ロデンミルの8塔
ロデンミルへ戻ってきたアイテルノスの隣には、ロデンミル外人国の国家議政機関がある。
人族の賢者の国ロデンミルは、8人の賢者による合議体によって国が運営される。
そしてロデンミルの8塔は、その8人の賢者を象徴する。
しかしロデンミルが二つに分かれると、ロデンミルの8塔はロデンミル内人国に5つの塔、ロデンミル外人国に3つの塔として分かれて運営され始めた。
また、本来8つの塔で単一の魔法陣を構成していたものも、強引にねじ曲げられ、内側に内人国の5塔による魔法陣を作り、外側に外人国の3塔による魔法陣を重ねた二重構造へと変更された。
塔が分かれたことで国の運営方式も変わり、ロデンミル内人国は5人の賢者が運営し、ロデンミル外人国は3人の賢者が運営することになった。
ただし、ロデンミル内人国とロデンミル外人国の共通の問題については、ロデンミルの賢者8人全員が集まってこれを処理する。
この会議をロデンミル高原会議と呼ぶ。
ロデンミル外人国の国家議政機関の周辺には、他国の国賓が利用する宿舎がすべて集中している。
セルベインのための宿舎であるアイテルノスだけでなく、国賓のための宿舎はすべてロデンミル外人国国家議政機関の周辺にあったが、これは公務で訪れた貴賓たちへの配慮であった。
そして時によっては、その配慮が少し過剰なくらい強く感じられることもある。
実際、それほどロデンミル外人国の事情は切迫していた。
「どうやら今回は解決策を見つけられるといいですね。」
セルベインが小さくつぶやく。
ロデンミルが二つに分かれたとき、これはロデンミル外人国により不利な決定だった。
ロデンミル内人国と外人国は8つの塔を均等に分け持ったのではなく、外人国には3つの塔しか割り当てられなかった。
そのためロデンミル高原会議でも、内人国の賢者の人数がより多い関係で、内人国に有利な決定になりやすかった。
人族で最も賢明な賢者たちが集まって国を運営しているが、皮肉なことに対立が生じると、むしろ収拾する方法がなかなか見つからなかった。
「ロデンミル外人国のためにも、この問題は早く解決しなければなりません。」
セルベインは決意するように言った。
アイオレンもロデンミル外人国の事情をよく知っているため、心配そうな目で無言のままセルベインの後に続く。
アイテルノスとつながる通路に沿って、セルベインとアイオレンはロデンミル外人国国家議政機関の建物へ向かう。
アイオレンは頭全体を覆うフードで顔を隠す。
白い絹に金糸で文様を刺繍したエルフ族専用のフードだ。
外人国が他種族に寛大であるとはいえ、ロデンミル外人国国家議政機関の会議に出席するときは、他種族の場合にはフードで顔を隠すのが儀礼である。
この儀礼の例外は、ただセルベインだけだった。
しかしビティアとベルマウルはセルベインと一緒には来なかった。
今回二人はロデンミル外人国の公式な招待を受けて来たわけではない。
セルベインとアイオレンの協力者として来たのは事実だが、ロデンミル外人国の会議出席が目的ではない。
そのためアイテルノスを出た後、セルベイン一行は二手に分かれた。
ビティアとベルマウルは、魔族国の王ナルジェオスの命令により、「ダルガンの手」、呪い魔法の手がかりを探すためにロデンミル内人国へ入ることが目的である。
セルベインとアイオレンとは、会議が終わった後に結界の門ルクナスの前で再び会うことになっている。
ロデンミルの8塔は単なる建築物ではない。
8つの塔はエノルに存在する魔力を吸収し、高密度に圧縮する魔法秩序変換装置である。
本来、人族の身体はエノルの魔法を使用するのに適していなかった。
エノルの魔法秩序は自然の調和から作られ、また自然の理によって循環するように組まれている。
しかし自然状態の魔法をそのまま使用するには、人族の寿命はあまりにも短かった。
そして人族の記憶は後世へとつながることができず、すべて消えてしまうことが明らかだった。
この問題を解決するため、人族だけの方法を考え出さなければならなかった。
そこで高密度魔力圧縮機であるロデンミル8塔を完成させた。
8塔で作られた高密度の豊富な魔力を利用して、ロデンミルは急速に魔法都市へと発展した。
各種の魔力機械が人族の便利な生活を助け、都市のすべては自動化された。
しかし魔力を扱う技術が高まるほど、人族が作った魔力技術は人族だけのために使うべきだという主張と、その反対にすべての種族と分かち合うべきだという主張が激しく対立した。
結局意見を狭めることのできなかった人族の国ロデンミルは、他種族との交流問題によって二つに分裂する。
人族だけのために技術を使用し、他種族との交流を拒否する内人国と、他種族と交流し、魔法技術もまた互いに分け合いたい外人国である。
ロデンミルが内人国と外人国に分かれるとき、塔も共に分かれたが、この時内人国には5つの塔が、外人国には3つの塔が割り当てられ、それぞれ独立して運営され始めた。
そして数の不均衡は、完全だった魔法変換効率に問題を発生させ、魔法生産量の不均衡をもたらした。
ロデンミル内人国は外部との交流を断絶したまま、自らの秩序と孤立した均衡の中に留まっていた。
そのため魔法生産量がやや不足していても、実際には不足問題は大きく発生しなかった。
その一方で、ロデンミル外人国ではこの問題が次第に深刻になっていた。
他種族との交流によってロデンミル外人国は日に日に拡大しており、都市機能が増えるにつれて使用する魔力量も毎日増加していたが、3塔の魔力生産では到底足りない量だった。
ロデンミル外人国は慢性的な魔力不足状態に陥ったのである。
これはセルベインがすでにかなり前から心配していた問題だった。
何度かセルベインが仲裁に乗り出したが、ロデンミル内人国の扉はセルベインでさえ容易には開けられなかった。
高原会議で内人国の賢者たちは固く口を閉ざした。
「我々は今でも十分だ。おまえたちの不足は、おまえたちのやり方で解決しろ。」
それが内人国の賢者たちの立場であった。
しかし内人国の賢者たちが悪いわけではない。
見方によっては、極めて当然の言葉だった。
そんな中で問題が発生する。
ロデンミル内人国第5塔ネルマルク。
すなわちダルガンの塔である。
そこで発生した呪い魔法の暴走によって、内人国に恐ろしい呪いが広がった。
その呪いは単なる汚染ではなかった。
魔王アスペルハイムの意志を受け継いだ黒き啓示が暴走し、ロデンミル内人国を阿鼻叫喚の地へと変えていった。
賢者たちは魔法には強かったが、人族そのものが戦闘に優れた能力を持つ種族ではなかった。
さらに暴走する第5塔ネルマルクはダルガンの手、その呪い魔法によって黒き啓示を、まるでパン屋で食パンを型抜きするように次々と大量生産していた。
内人国は人族の赤い血で染まり、次第に内人国だけでは対処し難い事態となっていった。
しかし問題は、ロデンミルの内人国へ通じる結界の門、すなわちルクナスであった。
その門を通過できるのは人族、それも純血の人族だけである。
外部との出入りを禁じる結界の門であったため、内人国の人間が外へ出ることもなかったのである。
ロデンミル外人国の人々は武器を手に取り、内人国の人々を助けようとして支援に乗り出したが、ルクナスを通る煩雑さのために兵力を内人国へ送ることは容易ではなかった。
その時助けたのが、まさにセルベインだった。
セルベインは限られた時間ではあったが、ロデンミルの8塔へ流入する魔法をすべて遮断した。
すると高密度魔力が不足し、ルクナスの力もまた弱まる。
そのため辛うじてルクナスの門を通過し、皆で共に内人国へ入り、黒き啓示に立ち向かうことができた。
セルベインは8塔の魔力増幅機能を抑制するため戦闘には参加できなかったが、魔力生産が減少すると黒き啓示の出現もまた共に減少した。
そしてついに内人国第5塔ネルマルクの暴走を止め、状況を収拾した。
しかし助けを受けた内人国の人族は、黒き啓示による被害よりも、他種族が内人国へ入ってきたという事実の方を不愉快に思った。
内人国の人族を助けたにもかかわらず、呆れることに元も取れなかった状況となった。
そしてセルベインが8塔の魔力増幅を正常化すると、まもなくルクナスも正常に戻った。
これはロデンミル内人国の歴史上初めて、他種族が内人国へ入った事件となる。
ただし内人国がまったく誠意を示さなかったわけではなく、第4塔の魔力を外人国へ供給することにした。
内人国の人族から感謝の言葉は受け取れなかったが、外人国の人族にとっては慢性的な魔力不足現象が解決されたことの方が、むしろより大きな喜びとなった。
この事件の後、ロデンミル内人国第5塔ネルマルクは封印された。
賢者ダルガンも発見できなかったが、黒き啓示が発生した際に死亡したものと推定された。
塔そのものは自動で作動するため、塔を封印し、管理する賢者がいなくても使用には問題がなかった。
その後さらに時間が流れ、現在のロデンミル外人国は以前よりもさらに巨大な都市となった。
そしてさらに発展したロデンミル外人国は、再び慢性的な魔力不足現象を経験し始める。
ロデンミル外人国の交流と拡大は止まらず、都市は大きくなり、公共魔法網は膨張し、ついには4塔であっても支えきれない限界に到達したのである。
皆が予想していたことだったため、心配よりも先に頭が痛くなる。
ロデンミル外人国の3人の賢者が再び叫ぶ。
「8塔を統合しなければならない。我々のアクノスを完成させなければならない!」
8塔の統合とは、塔本来の機能を回復することである。
8塔は最初から、一つの魔法陣であるアクノス魔法陣として連結するよう設計されていた。
ロデンミル外人国の3人の賢者は、アクノスを通じて断絶された均衡を回復し、新たな秩序を設計しようとしている。
しかしロデンミル高原会議で、内人国の賢者たちは冷淡である。
内人国の5人の賢者たちの返答は簡潔だった。
「考える価値もない。それはおまえたちの考えだ。すでに4塔の魔力を提供している。我々は十分だ。わざわざ藪をつついて蛇を出す理由はない。」
冷淡ではあるが、内人国の賢者たちの言葉もまったく間違っているわけではなかった。
前回のロデンミル高原会議でも、8人の賢者たちは意見を狭めることができなかった。
そしてロデンミル外人国は、その切迫感を込めて再びワイルドカードを切る。
セルベインに泣きながらすがりついている。




