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壮絶なまでに美しいその笑顔に見惚れていると。
「早川ー?」
「あ、ごめーん」
向こうで呼ぶ藤井君に返事すると、彼が聞いた。
「彼氏?」
「違います! あれは友達ですっ。私、ここのところずっと落ち込んでいたから、みんなが気晴らしにって映画に誘ってくれて、だから二人だけってわけじゃなくて……」
だんだんと声がしりつぼみになってうつむいてしまう。
通りすがりの人に私ったら、なんで真剣にこんなこと言い訳してるんだろう。
でも、なんとなくこの人に、あれを彼氏だと誤解されたくはなかった。別に、ナンパされてるわけでもしてるわけでもないのに。自信過剰かな。やだ、なんか恥ずかしい。
そっとその男の子を盗み見ると、彼は変わらず優しく微笑んでいた。
「元気なかったの?」
「……最近、友人が……親友が亡くなったから……」
「ああ……。ごめん。無神経なこと聞いちゃって」
「ううん。いいの」
なんとなく、私は手の中にあるバラのストラップを見つめた。微かに、赤がぼやける。
いけない。知らない人の前で泣くわけにはいかない。
私は、無理やり笑顔を作った。
「それは悲しいことだけれど……、でも、彼女を大好きだった気持ちはいつまでも変わらないし、私は彼女のことを絶対に忘れない。これからね、彼女の代わりに私が、たくさんの夢を叶えていくことにしたの。だから、悲しくても私がちゃんと生きなくちゃ。いつまでも落ち込んでたら、きっと彼女に怒られちゃう」
「……そうだね。きっとその親友も、君が幸せに生きることを望んでいるよ」
そう言う彼の声の方がまるで泣いているように聞こえて、ついその顔をまじまじと見てしまった。
私の視線に気づいたらしい彼が、にっこりときれいな笑顔に戻る。
「時間とらせちゃったね。じゃ」
「いえ……さよなら」
彼は軽く片手をあげ、私はお辞儀をして、お互い反対の方へ歩き出した。 二、三歩行ったところで、ふと、足をとめる。
甘い香りが、微かにあたりに漂っていた。
ゆっくりと、振り返る。
もうそこに彼はいなかった。
「おーい、行くぞー!」
「……はーい!」
なんでそんな気持ちになったのかわからない。
急に胸に押し寄せた切なさを振り切るように、私は駆け出した。
fin
長い間、お付き合いいただきましてありがとうございました。おかげさまで、無事、終了させることができました。よろしければ、感想などいただけたら嬉しいです。あの、できれば、お手柔らかに……




