グラウムバルの槌の音
エクスバークとドワーフの職人たちは、第一塔から第八塔までのすべての塔をアクノス魔法陣の元の位置へ戻した。
塔たちが本来の場所へ戻ると、ようやくロデンミルの本格的な復旧作業が始まった。
そしてしばらくして、セルベイン、アイオレン、ビティア、ベルマウル、エクスバークが一堂に会した。
「まだ出力が不足していますね。」
セルベインが水晶板で八つの塔から放出される魔力数値を確認する。
「それでも、この程度で済んだのは幸運です。塔の内部にも損傷箇所が多くありますので、ガーディアンたちが内部修理を終えるまでは、現在の出力を安定させることすら難しいでしょう。」
エクスバークが答える。
「魔力が不足しているんですか? 蓄光炉を使って黒い波動を光の魔力に変えたのではなかったのですか?」
アイオレンが不思議そうに尋ねる。
「魔王をここへ連れて来られるなら、あるいは別だろうが、今の状況はそこまで楽観的ではない。」
エクスバークは首を横に振った。
「え? どういう意味なのでしょうか。あっ、そういうことですか。」
アイオレンはすぐに何かを悟った。
「そういうことだ。塔の中に蓄積されていた黒い波動はすべて消費され、もう一切残っていない。塔を元の位置まで飛ばせただけでも感謝すべきだぞ。少しでも黒い波動が不足していたら、飛行中に突然墜落するか、あるいは魔法陣に衝突するところだった。」
エクスバークは存在しない冷や汗を拭いながら安堵のため息をつく。
エクスバークの言う通り、最初は安定して浮上したのとは違い、塔がアクノス魔法陣と結合する際には、すべてのガーディアンを総動員して塔の下降速度を遅らせることに必死だった。
「ロデンミルの塔は人族が作ったものなのに、塔を修理する時には人族の姿が見えませんでしたね。私が見るに、人族は塔のことをあまり知らないようです。」
ベルマウルの言う通り、塔の修理はエクスバークとその部下たちが専属で行っていた。
「それは当然だ。もちろん人族がガーディアンを作り、塔を人族の目的に合わせて改造した部分はある。だが、それでも塔の魔法コアと動力系統はドワーフ王国グラウムバルが作ったものだ。だから塔を最もよく知っているのも我々ドワーフなのだ。塔から出力される魔力を利用して人族が都市を発展させたのは事実だが、塔の運用とは別に、塔の製造にはグラウムバルの魔法工学が適用されている。もっとも、八つの塔がすべて復旧すれば、その時からは再び人族が自らの目的に合わせて使うことになるだろう。」
エクスバークは誇らしげな表情で言った。
「それはそうと、ビティ?」
エクスバークがビティアを見る。
しかしビティアは、エクスバークが確かに自分を呼んだと分かっていながら、聞こえなかったふりをしている。
「エクスバーク様。仮にも魔族国の王女なのですから、そろそろビティア姫と呼んでくださいませんか。」
とぼけるビティアの代わりに、ベルマウルが仲裁に入る。
「ふん! ベルマウル、お前はどう思う? 一度チビなら永遠にチビではないか。あのチビのビティが少し成長したからといって、ビティでなくなるわけではなかろう?」
エクスバークが意地を張る。
「あ、はい。その、そうですね。」
今度はベルマウルがエクスバークの肩を持つ。
「どっちの味方なの!」
ビティアはその様子に、ベルマウルの脇腹を突いた。
「うわっ!」
突然のビティアの奇襲に、ベルマウルの口から悲鳴が飛び出す。
「おや、これは困ったな。ベルマウルのために剣を一本作ってきたのだが、可愛いビティの顔も見ずに、そのまま剣を渡すわけにはいかないな。」
エクスバークは遠くの山を眺めるような素振りをしながら、ビティアに餌を投げる。
「え? ちょっと待ってください。おじさま。今おっしゃったことは、聞き流せませんね。本当にベルマウルのための剣を持って来てくださったんですか?」
ぶっきらぼうな表情が突然消え、ビティアの顔に愛嬌が浮かぶ。
「もちろんだとも。だが残念ながらビティがいないので渡せないのだ。」
エクスバークは強力な餌を手に持ち、ビティアの反応をそれとなく探る。
「おじさま、ご無沙汰しておりました。この間、お変わりはありませんでしたか。ビティも久しぶりにお会いできてとても嬉しいです。さあ、もう剣を見せてください。」
ビティアはためらいもなく自らをビティだと認め、たっぷりと愛嬌を込めてエクスバークに可愛らしくねだった。
「うええ!」
アイオレンはさすがにその様子を最後まで見ていられず、体を背ける。
セルベインも手で口を覆う。
表情はどうにか保っているが、笑いをこらえて指先が震えている。
「母上。あまり無理をなさると、お顔に負担がかかります。」
ベルマウルは慣れた様子でビティアをなだめる。
「これも全部、あなたのためなのよ!」
それでも恥ずかしさは残っており、ビティアの顔は少し赤くなっている。
「どうせ最初からこうするつもりだったんだろうに、なぜ無理をするんだ? まあ、いい。家出したビティも戻ってきたことだし、ベルマウルにこの剣を渡そう。」
エクスバークはまた一つ賭けに勝ったことに満足しながら、背後に置いてあった箱を持ち上げ、ベルマウルへ差し出した。
「エクスバーク様、ありがとうございます。開けてもよろしいでしょうか?」
ベルマウルは恐縮しながら箱を受け取ると、エクスバークに礼を述べて尋ねた。
「もちろんだ。今度こそ剣破将を卒業しないとな。」
エクスバークは笑顔を浮かべるが、その目つきだけが少し険しくなる。
「ははは。いやあ、面目ないですね。まさかその噂までグラウムバルに伝わっていたのですか?」
ベルマウルは気まずそうに笑う。
「剣破将?」
アイオレンが尋ねる。
「ああ、剣破将だ。名剣であろうと何であろうと、手にした剣を片っ端から破壊して壊してしまう魔族国の将軍ベルマウルを略して剣破将と呼ぶのだ。」
エクスバークがそのあだ名の由来を説明する。
「ああ、なるほど。だから剣破将!」
アイオレンはなぜか納得する。
「お前、そんな簡単に納得するな。一体誰が魔族の英雄ベルマウル将軍にそんなひどいあだ名を付けたのよ!」
ビティアはベルマウルに代わって憤慨し、地団駄を踏む。
「誰って、鍛冶場の職人たちだ。名剣を立派に作ってもどうなる。翌日にはベルマウル将軍が屈託のない笑顔で柄だけを握って現れるんだぞ。鍛冶職人の名誉は柄ではなく刃に宿るものだ。それをそんなに簡単に失われたら、どこの職人が喜ぶというんだ。」
エクスバークは実にドワーフらしい心情でベルマウルを叱責する。
「それはそうだけど。でもおじさま! それだけベルマウル将軍が勇敢に戦った結果じゃありませんか。」
ビティアが弁護する。
「そんなことは誰だって分かっている。将軍として部下を思う気持ちは理解している。だが、それだけ自分自身のことも大切にしなければならない。部下だけ無事に帰ってきても何になる。自分の遺影に線香を供える趣味でもあるのか? 手にしている剣の刃が砕けるほど全力を尽くしながら、自分の身を守ろうとしないことに問題があるんじゃないか。真の将軍というものは、どんな戦場でも部下たちと共に無事に生還するものだ。」
エクスバークは厳しくベルマウルを叱った。
実際、エクスバークの言葉は間違ってはいなかった。
ベルマウルは以前から、身分に対する密かな悩みや、母ビティアへの感謝、そして生まれてきた恩を返そうという思いから、自己犠牲を当然とする命懸けの覚悟を固めていたのだ。
ベルマウル自身は口にしなかったが、ビティアもすでに知っており、魔族国の王ナルジェオスだけでなく、魔族なら誰もが感じていることだった。
だが誰一人として、ベルマウルに自分の身を大切にしろという、その単純な助言を容易には口にできなかった。
エクスバークはビティアが幼い頃からの知り合いであり、ビティアをビティと呼ぶほど親しい仲だった。
そしてビティアにとっても、エクスバークは叔父と呼べるほど頼りになるドワーフである。
だからこそエクスバークは、ビティアの眼差しを見ただけで、彼女がベルマウルを心配していることをすぐに見抜いた。
しばらく誰も口を開かなかった。
「スリン!」
気まずそうに笑いながら、ベルマウルは肯定も否定もできず、黙ってエクスバークから受け取った箱を開き、中の剣を手に取って鞘から抜いた。
鞘の中で眠っていた刃が、ついに鞘を離れる。
普通、剣を抜く時には鞘の側面と擦れる感触が多少なりとも残るものだ。
ドワーフの職人たちはこれを「剣の緊張」と呼ぶ。
しかし、エクスバークから贈られた剣には、その剣の緊張がまったくなかった。
確かに剣は鞘に収まっていたにもかかわらず、最後まで一度も鞘に触れなかったのである。
「やはりルーンフォージ・マスターは違いますね。」
セルベインですら感嘆し、惜しみなく賞賛する。
「ルーンフォージ・マスターですか?」
セルベインとは対照的に、アイオレンは聞き慣れない言葉を口にする。
「ああ。おじさまはグラウムバルにたった三人しかいないルーンフォージ・マスターのお一人なの。私の剣もおじさまが作ってくださったものよ。」
ビティアは誇らしげに、自分が腰に帯びている剣をアイオレンに見せる。
「ビティ。エルフの中でルーンフォージ・マスターを知っている者は極めて少ない。エルフ族は鍛冶仕事をしないからな。セルベインの弟子であっても知らないのは当然だ。」
エクスバークはそう言いながらも、かなり誇らしげな表情を浮かべる。
「それでは、おじさまに代わって私が説明するのが礼儀でしょうね。」
するとエクスバークの思惑通り、ビティアが前に出る。
「ははは。やはり私の素晴らしさはビティの口から聞くのが一番だな。」
エクスバークは早く続けろというようにビティアへ手振りする。
ビティアは何となく乗せられた気分だったが、それでも説明を始めた。
「魔法武器を作る時、魔力を付与しながら鍛造することをルーン鍛造と呼ぶの。そして鍛造回数が多いほど、それだけ魔力武器の品質は高くなる。だからルーン鍛造を行った総回数こそが、その職人の魔力武器精錬能力だと言えるわ。そしてルーンフォージ・マスターというのは、その鍛造を100万回以上できる職人に与えられる称号なの。」
ビティアの説明である。
「なるほど。でも単純に鍛造回数を増やすだけなら、時間さえあれば誰でもできるんじゃないですか? 回数を分けて何度も叩けばいいわけですし。」
アイオレンは意外と簡単な作業だと思った。
「それは違うわ。ルーン鍛造には連続性が必要なの。つまり階段を登るのと同じよ。結局、直前が何段目だったのか分からないまま打てば、最悪の場合は武器が壊れることもあるの。」
ビティアが重要な点を指摘する。
「ということは、100万回以上ルーン鍛造をするというのは、100万の階段を一歩一歩間違えずに登るのと同じじゃない。それが可能なの!?」
そこでようやくアイオレンは驚いた表情になる。
「現実味がありませんでしょう。ですからおかしな話ですが、ルーンフォージ・マスターはおとぎ話でよくある役です。」
セルベインはそう言って笑う。
「いやあ、懐かしいな。ビティが生まれた日は嬉しくて仕方がなくてな。100万回どころか、それ以上鍛造してもまったく辛くなくてな。しかも槌が半分にすり減ったにもかかわらずだな。」
エクスバークは懐かしい記憶を思い返す。
「それで、どれくらいだったのですか?」
アイオレンが尋ねる。
するとビティアが右手の人差し指を立てる。
「一か月?」
アイオレンは再び答えながら慎重に尋ねる。
「違うわ。一年。」
ビティアがその数字の意味を正す。
「では、今のベルマウルの剣。この剣はどれほど?」
アイオレンは、自分が恐ろしい真実に近づいているような気がして声が震える。
「孫同然のベルマウルに、適当に剣を作ってやるわけにはいかんからな。どれほど長く鍛造したかと聞いたな?」
エクスバークは意味ありげにアイオレンを見る。
アイオレンは頷きながら唾を飲み込む。
「ベルマウルに初めて会ったのは、おそらくベルマウルが一歳の時だった。その時から始めて、最後はまさに昨日だ。正確な鍛造回数まで知りたいか?」
淡々と言いながら、エクスバークは笑った。
「……」
想像を超えた答えに、アイオレンの顎は力なくそのまま開いた。




