表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪異収集録~本当に怖いのは怪異か、人間か。一話完結の現代怪談~  作者: もろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/10

【口裂け女】

夜の繁華街。


高層ビルの灯り。


仕事帰りの若い女が、一人で歩いていた。


白いブラウスに、肩までの茶髪が揺れる。




行き交う人々。


昼間ほどではないが、まだ賑わいは残っている。


それでも――


一本裏路地へ入れば別だった。


人通りは少ない。




若い女は早足になる。


『早く帰りたい』


ただそれだけだった。




「ねぇねぇ、お姉さん」


背後から声がした。


振り返る若い女。


若い男が三人。


派手な髪。


だらしなく開いたシャツ。


ギラギラしたアクセサリー


酔っているのか、顔が赤い。




「一人?」


煙草を咥える、金髪の長髪男。


「飲み行こうよ~」


両耳に大きなピアスを付ける、銀髪の男。


「終電まで時間あるっしょ?」


首筋に刺青が彫られた、赤髪の短髪男。


鎖のネックレスが光る。




若い女は、首を横に振った。


「急いでいるので」




「いいじゃん~」


銀髪の男が腕を掴む。


若い女の肩が跳ねた。


「やめてください!」


「そんな怖がんなって」


赤髪の男が顔を近付ける。


「俺ら優しいから」


金髪の男が煙を吐く。


三人の下卑た笑い声。




若い女は、銀髪の男の手を振り払って、走り出した。


「待てよ!」


男たちの声が追い掛けてくる。


ヒールがアスファルトを叩く。


息が苦しい。


心臓が痛い。


曲がる。


走る。


また曲がる。


気付けば知らない路地だった。




「はぁ……はぁ……」


行き止まり。


振り返る若い女。


男たちが道を塞いでいた。




「逃げんなよ」


金髪の男。


「追いかけっ子の次は、何する~」


銀髪の男。


「もっと楽しもうぜ」


赤髪の男。


じりじりと距離を詰める男たち。


若い女の背が壁に触れた。


逃げ場は無い。




その時。


コツ。


足音。


男たちが振り返る。


路地の入口。


街灯の下に、背の高い女が立っていた。


長い黒髪。


赤いコート。


そして――大きなマスク。


顔の半分以上を覆う白いマスク。




男たちは顔を見合わせる。


「なんだ?」


金髪の男。


「君の知り合い?」


銀髪の男が、若い女に聞く。


首を横に振る若い女。




マスクの女は動かない。


やがて。


ゆっくり口を開いた。


「私……綺麗?」




男たちは吹き出した。


「都市伝説か?」


赤髪の男。


「口裂け女ってやつ~」


銀髪の男。


金髪の男が笑いながら近付く。


「お姉さんも俺らと遊びたいの?」


マスクの女は答えない。


金髪の男が、煙草の煙をマスクの女に吹き掛ける。


その瞬間。


マスクの女は煙草を奪い、金髪の男の額に押し付けた。


「ぐわぁ!」


額を押さえ、後退る金髪の男。


その腹部に――


ブス。


鋏が突き立てられた。


派手な服が血に染まる。


腹を抱え、倒れる金髪の男。




「え?」


銀髪の男。


理解が追い付かない。


瞬きをすると――目の前にマスクの女が立っていた。


マスクの女が、銀髪の男のピアスを掴む。


一気に引く。


ブチッ――


銀髪の男の耳朶が千切れる。


「うぎゃ――」


耳を押さえる。


鋏が、銀髪の男の目の前で開く。


ドス。


刃が両目を突いた。


ブシュ――


両目から血飛沫。


後方に倒れる、銀髪の男。




「うわああああ!!」


赤髪の男は悲鳴を上げていた。


駆け出す。


だが――


鎖のネックレスが掴まれる。


「ぐえっ」


首が絞まり、逃げれない。


ジャギン!


鋏が首筋の刺青を裂く。


頸動脈から血が噴き出す。


膝から崩れる赤髪の男。




静寂。




路地に立っているのは、二人だけだった。


茶髪の若い女。


そして、背の高い黒髪長髪のマスクの女。




若い女は、震えていた。


足が動かない。




マスクの女が振り返る。


ゆっくりと。


こちらへ歩いてくる。


若い女は、背を壁に押し付ける。


逃げられない。


マスクの女が立ち止まった。


そして。


問い掛ける。


「私……綺麗?」


若い女の喉が鳴った。


「き、綺麗です……!」


震える声。




マスクの女は黙っている。


やがて。


マスクを外した。


耳まで裂けた口。


「これでも、綺麗?」


若い女は、必死に頷く。


「そう…… 昔の私と同じね……」


口裂け女が呟いた。




若い女は安堵した。


助かった。


そう思った。




だが。


次の言葉で凍り付く。




「なら――」


鋏が持ち上がる。


「あなたも綺麗にしてあげる」


若い女の口の中に、鋏の刃が挿入された。


ジョギンッ!


頬が裂かれた。


激痛。


熱い。


顔が燃える。


「あぁぁぁ――!」


若い女の絶叫が、夜に響いた。




――数日後――




深夜の住宅街。


学校帰りの女子高生が、一人で歩いていた。


ふと足を止める。


前方に、茶髪の若い女が立っていた。


血の付いた白いブラウス。


白いマスク。


街灯に照らされた目が笑っていた。


マスクに手を掛ける。


「ねぇ……」


マスクが外れる。


耳元まで裂けた口。


「ひぃぃ!」


女子高生の悲鳴が上がる。


茶髪の女が言う。


「私……綺麗?」

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、感想・レビュー・評価・ブックマークで応援していただけると、とても励みになります。


これからも『怪異収集録』をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ