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ネビラクの影

犠牲者たちの魂を導きながら、セルベイン一行はイレルダン峡谷の最も深い場所へと進んでいく。


モルジェルの奇襲に備えていたが、最後までモルジェルの攻撃はなかった。


そしてセルベイン一行は、ついにイレルダン峡谷の最奥部に到着する。


少し遠いが、目の前にダルガンの手、呪いの魔法陣が見える。


そしてセルベインは驚くべき光景を見る。


「師匠?」


アイオレンが慎重に呼ぶ。


しかしセルベインからは何の返答もない。


セルベインの視線は、ダルガンの手、呪いの魔法陣の上方へ向けられている。


魔法陣から噴き出した強力な黒い波動が、まっすぐ空へと上っている。


黒い波動の巨大な噴出。


黒い波動の響き。


黒い波動の圧倒的な威圧感。


セルベインは遠い昔の記憶を思い出す。


「魔王の剣ネビラク。」


セルベインがついに口を開いた。


この場合、淡々とした口調で吟じるように語ったためか、大声で叫ぶよりも劇的な効果が大きい。


「あれが魔王の剣ですか!」


むしろアイオレンが悲鳴のように叫ぶ。


実際に見たことがあるのはセルベインだけだ。


他は話では聞いたが、物を見るのは今日が初めてだ。


魔王アスペルハイムは二つの武器を携えてエノルの世界に現れた。


一つは魔王の槍ベルカザード。


そしてもう一つが魔王の剣ネビラクだった。


その剣が、今セルベイン一行の目の前にある。


遠く離れていても十分に伝わる圧迫感。


見るだけで、すでに斬られたような恐怖感。


空へ飛び上がった黒い波動が、まるで空を引き裂くかのように揺らめいている。


ダルガンの手、呪いの魔法陣から立ち上る黒い波動を吸収しながら、ネビラクは巨大な剣の形を作り上げていく。


「もしかすると、とは思っていましたが、もう完成していたとは思いませんでしたね。」


セルベインがそう言った時、魔王の剣ネビラクはその姿を完成させる。


「魔王本人でもないのに、黒い波動の気配がかなり強いようです。」


アイオレンは驚きを隠せない。


「師匠。どうすればよいでしょうか?」


ビティアがセルベインの指示を待つ。


ここから生き残ることができれば、なぜ魔王の剣ネビラクがここにあるのかは後でいくらでも確認する時間があるはずだった。


「最初から封印石が目的だったのでしょう。モルジェルはネビラクを利用して封印石を壊すつもりです。モルジェルは最後まで魔王のために諦めませんね。」


セルベインの目が魔王の剣を静かに見つめ、最後にダルガンの手、呪いの魔法陣を見る。


皆の視線が魔王の剣の下方へ向かった。


下には、たった今死んだばかりだが、すでに魔法陣によって干からびて固まってしまったモルジェルが山のように積み重なっている。


「モルジェルは自分の体も心も、すべて魔王の剣の召喚儀式に捧げたようですね。」


アイオレンはその凄惨な現実に痛ましさを覚える。


「静かな沈黙は、その代償だったのね。」


ビティアはモルジェルが抵抗しなかった理由を悟る。


モルジェルがセルベイン一行を阻まなかった理由。


それはモルジェルがすでにダルガンの手、その呪いの魔法陣の中へ自ら歩み入っていたからだった。


それは鎮魂と呼ぶには不快であり、供物と呼ぶにはおぞましかった。


その瞬間、魔王の剣ネビラクが振動を起こす。


そして剣の先端がゆっくりと傾き始め、黒い波動によって鍛え上げられた膨大な質量の重みが一方向へ向かい始める。


「止めなければなりません。ネビラクの切っ先は封印石を向いています。ネビラクの力なら、封印された魔王の力と合わさって、封印石を十分に破壊できるでしょう。」


セルベインが切迫した声で言う。


最初、ネビラクはただ立っている状態だった。


しかし魔王が指先で押すような仕草をすると、そのまま傾き、切っ先が封印石の方へ向かって振り下ろされ始める。


「もう遅い。」


魔王が笑う。


まるで巨人が振るうかのように、ネビラクは加速度をつけながら地面へと降ってくる。


「時間がありません。」


セルベインが急いで魔法の呪文を唱える。


「エルネド接続。最高権限実行。ルミア・パドレア。」


セルベインが呪文を唱えると、セルベインの上に光の大剣が現れる。


光の波動が周囲を震わせながら四方へ広がっていった。


異なる二つの魔法波動によって空気が震え、魔力の流れが歪められる。


「まだやるのか。」


空間を響かせながら声が聞こえる。


深い海の底から響いてくるような低い声だ。


そしてその声からは、まったく生命の気配が感じられない。


「師匠! ネビラクの先端が封印石へ向かっています!」


アイオレンが切迫した声で叫びながら、セルベインを助けるためエルネドとの共鳴を強化する魔法呪文を唱える。


次の瞬間、空は沈黙に包まれ、ネビラクの黒い波動が周囲を圧倒する。


ネビラクは最初はゆっくりと、しかし加速をつけながら徐々に速くセルベインたちのいる方へ近づいてくる。


「止めなければなりません。最悪の場合、せめて封印石に当たらないよう、その方向だけでも変えなければなりません。」


セルベインが覚悟を固める。


「バァン!」


鈍い音とともに、魔王の剣ネビラクがセルベインの召喚した光の大剣ルミア・パドレアと衝突する。


巨大な魔力の衝突によって光の波動が空へ噴き上がり、黒い波動が闇へと散らばる。


その激突の衝撃波によって、イレルダン峡谷全体が揺れる。


しかしルミア・パドレアで迎え撃ったにもかかわらず、ネビラクを一瞬たりとも止めることはできない。


ネビラクは落下する速度のまま再びルミア・パドレアへ深く食い込んでいく。


セルベインはアイオレンへ目で合図を送った。


するとアイオレンは頷き、ビティアの方へ向き直った。


「ビティア。君はベルマウル将軍と一緒に逃げて。転移魔法をかけてあげる。場所までは指定できないけれど、とにかく二人はここから脱出して。」


そう言いながら急いで呪文を唱えようとするアイオレンの口を、ビティアが手を上げて制する。


「いいえ。」


ビティアは断固として言う。


「今のイレルダン峡谷そのものがネビラクの鞘みたいなものよ。もうこの場所はネビラクに支配されている。」


ビティアの言葉通り、イレルダン峡谷そのものが今やネビラクの発射管の役割を果たしていた。


「私たちだけ逃げても意味はない。ベルマウル、準備して!」


ビティアは諦めずにベルマウルへ指示する。


「ですが、師匠でさえ耐えるので精一杯なのに……」


アイオレンはどうすればよいかわからず戸惑う。


「止めなければなりません。ここで止めなければ、首都カルバルオンも、首都に住む魔族たちも、外にいる部下たちも皆危険になります。」


ベルマウルはそう言って自らの剣を抜く。


ベルマウルの剣は魔王の剣に比べれば果てしなく小さく、みすぼらしい。


それでもベルマウルの信念が折れることはなかった。


ベルマウルは剣を構え、自分たちへ迫る圧倒的に巨大な魔王の剣を迎え撃つ姿勢を取る。


「キィン!」


ついに魔王の剣ネビラクが、セルベインの光の大剣ルミア・パドレアを真っ二つにし、再び振り下ろされ始めた。


折れた光の大剣は二つに裂けて粉々に砕け、輝きを放つ。


その間を突き抜けた黒い波動が猛烈に突進する。


ベルマウルは、自分が光と黒い波動との間にある最後の裂け目の上に立っているような感覚を覚える。


「オルディナコード圧縮解除。解除事項、光の剣。魔法呪文登録。登録事項エルセリオン。魔法呪文セット。」


その瞬間、ベルマウルの頭に浮かぶ文字があった。


しかし、そのほとんどの単語は見知らぬものだった。


それでもベルマウルは、なぜか今叫ぶべき言葉が何なのかわかる気がする。


だから叫んだ。


「エルセリオン。」


そして魔法の呪文が発動する。

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