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Pandora   作者: 夕の満月
第一章 旅人
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祟り神③

 町に戻った僕達は手頃なお店を回っていく。余計なものをすぐに買うアイラは最近、シズクをだしに手を伸ばすので注意しながら必要なものを買い揃える。


「これなんてシズクちゃんに良さそうだし、ついでに私のも買っちゃおうかなー」


「はい戻してきてね」


「この前、似たようなの買ってましたよね」


 不満をもらしながら、手に持ったよく分からないものを棚に戻していく。途中、お店の人に動物の連れ込みは困ると声をかけられたため、シズクからユラを預かり店外に一人放り出された。シズクにアイラのことは任せてきたが、僕が外に出ると言った時、アイラに浮かんだ嬉しそうな顔に不安が残る。


 待つ最中、近くにテーブルと椅子を発見し、適当な飲み物で喉を潤す。暇になり、シズクがいつもしているようにユラの目の前で指を回すが、興味がなさそうにそっぽを向かれてしまった。対応の違いに憤りを感じていると、前方から女性が息を切らしながら走ってくるのが見え、何かあったのではないかと考える。


 座っていた椅子の付近で、女性は足をもつれさせ、テーブルにわずかな振動を与え手をついた。その拍子に上に乗っていた飲み物は倒れ、僕が着ていた衣類の裾を薄い茶色に染め上げる。

 女性は慌てた様子でお金を払うといってきたが、この程度なら問題にもならないと断りを入れた。納得のいかない様子で女性がその場に悩み始めた所に、買い物を終えた二人が帰ってくる。


「んー? どうしたの?」


「私が彼の飲み物をこぼしてしまった所為で‥‥」


 裾に目を向け話す女性に、流れを察したのかアイラも気にしなくていいと、声をかけてくれた。それでは困ると話を続け、汚れた部分だけでも落とすと女性の家に招かれる。


 根負けした僕達は女性の家に足を運ぶことにした。向かう道すがら、先ほどの慌てて走っていた女性の姿を思い出し理由を尋ねる。

 どうやら旦那さんがいなくなったようで探していたようだ。こんな事をしている場合では無いのではないかと話を遮るが、一度落ち着いて考えてみると居なくなったのは今日の朝というで、家に帰っているかもしれないから気にしないでと言葉をかけられた。


 家につくが旦那さんの姿は見えない。出来るだけ女性の不安を煽らないよう、注意を払う。その様子に気が付いてか、女性は洗い物を進めながら話を進めた。

 昨夜眠りにつく時までは姿を確認し眼が覚めると忽然と消えた彼に、この町で稀に起こる神隠しにあったのでは無いかと心配したようだ。


 その言葉に、昨日湖で見かけた不思議な出来事を思い出す。見たままに女性に話した所、青ざめた顔をして俯き黙ってしまった。シズクも不安な顔をしたが女性を気遣ってか表情を変える。しばらく時が経ち、干してあった僕の服を回収しお礼を告げた。

 もし見かけたら知らせてほしいと写真を見せられ、同意の言葉をかけ家を後にする。僕とシズクが家を出るのを確認しアイラが女性に呟く。


「気がつかれないといいね」


 その言葉を聞いた女性は驚いた表情を一瞬浮かべ、すぐにさっきよりも蒼白な顔で、家から出ていくアイラを見送った。


 遅れて出てくるアイラを待つ間に湖の上に浮かぶ、この家のものであろう小型の船を見つけた。シズクと機会があれば三人で船にでも乗って見たいねと話す。シズクも同意してくれたところで家から出てくるアイラに合流し、同じ話をふるが少し元気の無い返事で頷いてくれた。


「あの船は、嫌だけど」


 小さな声で発したアイラの言葉は誰に聞かれることなく、その場に置いていかれた。

 すぐに普段の調子に戻ったアイラは笑顔で二人を追い抜いて歩いていく。


「追いていくわよー」


 コロコロと変わる表情に戸惑ったが、いつものことだと心に言い聞かせ、先行くアイラを追いかけた。

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