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Pandora   作者: 夕の満月
第一章 旅人
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虚構の怪物①

 起伏の激しい道を進む。途中、道の端に止まる荷馬車を見つける。横を通りかかると、荷馬車の持ち主であろう男が困った顔で立ちすくんでいた。声をかけると、溝にタイヤがはまったらしく途方に暮れているとのことだ。


 僕達は顔を見合わせ、男と同じようにどうすべきか悩んだ。男に馬の手綱を握ってもらい後ろから荷台をできる限り全力で押す。すると荷馬車は重い腰を上げ、軋む音と共に進むべき道筋へとゆっくり体制を立て直していく。


 その様子を男と一緒に喜び感謝され、僕達も再び先へ進むべく別れを告げた。しかし男に呼び止められ、同じ方向に向かうのなら乗っていきなさいとの提案に、乗車させてもらうことにする。


 普段より流れるのが早い景色を眺め、荷物と一緒に右へ左へと揺らされた。ガタガタと襲いくる振動に、初めは不快感があったが時間が経つにつれ、慣れたのか段々と心地の良いものへと変わっていく。


「うーん、これは楽ね!」


「そうだね」


 大人しくしていたシズクの方に目をやると、疲れていたのか眠りについていた。ユラも睡眠をとるシズクを見てか僕の肩へと飛び移っている。そんなユラに気が付いた男がこちらへと声をかけてきた。


「珍しい生き物ですね」


「この辺りではあまり見かけないですけど、僕達が通ってきたところでは結構見かけましたよ」


 男は最近こちらの大陸に船で渡ってきたらしい。見慣れない生き物であるユラを頻りに眺め、僕達が見てきたものへの興味から、話を熱心に聞いていく。


「私も、まだまだ見たことの無いものが、沢山ある見たいですね。もっと活動範囲を広げてみようかな」


 行商人としてこの付近を回っていたみたいで、売り物には前にいた大陸のものを使っているようだ。君達にとっては、珍しい物もあるから見てみなさいと、荷物に視線を巡らせる男に促され手を伸ばす。


 確かに物珍しいものが並んでいた。使い道のよくわからない物もあり、隣で目を輝かせて次々と視線を移すアイラには、先に釘を打っておく。


「買わないからね」


「まだ何もいってないわよ!」


 男は笑い声をあげ、値引きも考えると伝えてきたが丁重に断りを入れる。ふと少ない積荷の量に違和感を感じたずねて見た。


「ああ、捌いた後ってのもありますが、主な売り物は野菜とかの種なのでそこまでの量にはならないんですよ」


 環境の違いとかもあるのでは無いかと聞いてみたが、こちらの環境に合わせて、種自体が作り変えられたものを持ってきているらしく、心配はないそうだ。納得の意を示し再び振り動かされる感覚に身を委ねた。


 それを聞き、何か見つけたアイラは面白いわね、と一言呟きなにか決心した顔で、荷物あさりを辞め風景を見守る作業にもどっていった。

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