冒険者たち
通常の冒険では、進む方向が同じ場合、商人の護衛やモンスター討伐、または素材の入手などの即席の依頼が発生することがある。
獣王国バルエルまで向かう商人たちは、交渉によってより安い費用で護衛を受けることができ、冒険者たちはどうせ行く道なので小遣い稼ぎが可能だ。
またモンスター討伐後の素材は商人の荷車を無料で利用できるし、運搬費を節約できる。
冒険者の実力等級が低いとちょっと大変だけど、それなりに交渉に励むことが路上交渉の楽しさだ。
一人の商人がセルベイン一行をじっと観察する。
先ほどまでいた男性騎士は今は見当たらないが、商人の目には良い条件で交渉できそうに見えた。
「どちらまで行かれるのですか?」
商人が笑顔でセルベイン一行に近づいてくる。
商人の後ろには魔法荷車四台が続いていた。
第一印象だとセルベイン一行は魅力的な冒険者パーティーではなかった。
前衛に立つのは男性騎士と女性剣士、後衛には魔法使いと思われる二人。それに当然一人はヒーラーだと思われる。
攻撃と防御だけでなく、魔法使用やバフ能力まで含めると、バランスは完全に滅茶苦茶だった。
だからこそ商人たちが魅力を感じず、他の冒険者パーティーに先に接触するのも無理はなかった。
商人たちは長い旅路において、自分の命と貴重な商品を託す重要な選択をしているのだ。
戦闘の専門家ではないとはいえ、短時間で冒険者を見極め、すぐに交渉までしなければならないだけに、冒険者を評価する目は一般的に非常に正確だった。
結果として優秀な冒険者パーティーは商人たちに早々と確保され、残されるのは骨のように頼りない下位パーティーばかりだ。
この段階になると、今度は商人たちが冒険者パーティーより優位に立つ。
残された冒険者たちは自分たちに足りない部分を理解しているため、相場より安い価格でも雇われることを望み、商人たちは頼りない冒険者パーティーに大金を払う気がなくなる。
状況は逆転し、あちこちで雇われなかった冒険者パーティーが周囲の商人たちに金額を提示しながら客引きをしていた。
「獣王国バルエルです。」
ベルマウルがいないため、セルベインが答える。
「ああ、そうでしたか。私もバルエルまで向かう商人なんですよ。」
商人は笑顔で喜ぶ。
「私たちの正体を知ったら驚くだろうね。」
アイオレンがビティアの耳元でささやく。
「私たちの正体を知ったら困るでしょうね。」
ビティアがアイオレンの言葉を訂正する。
「お考えの報酬はいくらですか?」
セルベインが尋ねる。
商人はセルベインが誰なのか知らない。
ただ、非常に品格あふれる高貴な女性という姿から、商人の頭に浮かんだ印象はまさに光の司祭そのものだった。
「失礼ですが、冒険者の実力等級は何級でしょうか?」
商人が交渉を始める。
「B級です。」
セルベインが笑いながら言う。
エクスバークが恐れ入りながら震える手で差し出したのは、B級だった。
セルベイン一行に自然に渡したけど、実際に身分証を作る際にはS級以下など考えもつかなかったため、仮身分証を作るのに非常に苦労した。
セルベインは、エクスバークが恐れ多くも差し出したB級を、さりげなく口にした。
「ああ……これは危険だな……」
アイオレンがビティアにささやく。
「この程度なら国際問題よ。おじ様が無事だといいけど……」
ビティアも本気で心配する。
セルベインに低い等級を与えること自体が、複数の国から抗議書簡を受け取るのにちょうどいい行動だからだ。
たとえセルベイン自身が等級を低く言ったとしても、そのような雰囲気を作った原因についての責任追及は避けられなかった。
「B級でしたら……ちょうどいいところですね。通常、護衛任務はB級以上から行いますので。幸い私の商品はそれほど高価なものでもありませんし。どうでしょう? 私が雇うというのは。もちろん報酬も護衛任務が終わった時に、その評価を基準にお支払いするということで。」
商人は笑顔でセルベイン一行に交渉を持ちかける。
その言葉にビティアがかっとなるが、そんなビティアをいつのまにか戻ってきたベルマウルが制止する。
「申し訳ありません。私は先ほど別の商人との交渉を終えたところです。」
ベルマウルが謝罪しながら会話に割って入る。
「ああ……そうでしたか。お互いに良い機会だったのに残念ですね。では失礼します。」
商人はずる賢い笑みを浮かべたが、それ以上口を挟まずに離れていった。
「ったく……あれをそのままかよ……。」
ビティアは肩で息をしながら怒りをこらえる。
「母上。私たちは身分を隠しながら旅をしています。理不尽な目に遭うたびに怒っていたら、怒りが持ちません。」
「大丈夫。私の怒りは海より広いんだから!」
ベルマウルの言葉にもビティアがふくれていると、アイオレンがビティアの残りの怒りをなだめ始める。
「ベルマウル将軍。その話は本当なのですか? 他の商人に雇われたというのは?」
セルベインは興味を示した。
セルベインとアイオレンはベルマウルへの「将軍」という呼称を変えられない。
最初はビティアがベルマウルを呼ぶのと区別するために、意図的に「将軍」という呼称を付けていたのだが、頻繁に呼ぶうちに、後になってむしろ付けるほうが口になじむ感じがした。
最初の意図とは違う意味で、セルベインとアイオレンはベルマウル将軍と呼ぶことをとても気に入っていた。
「あ! はい。その通りです。ただ、ここで少し待たなければなりません。他の商人より少し遅い理由がありまして。」
ベルマウルが気まずそうに笑った。
セルベイン一行が待っている間に、冒険者と商人のほとんどが通り過ぎ、道の人通りがまばらになって静かになる。
「本当に雇われたの?」
ビティアが不思議に思いながらベルマウルに聞く。
「はい……雇われたのは事実です。無料でやってあげると言いましたから。」
ベルマウルが淡々と言う。
「なに! 無料ですって!!!」
ビティアとアイオレンがベルマウルを食べてしまいそうな勢いで睨みつける。
「ベルマウル。そんなふうに育てた覚えはないんだけど……」
ビティアがあまりにも呆れてベルマウルを問い詰める。
「皆さん! 申し訳ありませんでした!」
その時、遠くから商人が呼ぶ声が聞こえる。
「これは本当?」
アイオレンが商人を見て驚く。
「昔ベルマウルを寝かしつけるときに使っていた絵本の挿絵でしか見たことがない気がするんだけど……」
ビティアは言葉を失う。
「あの方ですね。」
セルベインも商人を見る。
「今の時代では本当に珍しいでしょう。」
ベルマウルが笑う。
「ああ。珍しいわね。馬が引く馬車だなんて……いくらお金がなくても、魔法荷車より下が存在するとは思っていなかったわ……」
ビティアの言う通り、馬が引く荷車三台がセルベイン一行の前に止まる。
「オーッ!」
商人が一台目の馬車の手綱を引いて荷馬車を止めると、後ろに続いていた馬車の馬たちも一緒に止まる。
「お会いできて嬉しいです。私は商人のモントルです。無料で護衛までしてもらえて、今日は本当に運が向いていますよ! ははは!」
モントルは明るい表情で朗らかに笑う。
この世界は魔法荷車が当たり前の世界。そこに突然、馬が引く荷車を操る少々古風な商人モントルが、セルベイン一行の前に現れた。




