祟り神②
付近に日の明かりが巡った頃、首元にフワフワとしたくすぐったさを感じ、眼が覚める。どうやらユラが首元で眠っていたようだ。よく眠れたようで気分はすっきりとしていた。ふと違和感を覚え、周囲を見わたしアイラさんとナギさんの姿が見えないことに気がつく。
霧に攫われてしまったのではないかと不安に苛まれたが、どうやら二人で剣の稽古をしているようだった。耳に響く金属の音と、動く影が木々の向こう側から時々、顔を覗かせていた。様子を遠目に眺めながら、邪魔をしないよう静かに身を潜める。
「ナギ君、甘いよ」
振りかざした剣は簡単に弾かれてしまった。横を薙ぐ用に剣筋がこちらに伸びる。後ろに身を引きそれを躱す、そのまま右手を下から左上に動かし胴体を狙うが、先ほど避けた剣が踵を返し受け止める。
受け止められた剣はそのまま押し込まれ地にめり込みを付け動かすことができない。抑えられ動きの遅れた隙を突くようにアイラの左足が空を切り僕の肩を狙う。
剣を手放しそれを回避するが、再び鋭い蹴りが舞い胴体に痛みが走る。痛みに倒れ手を地面についたところ、僕を見下ろすアイラに剣を突きつけられた。
「ここまでかなあ」
「やっぱり、全然かなわないな‥‥」
「ふふん、私が強すぎるせいだし、しょうがないよ」
「むー」
「まあ‥相手の動きをどう止めるか、なのかなあ」
「止める‥」
「それと敵わないと思ったらすぐに逃げる!手を出したとしても一撃で無理だったらあきらめたほうが良いかもね」
「アイラ先生ご教授ありがとうございます」
ふざけ気味に言ったのだが気を良くしたアイラは鼻唄を歌いながら満足そうな顔をこちらに向けてきた。
「こうして、美人で可愛く最強のアイラ様に負けたナギは、自分を高めるべく武者修行に‥」
「勝手にナレーションつけるのやめてくれる?」
たまに稽古を付けてもらうがアイラとの差が、全く埋まる気配をみせてこない。シズクもそろそろ起きる頃だと思い、寝ていた付近を眺めると、すでに起きていたらしく黒い影が忙しなくする姿が見えた。
ただよってくる香りに空腹が刺激される。食事の用意を済ませていたらしく、こちらの音が止んだのに気が付いたシズクが声をかけてくれた。
「おはようございます。ご飯がもうすぐ出来るので少し待っていてください」
「シズクちゃーん、おっはよーう」
食事を済ませた僕達は日用品の買い出しの為、霧の町に歩みを進める。




