リマルの仮面エルフ
リマルで、仮面をつけたエルフの噂が少しずつ広まり始める。
エルフは、とある冒険者パーティーを助けたのを皮切りに、森林地帯に出現する魔獣についての貴重な情報を冒険者たちに提供し、次第に名を知られるようになる。そしてついには、森林地帯を訪れる冒険者たちの間で、森林地帯の大賢者と呼ばれる存在になった。
しかし、そのエルフへの評価は依然として曖昧で、断定しがたい。
仮面で顔を隠しているものの、尖った黒い耳までは隠していない。
そして、エノルのエルフの中に黒い耳を持つ者はいない。
身元を完全に隠すつもりなら、最初から兜をかぶったほうがよかっただろう。逆に、すでに疑いを招くような黒い耳を見せている以上、むしろ仮面を外して疑惑を晴らしたほうがよかった。
だが、仮面をつけたエルフは意図的に黒い耳だけを見せている。
もちろん、怪しい点は一つや二つではなかったため、リマルの冒険者ギルドはこのエルフを警戒していた。しかし、これまでに助けられた冒険者も少なくなかったため、確かな証拠もなしに軽々しく動くことはできなかった。
エルフはいまだに冒険者ギルドに正式登録しておらず、そのためギルドは、このエルフに関する情報の把握に苦労している。
悩んだ末、リマルの冒険者ギルドはこの問題をギルド長に報告することにした。ギルド長は、ちょうどリマルを訪れているセルベインと、この件について話し合う必要があると判断する。
少なくとも外見上、彼女がエルフであることは明らかであり、セルベインもまた同じエルフだったからだ。
「最近、リマルで名を知られるようになった冒険者です。自らをセフェローサと名乗っていますが、ギルドに正式登録した冒険者ではありません。仮面で顔を隠しているものの、意図的に耳は隠していないため、黒い耳を持つ女性エルフであることが分かります。」
リマルの王宮のある会議室で、アルベロンがセルベインに状況を説明する。
「エルフで、耳が黒いということですね?」
セルベインが改めて聞く。
「はい。私も直接見たわけではありませんが、セフェローサと呼ばれるこのエルフに会った冒険者たちの証言は一致しています。」
「そうですか。」
そう言って、セルベインは考え込む。
「師匠。今エルネドを調べましたが、姿が黒いエルフはいませんでした。また、セフェローサという名のエルフも登録されていません。」
そう言いながら、アイオレンが心配そうな表情でセルベインを見る。
水晶板でエルネドに接続し、仮面をつけたエルフについて調べてみたが、そのエルフに関する資料はエルネドのどこにも記憶されていなかった。
「やはりそうですか。」
だが、セルベインにはまったく心配している様子がない。
それどころか、ゆったりと目の前の茶碗を手に取り、茶の味を堪能する。
「アルベロン司令官様。今年は海流の流れがよかったようですね。お茶の味が実に見事です。」
「はい。今年は海緑茶の栽培がうまくいき、茶葉も豊かに実り、味も素晴らしいものになりました。」
セルベインが突然、海緑茶を褒めたため、アルベロンはセルベインとアイオレンを交互に見やり、その意図が分からず戸惑う。
アルベロンは急いで話題を変えた。このままでは次の瞬間、気まずい沈黙が流れることを本能的に察したからだ。
「ははは。セルベイン様がアイデンの海に合うよう、直接品種改良をしてくださったのですから、当然です。緑茶の栽培はもともと陸上で行う農法ですが、海緑茶という新しい品種を人魚獣人族に贈ってくださいました。海緑茶の栽培は海中で緑茶を育てるものですから、海の中なら植える場所はいくらでもあります。」
アルベロンは大きく笑い、場を盛り上げた。
「海の中で栽培できるといっても、日光は欠かせません。」
セルベインが念のため、もう一度確認する。
「もちろんです。ご心配には及びません。すでに海中の平坦な場所に海緑茶を植え、海流と海水を通して差し込む日光を利用し、自然に育つようにしてあります。ご存じのとおり、今では人魚獣人族の国アイデンを代表する特産品の一つとなりました。アイデンの名を背負っている以上、おろそかにはできません。」
「それなら安心です。」
セルベインがうなずく。
何より、海緑茶に自然に溶け込んだ海の塩味は、陸上の緑茶よりも苦味をいっそう絶妙に和らげ、より深く豊かな風味を生み出していた。
「それにしても、少し寂しいですね。」
セルベインが会議室をゆっくりと見回す。
広い会議室には今、セルベインとアイオレン、そしてアルベロンしかいなかった。
ビティアとベルマウル、そしてシルブラスは、マルベラの箒に乗って、ひとまずそれぞれの国へ帰った。
ビティアとベルマウルは魔族国の王女と将軍であるため、魔族国で公務として処理しなければならない仕事がある。
すでに山のように積み上がった決裁書類は机の脚がぐらつくほどで、魔族国の王ナルジェオスから緊急の救援要請が届いたのだ。
シルブラスも、これまでの出来事を獣王国バルエルのルガルマギルド長に報告するため、一緒に旅立った。
マルベラは、セルベインの手紙を届けるため、エクスバークに会いに人族の国ロデンミル議会国へ向かう。
エクスバークはドワーフの王国グラウムバルの冒険者ギルドのギルド長だったが、セルベインの頼みで、現在は人族の国ロデンミル議会国に賢者兼ギルド長として派遣されている。
その後、マルベラはエクスバークの意見をドワーフ王国に届けてから、魔女の国ルペンシアへ戻って魔女協会に出席し、セルネア事件とアイデンでの出来事を魔女たちに説明する予定だ。
アイオレンは、マルベラが間違えないよう、魔女の会議で使う資料を水晶板に細かく記録し、マルベラに渡した。
その後は来た道をたどって、あらかじめ受け取る約束をしていた品物を回収し、先に降ろした客たちも再び乗せて、アイデンへ戻る予定になっている。
「このエルフは、私たちに会いたいようですね。私の考えでは、敵意はないように見えます。」
セルベインは、まったく心配していないとでもいうように微笑んだ。
「では、セルベイン様が直接お会いくださいますか?バルカエル将軍とアイデンの最精鋭の兵士たちが、直接護衛いたします。」
アルベロンは、アイデン最高の戦士たちで護衛隊を編成しようとする。
「アルベロン司令官様。ご心配には及びません。もしこのエルフが何かを企んでいたなら、とっくに自分たちの優秀な艦隊でアイデンの陸上の首都リマルを攻撃していたはずです。わざわざ珊瑚に痕跡を残す理由もなかったでしょう。」
セルベインは首を横に振り、護衛隊の同行を辞退する。
「とはいえ、お互いに気兼ねなく会える場所が必要です。そうですね。リマルの冒険者ギルドで会うのが、お互いに都合がよいでしょう。アルベロン司令官様、リマルの冒険者ギルドに席を設けていただけますか?私とアイオレンが直接会ってみます。」
「承知しました。セルベイン様がそうおっしゃるのであれば、ご意向に従うのみです。すぐに手配して、冒険者ギルドに会談の場を用意いたします。」
アルベロンがうなずきながら答える。
「師匠は、黒い波動の艦隊と関係があるとお考えなのですね。」
アイオレンが尋ねる。
「はい。もちろんです。ここまでお膳立てをしているところを見ると、きっと何か伝えたい話があるのでしょう。少なくとも、黒い啓示と同じたぐいではなさそうです。魔王アスペルハイムの世界から来た住人は、思っていたより常識的なようですね。」
まるで仮面をつけた黒い耳のエルフを目の前に見ているかのように、セルベインが微笑む。
「アイデンの高貴な方々が、セフェローサ様にお会いしたいとおっしゃっています。」
数日後、リマルの冒険者ギルドの職員がセフェローサを訪ね、一通の手紙を渡す。
「はい。分かりました。」
セフェローサは、まるで待っていたとでもいうように軽く笑い、リマルの冒険者ギルドの申し出を素直に受け入れた。




