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『フルプレートの中はゲロゲロ、外は魔物の巣。~魔物酔い体質の女騎士、絶対に揺れてはいけない限界ダンジョン脱出劇~』  作者: イニシ原


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第四話 エルフのおじさんですね

「ごちそうさま」




 あの子供に言ったようですが反応はないです。


 でも仕方ありませんよね?


 一生懸命に恐ろしい全身鎧に、助けを断られてしまったのですから。




 ミントは、飲み終えた寸胴を床に置いて立ち上がりました。




「あと八十九分……」




 けぷっと鎧の中から聞こえます。


 また、お腹が空くまででしょうか?


 何も言わないでガシャガシャと、まだ行ってない通路に歩き出しました。




 助けてはあげたいですよね。


 でも、彼女も何でも出来る魔法使いではありません。




 松明が灯った通路の先には、遺跡の像がいくつも並んでます。


 まるでこれから先は危険だと言わんばかりです。




 ミントは通路の途中で立ち止まってます。


 壁がだいぶ壊れてますね。


 その壁の薄暗い奥には、何があるのでしょうか?




 ……どうやら何もありませんね。


 あ、いいえ。


 巨大な空間に、岩が並んでいるように見えます。




 ああ、部屋でした。


 壁が崩れ、中が見えますから。




 よく見れば、上にも下にも部屋です。


 どこを見ても、吊られた部屋が通路で繋がってます。




「ジャンプ出来れば、ここから上がって行けるのに」


「ざーんねん」




 ミントの表情はわかりませんが、この床の下も奈落ですからね。


 ジャンプを諦めたようです。


 ……まぁ、怖いですからね。




 でも、良かったこともありました。


 上への階段を見つけました。


 他の通路もありましたが、ここは登る一択でしょう。




 軽やかなステップで登って行きます。


 でも、ミントは階段の途中で足を止めて、また虚空を覗き込んでしまいました。


 何か音がした気がします。




 ……あ、聞こえたようです。




 金属がぶつかるような音。


 何を喋っているのかわからない叫び声。




 キョロ、キョロっ……。


 この鎧、前からの音を集めているのでしょうか?


 どちらから聞こえてくるのか、探し当てたようです。




 滑らかな金属が擦れる音。


 彼女が首を上下に動かしてます。


 悩んでいるようにも見えますね。


 先へ進むかどうか……。




 ガシャッ!




 彼女は上を向いています。


 さっきの戦いの音がした部屋に向かうのでしょうか……。




 だけど、またゴブリンにでも会ったら可哀想ですね。


 ……あ、もちろん彼らのほうが、ですが。




 部屋には扉が四つ。


 時々、登り下りの階段もあります。


 まるで迷路のようですね。




 乱雑な遺跡がある部屋もあれば、塵一つない部屋もある。




 ただ、彼女は迷いません。


 音も、匂いも、振動も。


 どんどん大きくなる方へ向かっているようです。




 もう音はしません。


 でも、この通路の先に間違いないでしょう。


 彼女が大剣を抜いたのですから。




 ガシャガシャと響く足音。


 もし部屋の中に誰か残っていたら、その足音だけで心臓が止まるかもしれません。


 目が合った瞬間、大剣が唸りそうで恐ろしいです。




 ドン!




 扉が飛ぶように開きました。


 ここは、シャンデリアが灯る大きな部屋です。


 彼女が中へ入ると、ガシャ、ベキッ、ジャラ。


 足下で何かが砕けました。




 かつてはさぞ高価な物だったのでしょうね。


 今では見る影もない破片です。




 よく見ると、その破片を被った人……。


 いいえ、ドワーフが数名。




 そして……あ、珍しいですね。


 ドワーフの住処にエルフがいました。




 どうやら瓦礫に埋もれているエルフは、まだ息があるようです。


 生存者を見つけた彼女は、すぐ側に近寄ります。




 髭のないツルツルの肌。


 そして、尖った長い耳。


 年齢がまったくわからないエルフですが……。




 どうやら……おじさんですね。




 あ、彼女……、息も絶え絶えなおじさんの懐を探ってますよ。




 おじさんのことは気にならないのですかね……。




 腰のポーチや、近くの背袋もひっくり返してます。




「ふふ、やっぱりあった!」




 鎧の中で笑みを浮かべていそうですよね。


 でも、その時です。


 喜んでいた彼女の足へ、おじさんが必死に、ガシッとしがみ付きました。


 瀕死かと思いきや、まだそのくらいの力は残っていたようですね。




「それは俺のだ! 欲しいならまずは俺を助けろ」




 もちろん、おじさんは必死そのものです。


 命がかかっていますからね。




 彼女なら、足蹴にするだけで簡単に振り払えそうですが……。




 今はただ、必死にしがみつくおじさんと、フルプレートの奥から見つめる彼女。




 二人はピクリとも動きません。





 ーーーーーーーーー





 この物語はフィクションです。


 実況、憶測、個人の感想が含まれています。


 ゴブリン側の意見は聞いておりません。

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