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怪異収集録~本当に怖いのは怪異か、人間か。一話完結の現代怪談~  作者: もろ


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3/10

【十三階段】

曇天の空。


早朝の通学バス。


バスに揺られながら、欠伸を噛み締める生徒。


イヤホンをして、ショート動画を漠然と眺める。




「こんにちわ。こんばんわ。おはようございます。モロチャンネルです」


若い男の配信者。


お決まりの挨拶で始まる動画。


夜空に満月が輝いている。




「今回は怪談検証企画と言うことで――此方に来てます!」


大袈裟な効果音と共に、映し出される古びた廃校。


禍々しい雰囲気は十分に伝わる。




歩きながら、語り始める配信者。


「この学校には“十三階段”と呼ばれる階段があります…… 十二段しかないはずなのに……満月の真夜中だけ十三段目が現れる……」


素人の恐怖を煽る演技。




「一人で入るのは、心細いですが……」


正面玄関のバリケードを外し、校舎に侵入する配信者。


校内は真っ暗で、配信者の照明だけが頼りだった。




『不法侵入www』


『通報案件』


『お巡りさん――不審者が居ますよ~!』


『真っ暗で怖っw』


画面の脇にコメントが流れる。




「十三段目を踏んだ者は、自分自身に出会うとも、連れて行かれるとも言われています」


配信者は低い声で話すと、階段を映した。


「今は二十三時ですが、先ずは確認の為、階段を数えてみます」


階段の下に立ち、足元を映す。




「一、二、三、四……」


声を出しながら数える配信者。


一歩ずつ、ゆっくりと上る。


「……十、十一、十二」


映像が足元から配信者の顔に変わる。


「まだ……問題無いようですね~ では、真夜中の零時に再挑戦です」


少し笑いながら、階段を下りる配信者。




『何も起きないじゃんw』


『つまらん』


『マジ検証頼むw』


次々に流れるコメント。




「零時になりました……始めます」


編集された動画。


時間が飛ぶ。


先程と同じように、階段の下に立ち、足元を映す配信者。


「一、二、三、四……」


声を出しながら数える配信者。


一歩ずつ、ゆっくりと上る。


既視感のような動画。




「……十、十一、十二」


十段目辺りから、照明が不自然に明滅しだした。


映像にノイズが走る。




グチョ。


何か柔らかい物を踏んだ感触。


「十三……!?」


配信者の声が震える。


右足が何かを踏んでいた。


恐る恐る足を上げる。




そこにあったのは――


顔だった。


血塗れの。


階段の一段として埋め込まれた。


配信者自身の。


歪んだ顔。






「うぎゃ――!」




ドタドタバタン!


階段を転げ落ちる配信者。


画面が回転する。


映像が乱れる。


照明が消えて、何も見えなくなった。




「助けて……」


配信者の弱々しく、掠れた声。


黒い画面に、音声だけが聞こえる。


ズリ……


ズリ……


何かが引き摺られる、生々しい音。




コメントが黒い画面に流れる。


『絶対ヤラセだろ』


『血塗れの顔の造型エグw』


『迫真の演技www』


『つまらん』


『つまらん』


『つまらん』


『この動画……誰が投稿したの……』




プシュ――


バスが停まる。


「雨か……」


窓を覗く生徒。


スマホの画面を閉じた。


何事も無かったようにポケットに仕舞う。


折り畳み傘を出し、正門に向かう。


何時もと変わらない日常。




関心の薄れた世の中。


日々更新されるSNS。


本当の叫びも……気付かれなければ、毎秒埋もれて行く。


やがて……噂だけが残り――


それは新たな怪異になる。




新着コメント。


『次はあなた』

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


「続きが気になる」「面白かった」と感じていただけましたら、感想・レビュー・評価・ブックマークで応援していただけると、とても励みになります。


これからも『怪異収集録』をよろしくお願いいたします!

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