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事件の再構成

セルベインはトライホーンビーストの異常現象を振り返った。


そして洞窟の中にいるレックスビーストへと足を運んだ。


セルベインの静かな足取りを邪魔しないように、皆は言葉を慎みながら後に続く。


セルベインはレックスビーストの前に立ち、ルガルマを振り返った。


「構いません。必ず必要なことですので、お望みのとおりになさってください。」


ルガルマがうなずく。


「レックスビースト、すまない。少しだけ我慢しててね。」


セルベインはレックスビーストをなだめた後、魔法の呪文を唱える。


光属性治癒魔法が半分ほど込められた魔法球がレックスビーストへ飛び、そのままレックスビーストに吸収される。


「クアアアン!」


手掛かりは明確であり、結果もまた予想どおりだった。


レックスビーストの目が赤く充血し、咆哮とともにレックスビーストが暴走する。


同時にレックスビーストの頭部から黒い波動が押し出され始めた。


しかし今回は位置をすでに把握しているため、追跡魔法を使う必要はない。


「カレンシア。」


セルベインが魔法の呪文を唱える。


カレンシアの魔法呪文はアイオレンのプリマ・エセンシアとビティアのカレンディアの上位魔法体系である。


セルベインが使用する上位魔法の中には、光と闇の両方を扱う魔法がある。


カレンシアの場合、アイオレンはまだ闇魔法が不得手であり、ビティアはまだ光魔法が不得手である。


そのため、プリマ・エセンシアとカレンディアに分けて下位魔法として教え与えていたのだった。


アイオレンとビティアが魔法呪文にさらに熟練すれば、その時にはセルベインが見せたように完全なカレンシア魔法を二人とも発動できる日が来るだろう。


セルベインの上位魔法を見て少し恥ずかしかったのか、アイオレンとビティアは互いを見て微かに笑う。


「カレンシアの魔法呪文で問題の黒い魔法回路を取り出します。ルガルマギルド長は気功術を使ってください。」


セルベインの指示に、ルガルマは青き狼へと変身した獣人たちにハウリングを準備させた。


「ビティア。カレンシアが発動し、黒い魔法回路がレックスビーストの外へ出たら、素早く水晶石へ吸収させましょう。」


セルベインは再び水晶石をビティアへ渡した。


「はい、師匠。」


先行学習の効果で、ルガルマは青き狼へと変身するとビティアの横へ近づいた。


「ありがとうございます。」


ビティアはためらうことなくルガルマの背中へ乗った。


「始めます。」


セルベインが話している最中も、なお治癒魔法を吸収しながら、黒い魔法回路は光魔法を吸収して周囲へ黒い波動を放ち続けている。


苦しむレックスビーストの体をルガルマが素早く駆け上がる。


あっという間にビティアは巨大なレックスビーストの頭頂部にいた。


「アイオレン。治癒魔法をレックスビーストへ付与してください。そうですね。ひとまずリスの傷を治療する程度の強さです。」


黒い魔法回路から発生する黒い波動の量が不足し始めている。


それに伴い、黒い魔法回路は再びレックスビーストの体に吸収され、その存在感が薄れて位置が不正確になる。


セルベインの意図は、カレンシアで正確に黒い魔法回路だけを切り離して取り出すことだった。


そうでなければ、レックスビーストの頭部に永久的な障害が残る可能性がある。


巨大な体を動かすレックスビーストにとって、頭部の障害は致命的な問題となり得るため、それを避けようとしている。


レックスビーストを大切に思うセルベインの気持ちは、獣人たちに劣らなかった。


また、ギガンティックビーストが獣王国バルエルの最も貴重な宝であることも、慎重であるべきもう一つの理由だった。


「はい、師匠。」


アイオレンはセルベインの意図を即座に理解し、まさにその程度の魔力量をレックスビーストへ送る。


すると黒い魔法回路が再び稼働し、その位置が鮮明に浮かび上がる。


セルベインはその機会を逃さず、カレンシア魔法で黒い魔法回路を素早く切り離してレックスビーストの頭部の外へ押し出した。


しかし弾き出された黒い魔法回路は、自ら意思を持つかのように再びレックスビーストの頭部へ戻ろうと動く。


「パン!」


その気配に気付いたルガルマが、口から気功砲弾を放ち、黒い魔法回路を空中へ弾き飛ばす。


弾き飛ばされた黒い魔法回路からは、なお黒い波動が放出され続けている。


「ビティア。黒い波動に体が触れてはいけません。気を付けてください。」


セルベインは心配しながら上を見る。


ほとんど空を飛んでいるようなルガルマの背の上で、ビティアは体を起こし、水晶石を手に握った。


「はい、師匠。ご心配なく。」


しかしセルベインの心配とは違い、実際に立ってみるとかなりの安定感が感じられる。


ビティアはまるで平らな地面に立っているかのような錯覚すら覚えた。


「ありがとうございます。」


ビティアは微笑みながらルガルマに感謝の言葉を伝える。


ルガルマは背中の筋一本に至るまで繊細に制御しながら、空中で姿勢制御を行っている。


そのアクロバティックな身体バランスは、評価するまでもなく満点だった。


ビティアが右手に握った水晶石を黒い魔法回路にぶつけると、瞬く間に黒い魔法回路は水晶石の中へ吸い込まれる。


ビティアが揺らぐこともなく、ルガルマは滑らかに着地する。


黒い魔法回路が収められた水晶石は、ビティアの右手の中で静かに輝いていた。


手術が成功すると、獣人たちは気眠術(気功睡眠術)のレベルを一気に上げて、レックスビーストがすぐに眠りにつくよう誘導した。


「ドン!」


軽い音とともに、レックスビーストはその場で横に倒れ込み、眠りについた。


獣人たちはレックスビーストの頭の傷を確認し、ほかに異常がないかも細かく確認し始める。


「レックスビーストに異常はありません。」


そしてすぐに、レックスビーストに何の異常もないという意味でうなずいた。


「師匠、成功です!」


アイオレンが喜ぶ。


「はい。皆よくやってくれました。」


セルベインも喜ぶ。


「とても痛かっただろう。早く気付いてあげられなくてごめんね。」


セルベインがいたわるような眼差しでレックスビーストを撫でる。


「いいえ、セルベイン様。この程度の傷は普段でもできる程度のものです。ご心配なさらないでください。」


ルガルマが言うと、獣人たちはうなずきながらレックスビーストの無事を喜ぶ。


「師匠。こちらが水晶石です。」


ビティアが水晶石をセルベインに見せる。


「見事です、ビティア。大変ご苦労様でした。」


セルベインがビティアを褒める。


「ルガルマギルド長が全部やったんですよ。私はただ座っていて、時が来たから立ち上がっただけです。」


ビティアが照れる。


「師匠。これは?」


アイオレンが尋ねる。


「はい。光属性魔法、特に治癒魔法を吸収し、その力を増幅して黒い波動へ変換する魔法回路です。」


「そういえば、ロデンミルでエクスバーク様がこれと似た物のお話をされていた気がします。」


セルベインの説明に、アイオレンは以前の出来事を思い出す。


「はい。エルセリオンコンバーター。つまり蓄光炉を逆利用した魔法回路です。しかし、これほど小型化できるとは思いませんでした。それもこんなに早くとは。」


セルベインが苦々しく笑う。


「誰が作ったのでしょうか?」


ビティアが尋ねると、アイオレンが答える。


「誰が作ったかだって? 当然、魔王の仕業だろう。」


アイオレンは姿の見えない相手に対する強い敵意を露わにした。


「はい。そのようですね。魔王は今回は新しい玩具を作ったようです。ただ、それによって何を狙っているのか、それが気になります。」


セルベインが考え込む。


「ルガルマギルド長。申し訳ありませんが、すべてのギガンティックビーストを調査しなければなりません。」


すぐにセルベインは真剣な表情でルガルマを見る。


「はい、承知しました。全数調査の命令を伝達します。放牧中のギガンティックビーストも含め、すべて近くの農場へ収容して待機させます。」


「はい。ありがとうございます。速やかに確認してみましょう。」


セルベインはルガルマの素早い仕事ぶりに感心する。


「かわいそうですが、それではひとまず魔王へのリベンジをする気分で、洞窟の外で待っているトライホーンビーストから助けてみましょうか。」


セルベインは先頭に立って洞窟を出ていった。


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