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君と出会う、もう一度  作者: 梅干し


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2/8

四人で過ごす日々

遥が転校してきてから、数日が経った。

最初は少し緊張していた遥だったが、少しずつクラスの雰囲気にも馴染み始めていた。


昼休み。

晴、蓮、美咲の三人は、いつものように机を囲んで昼食を食べていた。

「晴、今日も部活だよね?」

美咲が聞く。

「うん。今日も練習だな」

「蓮も行くよね?」

「もちろん。俺、晴より先に行くからな」

「それ、いつもじゃん」

「そうだっけ?」

「そうだよ」

そんな二人のやり取りに、美咲が笑う。

そのとき、少し離れた席にいた遥と目が合った。

「あ…」

美咲が声をかける。

「遥ちゃん」

「ん?」

「よかったら、一緒にお昼食べない?」

遥は少し驚いたように目を丸くした。

「私もいいの?」

「もちろん!」

蓮も笑って手招きする。

「もう四人で食おうぜ!」

「…ありがとう」

遥は嬉しそうに笑って、三人のところへやってきた。

「じゃあ、いただきます」

「いただきます!」

四人で机を囲んで昼食を食べ始めた。

最初は少しだけ会話がぎこちなかった。

「遥って、前の学校でも写真撮ってたの?」

蓮が聞いた。

「うん。写真撮るの好きなんだ」

「へえー。どんな写真撮るの?」

「自然とか、動物とか。あとは、人が笑ってるところ」

「すごくいいね!」

美咲が頷く。

「今度、撮った写真見せてよ!」

「うん。いいよ」

晴も会話に加わる。

「俺も自然とか好きだよ」

「本当?」

「うん。休みの日に見に行ったりする」

「じゃあ、よかったら今度おすすめの場所教えて」

「もちろん」

晴が笑う。

遥も自然に笑い返した。

「なんか、遥ちゃんって最初より話しやすくなったね」

美咲が言う。

「そうかな?」

「うん。最初はもっと静かな子かと思ってた」

「私も最初はちょっと緊張してたから」

「そうだよね」

「今はどう?」

晴が聞く。

「今は……」

遥は三人を見る。

三人も遥を見る。

「楽しいよ」

そう言って笑った。

こうして四人の間に、自然な空気が流れ始めていた。


昼休みが終わり、午後の授業が始まる。

そして放課後。

「じゃあ、俺ら部活行くわ」

蓮が鞄を持つ。

「うん。頑張ってね」

遥が笑う。

「晴も頑張って」

「うん。ありがとう」

晴も笑った。

美咲はマネージャーとして、二人と一緒に体育館へ向かう。

「じゃあ、遥ちゃん。また明日ね」

「うん。また明日」

三人が体育館へ向かっていく。

遥はその背中を見送り、一人で帰路についた。

この日から、四人で昼食を食べることが少しずつ増えていった。


それから1ヶ月経ったある日の放課後。

その日は晴と蓮の部活が休みだった。

四人は教室を出て、校門へ向かって歩いていた。

「今日どうするよ?」

蓮が聞く。

「そのまま帰る?」

美咲が言う。

「せっかくだし、ちょっと寄り道しようぜ」

晴が提案する。

「コンビニとか?」

蓮が聞く。

「いこいこ!」

四人でコンビニへ向かった。

「遥、何買うの?」

晴が聞く。

「私は…甘いものかな」

「やっぱり?」

「うん。好きだから」

「俺はカレー味のスナックにしようかなー」

「晴って本当にカレー好きだね」

遥がクスッと笑う。

「好きなものは仕方ないだろ!」

晴も少し恥ずかしそうに笑った。

買い物を終えると、四人はそのまま歩きながら話した。

「遥って、方向音痴じゃない?」

蓮が突然言った。

「え?」

「この前、駅の反対側行ってただろ」

「あれは……ちょっと間違えただけ」

「やっぱり方向音痴じゃん!」

「蓮くん!」

美咲と晴も笑う。

「でも、俺もたまに間違えるけどな」

晴が言う。

「晴は地図見れば分かるじゃん」

美咲がすぐに返す。

「なんで俺より遥のほうを庇うんだよ」

「庇ってないよー」

四人で笑った。

そんな帰り道が、少しずつ当たり前になっていった。


それから何日か。

四人で昼食を食べる。休み時間に話す。部活のない日は一緒に帰る。

そんな日々が続いていった。

遥も、最初の頃よりずっと自然に笑うようになった。

「晴、これ分かる?」

遥が数学のノートを見せる。

「どれ?」

「ここ」

晴がノートを覗き込み、少し考えた。

「ここはこうじゃない?」

「あ……ほんとだ」

「珍しいな。遥でも間違えるんだ」

「私だって間違えるよ」

「そうだな、ごめんごめん」

晴が申し訳なさそうに笑う。

「ふふっ」

美咲も笑う。

「遥ちゃんって、意外と負けず嫌いだよね」

「え、そ、そうかな?」

「うん」

蓮が横から口を挟む。

「晴も負けず嫌いだけどな」

「俺?」

「そうそう!」

「蓮にだけは言われたくない」

「なんでだよ!」

四人で笑う。

昼休みが終わると、晴と蓮は体育館へ向かい、美咲もマネージャーとして二人についていく。

遥はその背中を見送ることも増えていた。

「晴、今日も頑張ってね」

「うん。ありがとう。遥もまた明日な」

「うん。また明日ね」

そんな些細で、短いやり取りだけでも、遥は嬉しそうだった。

一方、美咲も部活中、自然と晴の様子を気にしていた。

「晴、水分ちゃんと取ってね」

「分かってるって」

「さっきから走りっぱなしだったでしょ」

「……美咲、よく見てるな」

蓮が言う。

「なっ、マネージャーですから!」

そう言って少し恥ずかしそうに笑う美咲。

けれど、本当はそれだけではなかった。

昔からずっと晴を見てきたからこそ、少しの変化にも気づける。

それが美咲にとっては、ごく自然なことだった。


そして、また日を重ねた。

その日は晴と蓮の部活が休みだった。

放課後、四人で帰る準備をしていると、蓮が晴に声をかけた。

「なあ晴、確か今日部活オフだよな?」

「ああ、今日は休みだぜ」

「じゃあさ、久しぶりにゲームセンター行かね?」

「ゲームセンター?」

遥と美咲が振り返る。

「駅前のところ。四人で遊ぼうぜ!」

「俺はいいけど、遥と美咲はどうする?」

「私もいいよ!」

美咲が言った。

「私も行きたい!」

遥も笑いながら言った。

「じゃあ決まりだな!」

四人は駅前のゲームセンターへ向かった。

店内に入ると、ゲーム機から大きな音楽や効果音が聞こえてくる。

「まずはこれだろ!」

蓮が向かったのは、二人で対戦できるレースゲームだった。

「晴、勝負だ!」

「また?この前も俺が勝っただろ」

晴が得意げに言った。

「今日こそは絶対に勝つ!」

「はいはい」

ゲーム機に硬貨を入れ、二人がそれぞれ運転席に座った。

画面には道路とコースが映し出され、カウントダウンが始まった。

「3、2、1……スタート!」

二台の車が勢いよく一気に走り出す。

「おっしゃ!」

蓮がアクセルを踏み込む。

序盤は蓮が先頭だった。

「見たか晴!」

「まだ始まったばっかだろ」

晴は落ち着いてハンドルを切る。

そしてカーブ。

蓮が少し膨らんだ瞬間、晴が内側から追い抜いた。

「うわっ!」

「焦りすぎだな」

「まだ終わってねぇ!」

最後まで競り合ったが、ゴールしたのは晴だった。

「よっしゃ」

「くっそー!」

蓮が悔しそうに頭を抱える。

「もう一回だ!」

「何回やるんだよ」

「勝つまで!」

遥が笑う。

「さすが晴だね」

「遥まで!」

四人で笑った。

次に遥が目を向けたのは、画面に流れてくる音符やマークに合わせてボタンを押す音楽ゲームだった。

「あ、これやってみたい」

「遥、やったことある?」

美咲が聞く。

「ないけど、楽しそう」

「いいじゃん!頑張れ!」

蓮が応援する。

「うん!」

遥がゲームを始める。

最初は順調だった。

しかし、少しすると画面に流れてくるマークの数が一気に増えた。

「……え?」

「遥頑張れ!」

晴が笑いながら声をかける。

「待って、速い!」

遥は必死にボタンを押す。

「違う! そっちじゃない!」

蓮が笑う。

「分かってる!」

「絶対分かってないだろ!」

ゲーム終了。

遥は悔しそうに画面を見つめた。

「……難しい」

「でも結構頑張ってたじゃん」

晴が言う。

「本当?」

「うん」

「じゃあ、もう一回やる」

「まだやるの!?」

蓮が驚く。

「今度はできる気がする」

遥は真剣な顔でゲーム機を見る。

「その自信どこから来るんだよ!」

蓮が言った。

二回目も苦戦したが、四人で笑いながら楽しんだ。

その後、四人はクレーンゲームのコーナーへ移動した。

「あ、これかわいい」

美咲が小さなクマのぬいぐるみを見つめた。

「欲しいの?」

晴が聞く。

「うん。でも私、こういうの苦手なんだよね」

「じゃあちょっと俺やってみるわ」

晴が台の前に座った。

一回目。

失敗。

「惜しい!」

蓮が言った。

二回目。

ぬいぐるみが少し動いた。

三回目。

景品が落ちた。

「晴すげぇ!!」

蓮が驚きながら言った。

「ほら、取れたぜ」

晴は少し誇らしげに景品を美咲に渡した。

「ありがとう晴!」

美咲は嬉しそうに受け取った。

「大事にするね」

「あぁ」

晴も嬉しそうに笑った。

その様子を見ていた遥が、小さく笑う。

「晴って、やっぱ優しいね」

「そうか?」

「うん」

遥は嬉しそうに笑った。

蓮が二人を見てニヤニヤする。

「なんかいい雰囲気じゃん〜」

「何が?」

晴は本気で分かっていない。

「なんでもねーよ」

蓮は少し呆れたように笑った。

四人はそのままゲームセンターを楽しんだ。

帰る前には、四人で撮れるプリクラも撮った。

「せっかくだし、みんなでこれ撮ろうぜ!」

蓮が言う。

「いいね!」

美咲が頷く。

「私も撮りたい」

遥も笑った。

「じゃあ撮るか」

晴も言った。

四人でプリクラの機械に入る。

「蓮くん、近い!」

「仕方ないだろ、狭いんだから!」

「晴、もうちょっとこっち」

美咲が晴を呼ぶ。

「こうか?」

「うん」

四人で楽しく笑いながら何枚か写真を撮った。

出来上がったプリクラを見て、遥が嬉しそうに笑う。

「……いい写真」

「だな」

晴も笑った。

「また四人で来ようぜ」

「うん!」

遥が頷く。

蓮と美咲も笑った。

「また来よう」

四人はゲームセンターを出た。

夕方の街を、並んで歩いていく。


それから少しして、少し涼しくなり始めた頃、学校では体育祭の準備が始まっていた。

「今年、男女混合の騎馬戦あるらしいぜ」

蓮が言う。

「騎馬戦は…四人一組だって!」

美咲が確認して、言った。

「じゃあ、俺ら四人で出ようぜ!」

蓮が言った。

「それいいな」

晴も賛成した。

「遥も出るよな?」

晴が言った。

「いいけど…」

遥が不安そうな顔で言う。

「遥、大丈夫?」

美咲が心配そうに聞く。

「私、運動あまり得意じゃないんだよね……」

遥が俯いて言った。

「じゃあ騎手やればいいんじゃね?」

蓮が言う。

「え!私が!?」

「うん。俺と晴で支えるから!なあ!晴!」

「ああ、大丈夫だぜ」

晴も頷く。

「晴がそう言うなら…やってみる!」

遥の表情が少し和らいだ。

こうして四人は騎馬戦に出ることになった。

役割は、

騎手―遥。

前左―晴。

前右―蓮。

後ろ―美咲。

となった。


練習初日。

晴たちは騎馬戦の練習に励んでいた。

「せーの!」

 四人で騎馬を組む。

「わっ!」

 遥の身体が揺れる。

「大丈夫か?」

 晴が支える。

「う、うん!」

「もう一回いくぞ!」

蓮の声に、晴と美咲が頷く。

「遥、準備できてる?」

晴が聞く

「うん!」

遥は晴たちの肩に手を置き、騎馬の上で姿勢を整える。

「じゃあ、行くよ!」

四人が一斉に走り出した。

「右!」

遥の声に合わせて、晴と蓮が方向を変える。

「そのまま!」

順調に進んでいた、そのときだった。

晴が足を取られ、ほんの少しだけ体勢を崩した。

「わっ……!」

その反動で、遥の身体が大きく揺れる。

「遥!」

次の瞬間。

遥の身体が騎馬から落ちかけた。

「……っ!」

晴は反射的に腕を伸ばした。

遥の腕をつかみ、そのまま身体を支える。

「悪い!大丈夫か!?」

「……う、うん」

遥は答えながら、晴に支えられていることに気づいた。

顔を上げる。

すぐ目の前に、晴の顔があった。

「……」

一瞬、二人とも言葉を失った。

近い。

いつも話している距離とは、明らかに違う。

けれど、晴の腕に支えられたまま、なかなか動けない。

遥の頬が少し赤くなっている。

「……晴」

「ん?」

「……近い」

「……あ」

晴もようやく気づいた。

「ご、ごめん!」

慌てて手を離した。

「……その、ごめん」

「ううん。晴が支えてくれたから」

遥は小さく笑った。

「……ありがとう」

「いや、無事でよかった」

晴は照れたように笑った。

その様子を少し離れたところから見ていた蓮が、ニヤッとする。

「おーい、お二人さん?」

「蓮!」

晴が咄嗟に返した。

「何も言ってねえだろ?」

美咲も二人を見ながら、思わず笑った。

「ふふっ。二人とも顔赤いよ?」

「美咲まで……」

晴が困ったように頭をかく。

遥も恥ずかしそうに笑う。

「……もう一回、練習するか」

晴が気を取り直して言った。

「うん!」

再び四人は騎馬を組む。

けれど…

さっき支えてくれた晴の手の感触が、遥の中に残っていた。

そして晴もまた、なぜか少しだけ落ち着かなかった。

「……晴?」

「ん?」

「今度は、ちゃんと支えてね」

遥が冗談っぽく笑う。

「任せろ」

晴も笑った。

四人の練習は、再び始まった。


そして体育祭当日。

青空の下、競技が始まった。

体育祭も終盤に差し迫り、ついに騎馬戦が始まる。

「遥、いけるか?」

晴が聞く。

「うん!」

遥は緊張しながらも頷いた。

「よっしゃ行くぞ!」

蓮の声とともに、四人の騎馬が走り出す。

「右!」

遥の指示に、晴と蓮が同時に動く。

正面から別の騎馬が迫ってきた。

「晴、どうする?」

「当然突破する!」

「オッケー!」

晴と蓮の圧倒的な連携で一気に相手の懐へ回り込んだ。

「遥、今!」

「うん!」

遥が手を伸ばし、相手の帽子を取った。

「取った!」

「よっしゃ!」

四人が笑う。

しかし、次の瞬間――

「後ろから来るよ!」

美咲の声。

大きな騎馬が後ろからから突っ込んできた。

「遥、掴まって!」

晴が言う。

激しくぶつかり、遥の身体が大きく揺れる。

「きゃっ……!」

落ちそうになった遥を、晴がとっさに支えた。

「大丈夫か!?」

「……うん」

一瞬、目が合う。

「……ありがとう、晴」

「絶対落とさねぇから」

晴が遥を支え直す。

蓮がニヤッと笑った。

「晴、今のカッコよかったぞ」

「うるさい」

「二人とも、まだ終わってないよ!」

美咲の声で、二人は前を向く。

「蓮!」

「おう!」

二人が同時に踏み込む。

晴と蓮が正面から相手を押さえた。

「遥、いけ!」

「うん!」

遥が手を伸ばす。

――パシッ。

「取った!」

「よっしゃあ!!」

歓声が上がった。

試合が終わり、遥を下ろした。そして四人は顔を見合わせ全力で喜びあった。

「よっしゃー!」

蓮が叫ぶ。

「勝ったね!」

美咲も笑う。

晴も三人を見て笑った。

「四人で出てよかったな」

「うん!」

遥が嬉しそうに頷いた。


体育祭が終わったあと、四人は自動販売機の前に集まった。

「疲れたー!」

蓮が大きく伸びをする。

「お疲れさま」

美咲が笑う。

晴は飲み物を買うと、遥にも一本渡した。

「はい」

「え?」

「今日、頑張ってたから」

「……ありがとう、晴」

遥は嬉しそうに受け取った。

「勝ててよかったな。今日のMVPだな」

晴が言う。

「晴と二人のお陰だよ。支えてくれてありがと」

「ああ」

その様子を見た蓮がニヤニヤする。

「おーい、二人とも。まーたイチャついてんだー?」

「イチャついてない!」

晴と遥の声が同時に重なる。

「ほら、息ピッタリじゃん!」

「蓮、うるさい」

晴が笑う。

美咲も笑っていた。けれど、その笑顔の奥には、ほんの少しだけ複雑な気持ちがあった。

晴の隣にいる遥を見ながら、美咲は思う。

私も、晴の隣にいたい…。

まだ、その気持ちに名前はつけられなかった。


体育祭が終わり、四人は一緒に帰る。

「来年もまた四人で騎馬戦やろうぜ!」

蓮が言う。

「来年って気が早いよー」

美咲が笑う。

「いいじゃん」

晴も笑った。

「来年も四人でやろう」

晴が言う

「うん」

遥が頷く。

四人の笑い声が、夕暮れの道に響いた。

特別なことなんて何もない。ただ四人で笑って、話して、一緒に帰る。そんな普通の日々が――。

少しずつ、四人にとって大切な時間になっていった。

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