムを再設計する。

└担当部局: 統合参謀本部

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

施策項目〔観測網のパッシブ化〕

├具体的内容: 該当宙域への能動的探査(レーダー照射、無人機派遣)を原則として控える。以降は「刺激を避けるため」の完全受動パッシブ観測を主体とする。

└担当部局: 航宙観測局

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


4. 総括


本件における「個体α」「個体β」は、人類にとっての対敵勢力エネミーではない。それは自然災害、あるいは宇宙そのものの物理法則の顕現として扱うべきである。

我々にできることは、彼らの「闘争の場」から静かに身を隠し、その気まぐれな視線が一般の居住星系へと向かないよう、ただ息を潜めることのみである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ