本当の私
それから半年後、南さんと恋仲になった。
南さんも、ぼんの姿は見えない。
でも、ぼんは南さんの頭の上が好きみたいで、よく乗っていた。
それがなんだか微笑ましい。
春吉:マナって、すごく優しい笑顔だよね。
ドライブデート中に寄ったサービスエリアの食堂で、南さんが言った。
マナ:え、そう?
春吉:うん。すごく好き。
マナ:…!
ボッと顔から火が出る。
南さんは、思ったことを口に出すタイプだ。
春吉:…ね、き、今日マナの家行ってもいい?
マナ:え゛。
春吉:もももちろん無理にとは言わないよ!
––家、今どんなだっけ…。
普段から綺麗にはしてるけど…
冷蔵庫は酒まみれ。缶のゴミも溜まってる。
マナ:えーと…
ぼん:どっぼ。
ぼんが南さんの頭の上からこちらを見つめる。
––今まで、私はなんでも彼の趣味に合わせて、彼が嫌な思いをしないように完璧な私を作ってきた。酒なんて飲んだことない、みたいな私を作って、気を遣って…
マナ:い、いいよ。ちょっと散らかってるけど…
春吉:ほ、ほんと!?やった!
––ちゃんと、私を見てもらおう。
マナ:ぼん、勇気くれてありがと。
私は彼に聞こえないよう、小声で言った。
ぼん:きゅ!
夜、私の家に着いた。
春吉:おじゃましまーす!
マナ:へへ…ど、どうぞぉ…。
緊張する。とても。
もしかしたら、今日、フラれるかもしれない。
春吉:え、綺麗じゃん!散らかってるって言ってたのに!
彼は剥き出しの空き缶のゴミ袋を見つけた。
––うっ。フラれる…
春吉:あ、マナお酒飲むの?
マナ:え?あ…うん。ビールが好きで…。
春吉:え、俺も好きだよ!じゃあ、今度一緒に飲み行こう!美味しいクラフトビールが飲めるとこ知ってるんだ。
マナ:…え?
春吉:え、嫌だった?
マナ:違う!あの…引かないの?
春吉:え?なんで?
マナ:こんな…酒飲みの女…。
春吉:え、むしろ好感!マナって、お酒飲まなそうだったし、むしろそういうの嫌いそうだったから。
マナ:こ…これがほんとの私…です。
春吉:そっか。うん、好き。
マナ:…ぅぅ…ありがとぉ…
春吉:えっ、なんで泣くの!?
私、こんな泣き虫だったのか。
マナ:…これから、一杯どっすか?
私は冷蔵庫を開けた。
ビールが6本。パック買い。
春吉:あははっ!いっすね、賛成ー!
私達は、缶ビールで乾杯した。
おつまみは、イカソーメン。




